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サハリンII サハリン環境ウォッチリシツィン氏 関係省庁と意見交換会 (2003年7月24日)
7月24日、サハリンU石油・天然ガス開発に関して、加藤修一参議院議員の呼びかけによる意見交換会が開かれました。

意見交換会では、サハリン環境ウォッチ代表ドミトリー・リシツィン氏が、サハリンで懸念される影響と対策について話をし、星稜女子短期大学(FoEアドバイザー)沢野伸浩氏が、事業者であるサハリンエナジー社の油流出対応時計画についての話をしました。

その後各省庁により、事故発生時の対応について発言がありました。


関係省庁連絡協議会との意見交換会 報告

文責:FoE Japan

日 時:7月24日(木) 午後4時〜5時半


●加藤修一参議院議員

公明党はこの問題に早くから取り組んでいる。初めて1999年に取り上げた。稚内から雄武、紋別、常呂と署名運動を展開、1万7千名の署名をいただき、当時の額賀官房副長官に申し入れをしたという経緯もある。また、政府に対して質問主意書提出や災害対策特別委員会等でも質問を行っている。網走市においても、この関連の国政報告会を行った。北海道開発局にも申し入れを行った。当時は、油事故があった事故後の具体的な申し入れ。国際協力銀行(以下JBIC)の新環境社会配慮ガイドライン策定の過程にも関与してきている。

サハリン開発に関しては、反対という立場ではなく、せっかく開発する以上は環境の保全上の問題や環境配慮にも十分対処した上で進めていく必要がある。天然ガスについては、極めて環境負荷の小さいエネルギーとして、これからつなぎのエネルギーとしては重要な位置を占めるため、この開発については是としている。10月からJBICの新ガイドラインの完全施行となるが、サハリンII、Iについても適用し進めていくことが望ましいと考える。本日は、サハリン環境ウォッチ、FoE Japanからも要望をいただいており、これを中心に積極的に答弁を行っていただきたい。

今月20日札幌でサハリンに関しNPO関係の会合があり、参加してきた。その中で論及があった。同感する面もあるので、事実関係を含めはっきりさせる必要がある。5点ほどに問題がまとめられる。LNGや石油輸出ターミナル建設時の土砂や汚水をアニワ湾に投棄するという点。二点目は、事業者による油流出事故の予防・対応策を作り上げる必要性。三点目は陸上および海底に敷設予定の石油・およびガスパイプラインの敷設方法について、確実に石油が漏れないような方策を考える必要。四点目はコククジラの生息を脅かす海上掘削施設およびパイプラインの敷設に関し従前な対応、生物多様性国家戦略を含めても重要である。五点目は、事業者による適切な情報公開あるいは協議の必要性、という点である。

●ドミトリー・リシツィン氏の話

サハリンU第2期工事に関し、いくつか主要な問題、課題についてお話する。また、私たちからの提案を申し上げたい。

1) 陸上パイプラインの敷設に関する問題。

(写真)敷設予定の陸上パイプラインは、マグニチュード8〜9の地震の起こる可能性のある活断層を横断する。このパイプラインは地中に敷設されることになり、24の活断層を通る。地震が起きた際、パイプラインがどうなるのかが大変疑問である。以前、ネフチェゴルスク市近郊で大規模な地震が起きた際、約2000人が死亡した。過去に作られたパイプラインでも、油漏れが起きて数週間後に発見されるということがある。

私どもからの提案は、アラスカでの経験を生かしたパイプラインを敷設すること。このパイプラインはトランスアラスカパイプラインと言い、25年前に作られた地上のパイプラインであり、この選択は正しかったと言える。また、トランスアラスカパイプラインのように柔軟性を持たせること、つまり地震の際、パイプラインが地上の動きに合わせて動けるということが重要である。アラスカがなぜ地上のパイプラインを敷設したかという理由は、永久凍土だからというだけではない。アラスカのパイプラインは永久凍土のところだけでなく、活断層がある部分にも使用された。アラスカは3つの活断層を通っている。サハリンは24の活断層がある。2002年11月にアラスカでマグニチュード7.8の地震が起きた際、この方法は正しかったことが証明された。技術的にうまく機能しパイプラインは壊れなかったのである。

また、パイプラインがサケの孵化する川を横断することも問題である。サハリンではサケの収穫量は年間約100,000トンであるが、事業者であるサハリンエナジー社は、川を横断するパイプラインは川床を掘り起こし、埋め、そこに土をかぶせるという方法である。解決法としては、橋をかけうるような方法でパイプラインを通すことである。これもまたアラスカで行われている。企業側は「水平直接ドリル方式」という特別な技術を使う川を8つだけ指定しているが、これも川の底に穴を掘る方法である。もうひとつ気になることは、日量1%以下の油漏れの場合、事業者の機器でも検知できないことである。このように地中に敷設されるパイプラインが破損した場合、修理が難しいとうことがある。事業者は、これを検知しない限り修理はしないであろうし、検知できない場合、長い時間が流出しつづけることも考えられる。

2) アニワ湾への海洋投棄

 企業側で計画している建設に伴う汚泥の投棄の問題。LNGプラント付近の桟橋建設に伴う汚泥約100万トン以上が、アニワ湾の中心に投棄する計画がある。我々の提案は、汚泥を湾の外側、漁業資源が余り豊かでない海域まで持っていき投棄することである。これは、アニワ湾がサハリンの年間のサケ漁獲量の25%以上を占めていることから、非常に重要である。アニワ湾は重要な商業的漁業資源の海域であり、様々な種類の魚、貝、エビなどが成育しており、更にオオズワイガニの重要な生育海域になっている。オオズワイガニは湾で成育し、その後北海道の海域を含む南オホーツクに散らばっていく。アニワ湾の海流により、投棄された土砂は湾中に広がっていく。私どもの科学者は1mmの土砂が堆積しただけでも、湾海底の生態系に影響が及ぶとのこと。

3) コククジラ

 絶滅危惧種であるが、企業側はパイプラインをコククジラの採餌場を横切る形で計画しており、これがコククジラの生息に大きな影響を及ぼすことになる。私どもの提案は、パイプラインを採餌場を避ける形で南側に敷設することにより、影響を避けるようにすることである。

4) タンカーからの油流出

 事業者は、海上のプラットフォーム、液化天然ガス工場、パイプラインなどからの油流出事故についての対応策は持っている。しかしタンカーからの石油流出の対応策や予防策は何も持っていない。(地図)事業者の環境影響評価の中からの地図によると、全てのタンカーは宗谷海峡を通過することになっている。二箇所ほど最も危険な地域を私どもの方で赤枠で示した。宗谷海峡は、航行が難しいことで知られており、さらに多くの船が行き交うところでもある。また、海峡の真中には岩があり、これが事故の原因にもなりやすい。私どもは、事業者がタンカーの石油流出に対して責任があることを認識していなことを懸念している。タンカーには当然それぞれ保険がかけられているが、事故がおきてすぐに保険金が下りるわけではないし、それですぐ石油を除去する対応のお金に当てられるわけでない。北海道には、既に石油流出に対応する船や機器があることは知っているが、大事故がおきた際にすぐに対応するために、地図に示している海峡に近いところに特別の基地をつくるべきだと考える。もうひとつは、最低二ヶ所の最も危険な地域でのタンカー事故には企業が責任をとるべきだと考える。このやり方はアラスカでのタンカー航行ではすでに行われている。

我々は、1月に企業に対して「共通要望書」というものを提出した。開発の内容をもっとよくするべきという提案である。私どもはこの開発に反対するものではなく、この開発をよりよく、環境に配慮したものにしたいと考えている。

●沢野 伸浩氏

 ナホトカ事故の油の残留状況を調査している。今日でも油が残っている海岸が点々とある。一度油流出事故がおきると、一年二年できれいになってしまうわけではなく、その後長期間油が残留し、影響が残ることを認識いただきたい。

 先ほどお話があったように、油流出に関しては、事業者は施設、油栓、積み出しターミナルなどでの事故のいくつかのケースを想定して、それぞれの行動計画を作るのが一般的。サハリンエナジー社もこれを策定している。サハリンUに関し1999年に最初の計画が作られ、2001年に一度改定されている。今回問題になっているのは、サハリンU第2期工事に関する油流出対応計画で、これは昨年の9月に完成し、私自身は12月に受け取った。日本の関係省庁にはまだ渡っていないという話も聞いている。2001年度版については、海上災害防止センターの方で翻訳されていると聞いている。

 第2期工事の油流出対応計画は、全部で7つで構成されている。ここに一部、図や地図を除いたものを持ってきたが、全て入れると膨大な量の資料である。しかし、最近サハリンエナジー社が作成したこの対応計画の日本語版の概要は、たった30ページしかない。これはサハリンエナジー社のホームページで見ることができる。油流出が起きた場合、どういう手段でどう行動をするのかが大変重要である。

 この計画は誰が作っているのかと言うと、Environmental Resource Managementというイギリスの会社が中心となっている。エド・オーウェンという世界的な油流出・沿岸油汚染の権威である人が経営するPolaris Applied Sciencesという会社が協力して作成していることは間違いない。レベル的には、世界的権威が作っているものだから、良いものであるという見方もできるかもしれないが、問題は日本と目と鼻の先のことであるにも関わらず、これらの計画に関して日本人や日本企業の関与が全くないことである。

   今開発が行われている地域は、非常に脆弱性の高い場所である。これは事業者自身も認識している。しかし、今回の油流出対応計画の問題点の柱になってくるのが「分散剤」の使用に関してである。分散剤は、日本の法律では「油処理剤」と言い、油が流出したとき、それを微粒子化し拡散させるものである。この分散剤を、どこのどのような流出にも使用する記述がいたるところに見られ、これは非常に問題である。この海域が冬場は氷に閉ざされたりと、人海戦術では対応できないような海域であり、他に手がないということも理由かと考えられる。しかしイギリスなどでは水深20m未満の水域では使用してはいけないことになっており、韓国の今のガイドラインでは、漁業海域では自粛することが定められている。先ほどサハリンでは河川が非常に多く生態系が豊かであると言う話があったが、この河川の淡水域に関しても分散剤使用の記述がある。更に、事業者は日本への油流出の影響は全くないと言っているが、これは油の輸送の段階を含めていないからである。

第2期工事で日本に最も近い施設はTLU(Tanker Loading Unit)で、アニワ湾に建設される予定のものである。ここで積み込まれた油が日本や消費地へ運ばれる過程でのシミュレーションや対応というものは一切ない。日本は、単に事故が発生した際の通報先のひとつでしかない。更に、大規模な事故発生時に応援を求めるところはシンガポールと香港。日本や韓国にも協力を求めるべきである。

融資関連にしても、日本人の関与が薄い。本来事業者に、適切な計画等を作るよう求めることができる立場にあると考える。今後第2期工事に入るにあたり、なぜ日本の漁業の影響を評価項目に入れたアセスメントをしないのか。一時期、欧州復興開発銀行が戦略アセスを行うという話もあったが、3月にEBRDの環境室長と会った際には行わないと言っていた。なぜこのような適切なアセスを行わずに進めるのか、全く理解できない。

サハリン計画に関して、私自身は反対ではない。むしろ日本のエネルギー源の多様化・安全保障面から考えても重要であると考える。しかし、漁業資源が3000億とも言われる北海道のすぐ近くで行われる事業であるにもかかわらず、なぜこれをきちんと評価し、計画に盛り込まないのか。

今後何をすべきかに関しては、サハリンUに関し、まず日本人、日本企業の関与を入れるべきである。融資者や出資者という点での関与はあるが、油流出や環境影響など日本に直接影響があると言われることに関して全く関与ができていない。日本を対象に含めたリスク評価を早期に行うべきであるし、これを事業者に求めるべきである。

日本の油流出の問題は、海上保安庁であり、海上災害防止センターは、洋上で回収することを前提とした計画を作ってしまいがちである。今の時点で、日本に全く計画がないわけではなく、海上保安庁は北海道を対象とした排出油防除計画を作っているが、これもどうしても洋上回収が主体となっており、ひとたび陸に上がったものをどうするかの対応については、世界的なレベルで見るとどうしても劣っている。現実にナホトカのときは80%以上が陸に漂着した。このようなことを踏まえ、そのような自体でも対応ができる計画も同時に進めるべきではないかと考える。

最後ですが、分散剤に関しこのままの計画で進めるとなると、これはある意味世界中の環境保護のNGOに対し喧嘩を売っているようなもの。また、日本人の関与を入れること。これはタンカー事故も想定する。私自身もシミュレーションを行ったが、少し南の方で事故が発生すれば、北海道に漂着する結果となる。国際的な金融機関に対しては、もう少し、我々の利益というものを訴えても良いのではないか。国際協力銀行に対して、欧州復興開発銀行に対して、事業者に対して、必要なことを強く求めていく必要がある。

●各省庁での対応。(事後的な対策。また、事前的な対応・しくみなど)

・ 内閣官房―起きてからの危機管理。関係省庁との連携。それぞれ省庁の役割において対応。

・ 内閣府―災害に対し協力し動く。具体的な対応は海上保安庁のほうが行っている。

・ 警察庁―海上保安庁からの連絡があり、対応。情報収集、収集した情報を海保、関係省庁へ配信。市民生活の安全の確保、個人の財産の確保。油防除対策を円滑に行うための措置。

・ 防衛庁―事故が起きた際、自衛隊派遣の出動要請を受けた場合、出動必要性の判断を行い、適切な処置を行う。

・ 総務省(消防庁)−地方公共団体と連絡をとりながら、情報収集など。北海道でもサハリンを念頭に既にマニュアルを作成している。

・ 法務省―事故発生時、外国人専門家の出入国を円滑に。

・ 外務省―日露行動計画採択。エネルギー分野の協力は大きな柱で、なかでもサハリンは重要な案件。このような案件が環境配慮を行われた状態で、成功例となるよう。ロシア政府からも配慮がなされるよう促進。OPRC条約(油汚染に対する準備、対応および協力に関する国際協定、1990 年)に関しては、ロシア政府の署名を求めてきている。

・ 文科省―発生時、関係機関との連絡密。影響把握に努める。規模に応じ、学校関係での安全対策を講じる。(文科省の防災業務計画)

・ 厚労省―発生時の対応。油回収作業を行う地域住民との協力の確保。情報収集、強要提供、地方公共団体・都道府県労働局などへの指示。

・ 水産庁―漁業者は末端で被害を受けることから、重大な関心をもっている。少ないなりにも道に回収船、資機材配備。情報が少ないことから、北海道の指導魚連や全魚連と情報交換を行っている。沿岸にパイプラインを設置する会社が漁業から意見を聞いている。ナホトカでも漁業者への補償が5年かかり漁業者が苦しんでいる。漁業被害の未然防止あるいは事故がおきても被害の最小化という観点で取り組みたい。

・ 経産省―サハリンは、重要なプロジェクトのひとつ。必要な支援を行っていきたい。基本的には、ロシアで行っている民間事業であり、ロシア政府の承認を得た上で、関係者の対応を図りながら行っていく。関係省庁連絡会議では、情報を得て関係省庁へ連絡。事故発生時には、迅速に情報収集、措置。

・ 国交省:三隻の油回収船。48時間以内に日本の各沿岸に到着。発生し、要請が会った場合出動。

・ 海保庁:情報入手。ロシアとの連絡窓口設置。排出油防除計画に沿って。海保は洋上での対応ではあるが陸上での対策も考慮に入れ、自治体と連携。過去二回訓練を行った。

・ 環境省―情報収集。事前の対応は、環境脆弱規制地図整備。油処理剤の影響を調査研究している。各自治体での対応ができるよう、訓練・研修を行っている。

・ 財務省―EBRD・JBIC融資審査開始。環境社会配慮面でも審査。話を伝えていく。代替案については、融資機関がどう考えているか情報なかったため、これから財務省としての意見をつくっていく。実質的には、新ガイドラインに沿った形で行くというのがJBIG/財務省の考え。

●コメント

加藤議員− 今までの申し合わせなどでは、事前に事故発生を防ぐための対策はなかった。JBICの新ガイドラインを適用することが必要。融資を行う以上は、特に事故の未然防止の対策を取っていただく必要がある。

Josh Newell氏(Researcher)− 国境を越えた影響が重要だが、事業者は考慮していない。事業者はロシアの法律を遵守することしか考えていない。しかし新ガイドラインにより、質を向上させることができる。ガイドラインを適用すれば起こる可能性のある災害を防ぐことができる。

沢野氏− 主体的に事業者が行っていることを見ていく必要。分散剤の使用など、日本のどの部署がこれを読んで分析するのかお尋ねしたい。専門家等と協力して、積極的に対応をお願いしたい。

松本(FoE Japan)― 連絡会議では、事故があった場合の対策のみ。しかし今後は可能性が大きくなる。政府としての対策をとっていただく必要がある。事業者はタンカー事故に責任をもたないと言っている。政府の体制はできていると考えるので、危機感をもって対応していただきたい。また融資とのリンクも考慮に入れて頂きたい。漁業者、網走の市民などが懸念を持っており、これらの方々とも意見交換を継続的に行っていただきたい。 以上
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