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「下請け業者のコントロールを失っている」 SEICとの会合 (2005年5月19日)

5月19日にサハリンエナジー社とNGOの会合がモスクワで開かれました。これ までSEICはNGOとの対話において、広報担当のみが対応していましたが、今回初めてシェルの幹部(ロシア代表)と三井・三菱の担当者が参加しました。

以下、ご報告です。

参加者: 事業者側 シェル1名,SEIC 6 名,三井1名,三菱2名
      NGO側ロシア,米国,英国,日本から計10団体

▼今回のNGO側からの主な要求
  1. コククジラの絶滅を防ぐため、IUCN レポートの助言に基づき、モリクパック での事業中止とPA-Bプラットフォーム設置並びに海底パイプライン建設の一時停止。
  2. 融資機関が承認する包括的な油流出対応計画(OSRP)が完成するまで、海上で の事業の一時停止。
  3. サケの産卵場を通るパイプラインルートの変更。
  4. パイプラインが川を交差する際、橋脚などを使用した地上交差の実施。
  5. アニワ湾での浚渫作業と土砂投棄を中止し、企業、専門家、法律家との会合の 実施。
  6. 生物多様性に与える影響を調査する独立パネルの設置。
  7. 先住民族が出している要求の実施。
  8. (パイプライン溶接点検記録など)プロジェクトのモニタリングや遵守記録、 点検記録などの情報公開。
陸上パイプライン
現地NGOより、建設による新たな問題が報告されました。パイプライン建設工事現場で、サケの産卵する河川に大量の土砂が流入している様子、トラクターが何本もの細い河川の上をじかに行き交っている様子、河川の交差の手間を省くために溝が人工的に掘られたために、サケの産卵場が干上がっている様子など数々の違反行為が提示されました。

SEICはパイプライン敷設において、「下請け業者のコントロールを失っている」ことを認め、パイプラインルート変更を含めて検討することを約束し、問題が解決するまで河川の交差工事を一時停止することとしました。


アニワ湾土砂投棄
アニワ湾の土砂投棄に関して、現地NGOが示している代替場所に対し、SEICは「天候の良くない海での運搬は危険」「3〜4倍の距離を運搬するための船が足りない」「代替案の場所の様子はまだよく分かっていない」など、十分な検討をしていないことが明確な返答をしました。現地NGOは、SEIC、専門家、法律家との会合の実施を要請。SEICはこれを了承しました。


油流出関連
包括的な「油流出対応計画(OSRP)がまだ出来ていないこと」、「流氷期での回収技術が未確立であること」が問題とし、NGO側は融資機関が承認するOSRPが完成するまで、海上での事業を一時中止するよう求めました。

SEICは現在、社内に油流出対応に関する人的・技術面で、十分なリソースがないことに触れ、今後特に日本など外部の専門家や技術を積極的に取り入れることを約束しました。


野生生物関連
コククジラに関して、NGO側はパイプラインルートの変更を歓迎しつつ、IUCNのレポートに基づき、プラットフォームの移動が欠かせないことを主張。SEICは「現状のプラットフォームの場所でもリスクコントロールは可能」という主張をし、コククジラの絶滅を防ぐためのリスク管理において相違が見られました。また、NGO側は変更後の海上パイプライン環境アセスメント情報を要求しました。そして、サハリンは鳥類にとって重要な生息地でもあることから、生物多様性への予防的アプローチを確保するため独立パネルによる調査が必要だと主張しました。


社会問題
NGOは先住民族が求めている「民族学的アセスメント」「先住民族開発基金の設立」について、SEICが十分な対応を行っていないことを指摘しました。これに対しSEICは、「民族学的アセスメント」について、他の石油会社や木材会社も参加する必要があるといい、基金に関しては、具体的な金額が出ていないため進んでいないと説明しました。

またNGO側は、支払いを受けていない下請け会社の従業者が多数いること、LNGプラント建設にあたって、6000人の労働者がコルサコフの町に派遣されたにも関わらず、受け入れ施設の対応などが十分でなく、水道や電気などインフラ設備の問題や暴力、結核や性感染症などの問題といった影響が地元住民に及んでいることを指摘。これに対し、SEICは現在5000人を収容できる施設をつくり、受け入れの問題は解決していると述べました。

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