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サハリンII事業者サハリンエナジーとの会合記録 (12月9日 東京)
12月上旬、サハリンIIの事業者であるサハリンエナジー(SEIC)の広報渉外担当者が来日し、サハリンIIに様々な懸念を持つ関係者との会合を持ちました。今回の来日では、北海道・東京の市民団体、漁業関係者、学識者、地方政府関係者、NGOと会合を持ったとのことです。

本記録は、12月9日に東京で開催された会合の記録です。なお、SEICは2003年2月〜3月にかけて、サハリン島および日本でのパブリックコンサルテーションを開催することを計画しているとのことです。

サハリンエナジー渉外広報担当との会合記録(東京)

文責:FoE Japan

日 時:2002年12月9日(月) 午後6時半〜9時半

場 所:国際環境NGO FoE Japan事務所1階会議室

サハリンエナジー(以下SEIC):渉外広報担当 成瀬 正美氏

参加者:五十音順・敬称略
     太田 雅隆  (財)海洋生物環境研究所
     倉沢 七生  イルカ&クジラ アクション ネットワーク
     後藤 真太郎 立正大学 地球環境科学部 環境システム学科
     古南 幸弘  (財)日本野鳥の会
     佐尾 和子  海洋工学研究所
     佐尾 邦久  海洋工学研究所
     中島 大   気候ネットワーク
     廣田 聖人 
     岡崎 時春  FoE代表理事
     神崎 尚美  FoEスタッフ
     野口 栄一郎 FoEスタッフ
     濱本 慶絵  FoEボランティア
     松本 郁子  FoEスタッフ
     山路 ゆり  FoEインターン



司会:
本日は、寒い中、お集まりいただきありがとうございました。 まず参加者の自己紹介をお願いいたします。

――自己紹介

SEIC:
成瀬です。現在は三井物産からサハリンエナジー社に出向しており、広報・渉外担当をしています。今回は2003年2月から3月にかけて予定しているパブリックコンサルテーションの事前準備として幅広く意見をお伺いし、どのような懸念を皆様が持っているかを事前におうかがいしたいと考えております。よろしくお願いいたします。
現地(サハリン)ではロシアの法律に基づいた「公聴会」を既に済ませています。2〜3月のパブリックコンサルテーションはSEICとして、サハリン島のみならず我々のプロジェクトにご関心のある方々に説明しご理解を得るためのものです。その際にはより良い説明が出来るエンジニアを連れて来ます。今回挙げられた懸念等は持ち帰り、来年のパブリックコンサルテーションの場において説明を行います。

司会:
まずサハリン開発の現状から、お話いただけますでしょうか。

SEIC:
現在第二期計画の建設許認可の申請中です。

事業についてですが、第1期工事で備えつけられた掘削・生産プラットフォームであるモリックパックは流氷や結氷に耐えられる構造になっています。このモリックパックから2km離れたブイまで海底パイプラインを引き、ブイに繋がれたFSOタンカー(貯蔵・出荷設備)に生産された原油を貯蔵します。このFSOから原油はシャトルタンカーに積み込まれ、仕向先に輸送されます。FSOタンカー(貯蔵・出荷施設)は毎年5月20日頃〜12月10日頃まで稼動。これ以降は氷のないところに係留されています。2000年は5月24日〜12月10日、2001年は5月23日〜12月8日まで生産を行いました。今年も、11月末頃にアイスマネージメントチームを派遣し、その判断(オペレーションができるかどうか)をもとに近々操業終了時期が決められる予定です。

フェーズ2では、更に掘削プラットフォームを2基増やしガス・原油ともにパイプラインで南部コルサコフ近郊まで運び通年輸出できるようにすることが基本的な計画です。

( 図を見て)Detail1のピルトゥン・アストフスコエ鉱区は原油が主体、Detail2のルンスコエ鉱区はガスが主体となっています。Detail3では、コルサコフ近郊のプリゴロドノエという村にLNGプラントを建設します。北東のプラットフォームからルンスコエ鉱区の対岸に建設する陸上ガス処理設備まで約180km、そこから南のプラント施設までは約630kmです。LNGプラント一系列の生産能力は480万トンの予定で、2系列ありますので合計960万トンになります。プラントから850mの桟橋を作りLNGタンカーを入港させ積み込みをします。原油に関しては、プラントの5km沖合に海底パイプラインを引き、シャトルタンカー積み込み用の石油輸出ターミナルを作ります。油のピーク時生産量は17万バレル/日です。現在使用されているタンカーが60〜70万バレルのシャトルタンカーですので、単純計算すれば、4日に1隻のタンカー、週2船程度という割合になります。LNGタンカーは週3船程度を見込んでいます。

現在の原油の生産量は、1999年7月から生産が開始され、1999年は100万バレル、2000年1240万バレル、2001年1501万バレル、2002年11月末で1032万バレルです。2002年は2001年に比べて、生産量が落ちていますが、これは生産に従って油層内の圧力が落ちてしまったことが要因です、今後、水圧入を行い、生産量を高める計画となっています。

司会 :
油流出の対策についてもお伺いできますでしょうか。

SEIC:
油流出時の対応として、ヴィチャズ(プラットフォーム、海底パイプライン、ブイ、FSOからなるコンプレクスの名称)に回収船1隻を常時待機させており、ノグリキのキャンプにも回収設備を用意しています。またサハリン島内にあるエコシェルフという会社の油回収設備を徴用できることになっております。更に、大規模の流出の場合にはシンガポールやイギリスの会社と契約を結んでおり、油回収用資機材を飛行機で運び即時対応することになっています。以上は第1期工事の油流出防災計画(Oil Spill Contingency Plan)に記載されていることです。

第2期工事の油流出防災計画(Oil Spill Contingency PlanまたはOil Spill Response Plan)は既にEIAの中で策定されています。第2期工事でできる設備それぞれに油漏れ対応資機材を配備する計画であり、陸上油漏れ対策プランも立てています。FoEからの要請の中に、「建設用技術経済検証書(TEOC)」の日本語での公開とありますが、これはとても難しいかと思われます。TEOCは全部でVolume1〜7までありますが、これは膨大な量の資料です。その7の部分が環境影響評価(EIA)です。現在このTEOCに対するロシア側の承認を待っています。おそらく来年第一四半期頃には承認されるであろうと思っています。その後建設許可(Construction Permit)を得るのに1ヶ月半ほどかかるものと見込まれます。TEOCはこの許認可を得るのに必要な書類であり、翻訳には膨大な時間がかかります。第一次計画のOSCPは日本語訳の上、北海道の図書館で公開しています。第二次計画のOSRPも邦訳する予定ですが、現在EIAとともに、ロシア側の承認を求めている最中であり、この翻訳はTEOC承認の後、翻訳期間も考慮すると本年5月頃の公開となると思います。

神崎 :
技術的な部分でも、事業の詳細を調査したい部分があるので、要約や要所だけでも公開をお願いします。 SEIC:社内で検討してみます。

岡崎 :
第一期工事のEIAのロシア語訳は、英語に対応していないという意見がありましたが、今後はきちんとした翻訳をお願いします。

中島 :
パイプラインの構造について教えてください。

SEIC:
パイプラインはすべて埋設されます。ガスのパイプラインは48インチ、原油のパイプラインは24インチです。肉厚がどのくらいかは今データがありません。川を横切る部分、活断層部分、村を通る部分等については肉厚を厚くする予定です。活断層部分は断熱材を厚くするなどの処理も行います。

神崎 :
パイプラインの話が出たので、併せてお聞きしたいのですが、川を横切るパイプラインはどのように通すのでしょうか? SEIC:パイプラインは約1000の川を横切ることになります。そのうち10未満は地下深く横から掘ってパイプラインを敷設する予定です。その他の川は、川の流れをせきとめずに、そのまま上から掘っていくという形を取ります。鮭が遡上するような川については鮭が遡上しない冬の時期を選んで作業を進めていきます。

神崎 :
サハリンは全体に土壌がゆるく、いくら鮭が遡上する時期を避けてもその後に影響がでるのでないかと思うのですが、この問題に対しどのような調査を行っていらしたのか、また緩和策はお持ちなのでしょうか。

SEIC:
もちろんサハリンエナジー社もきちんと調査を行った上で、このような決定を出したのだと考えます。単に、時期をずらせばいいと判断したわけではないでしょう。インパクト軽減措置もあるはずですが、詳細についてはこの場では分かりかねるので、次回ご報告します。

中島 :
パイプラインが原生林を通る場合の処理方法はどうなっているのでしょうか。

SEIC:
工事の基本コンセプトとして、なるべく自然へのインパクトは減らすというものがもちろんあります。既存の道路や鉄道がある場合は、その横を通るように建設予定をしております。もし、未開の土地にパイプライン敷設現場まで新たに道路を作る場合には、工事終了後、またもとの状態に戻るように、植栽などの処置を行う予定です。何年かかるかは分かりませんが、現況回復を図るように努力をいたします。

神崎 :
話がすこしずれるのですが、10月下旬に要請しました第2期工事のEIAが本日(12月9日)に届きました。まだ目を通せていないのですが、こういった資料をもっと早くにいただければ、このミーティングもより建設的なものになると思います。

また、さきほど川を通すパイプラインの掘削方法についてのお話がありましたが、代替案の検討はなされているのでしょうか。 SEIC:検討はなされていますが、最終的になぜ埋設という結論となったかの詳細は現在分かりかねますので、次回にご報告させていただきます。

佐尾和子:
パイプラインが破損し油が漏れた場合に、どのように漏れを知ることができるのでしょうか。メンテナンスはどうなっていますか。

SEIC:
それには、いくつかの方法があります。1つめとして、パイプラインの数箇所で流量を測定する仕組みになっています。もし最初のPointより、次のPointで流量が減っていれば、途中で漏れた可能性が高いというわけです。それぞれの設備には、流量を測定する装置が備わることになっています。2つめとして、定期的にパトロールを行います。これは油が地中に染み出ていないかをチェックするものです。3つめとして、油漏れ対応資機材をパイプライン沿い数箇所に設置します。

佐尾邦久:
検査を定期的に行うと言われましたが、ピグによる検査はどの程度行われるのでしょうか。

SEIC:
定期的に、ピグと呼ばれる金属製のボールをパイプラインの中を通すことになっています。これは通常パイプランを掃除するものですが、特殊なピグによって、パイプラインの中で油やガスの漏れがあるかどうかがわかります。具体的な回数は今わかりませんが、定期的に行われることになっています。

佐尾邦久:
通常、数パーセント以下の漏れを検出することはなかなか難しいと思います。その点、ピグでの調査はとても重要になってくると思います。

佐尾和子:
全体的な質問になるのですが、このようなパブリックコンサルテーションを行う目的というのは、企業側からの一方的な説明なのでしょうか。それとも、私たちがもっている懸念を取り入れ、計画になんらかの改正を加えていただけるのでしょうか。

SEIC:
もちろん、パブリックコンサルテーションは一方的な説明というわけではありません。皆さんの懸念をきちんとお伺いした上で、経済性、技術面などを考慮に入れ、採用した方が良いと思われるものに関しては、採用していくこともあります。そしてまた、いただいた懸念に関してはきちんとご返答していく予定です。採用するか否かに加え、その結果に至った理由もお伝えしていきたいと考えております。

佐尾邦久:
防除計画(OSCP)は、英語にしても日本語にしてもとても厚いものです。できれば、20〜30ページに要約して、ホームページ上などへの掲載をお願いします。また、開発計画も載せていただきたいです。NGO側で翻訳などを行うと、誤解を生むこともありますので、発行側でやっていただけると良いと思います。

佐尾和子:
国会図書館に置くなど、もっと、一般の人が自由に閲覧できるような環境を整えてほしいと思います。北海道の図書館にしかおいていないというのでは、遠すぎるため、手に入れにくいものです。

後藤 :
補償問題についてお伺いします。油流出事故が起きた場合には、責任の所在はどうなるのでしょうか。

SEIC:
油流出事故がサハリンエナジー社の設備内で発生した場合には、サハリンエナジー社の責任となります。具体的にどういった補償方法が考えられているのかは、次回とさせてください。
しかし、タンカー事故につきましては、施設から油やガスをタンカーに積み終わり、FSOのカップリングからタンカーが離れた段階で、サハリンエナジー社の責任ではなくなります。第2期でもプリゴロドノエの港を離れた時点でサハリンエナジーの責任は離れます。それ以後は、買い主もしくは船主の責任になることを理解していただきたいと思います。

倉沢 :
老朽化しているタンカーが使用され、最近もよくタンカー事故が起きていることはご承知の通りだと思います。この開発で絶滅が危惧されているコククジラは、日本、韓国、ロシア沖で絶滅寸前で、現在100頭以下まで減少しているとまで言われています。どんな開発計画でも、影響を与えうる上に、もしタンカー事故があれば生態系に影響があると、細かいところまで調査がなされています。もし、タンカーがプラットフォームを離れた場所で事故が起きてもサハリンエナジー社に責任はないといわれるのは、いかがなものでしょうか。このプロジェクトがコククジラの絶滅を招いたものとして歴史に残る可能性が高いということですが、それでよろしいのですか。

SEIC:
SEICとしても、コククジラに対する認識は持っています。1997、98年頃から、Texas A&M大学に委託して調査を継続的に行っています。その後、地元ロシアの研究所に委託を移転しておりますが、過去5年間、コククジラの研究を続けております。現在、冬場の生活状況や、目や写真での個体数の確認、回遊ルートの解明を行っているところです。

コククジラへの影響の回避についてですが、第1期工事においては、コククジラの餌場は決まっており、付近作業の制限を設けております。また、モリックパックに近づく支援船やタンカーが近づいてはいけない海域を設けたり、泳いでいる鯨が見えた場合には、空の場合においても、(ヘリコプターなどが)何メートル以内には降りていかないなどの、行動制限があります。つとめて、クジラへの影響がないようにしております。しかし、タンカーが離れた後に仮に事故が起こった場合には、SEICでは責任をもてないというのが、実情です。

神崎 :
コククジラに関連してなのですが、アメリカのNGOが中心となって、新しく設置するプラットフォームを12マイル沖合にすべきだという具体的な提案が出ています。最近、クジラがやせている、また掘削を行うだけでも大きな振動があり影響があるとの報告があります。またコククジラは夏場にロシア沿岸でえさを食べ、冬場えさを食べず中国の海域で子供を産むと聞いています。そういう意味からもサハリン北東のこの地域は、コククジラにとって重要な地帯です。

また、北海道の釧路でオオワシの研究をされている野生生物保護後公社の斉藤さんの調査によると、チャイヴォ湾付近でオオワシの巣が100ほど確認されたとのことです。幼鳥、亜成長を含めて約500羽ほどのオオワシが生息しているのではないかとのことです。またそのうちの約半数は北海道で越冬しています。サハリンのオオワシ影響があるということは北海道の生態にも影響があるということです。このような絶滅危惧種に対する調査、対策はどのように行われているのか、教えていただけますでしょうか。

SEIC:
鳥類に関しては、EIAの中で鳥の分布図を記載しています。動植物への影響に関する実態調査は行っており、第2期工事のEIAに、動植物に関する記述がありますので、そちらをご覧いただければと思います。

岡崎 :
第一期のEIAの中では、調査に関する記述だけであり、影響軽減措置については十分でなかった。

松本 :
今、EIAに関するお話がありましたが、このEIAは最終のものなのでしょうか。

SEIC:
サハリンエナジー社としては、最終のものです。けれど、ロシア側から改正などを求められれば、それを直してから完成ということになります。

中島 :
コククジラの調査に関してですが、5年前から生態調査を始めたということは、すでに試掘などが始まっていてコククジラの生態に影響が出てしまってから調査を開始した可能性がありますね。

SEIC:
両鉱区の試掘・埋蔵量確認自身は、80年代にソ連によって行われており、SEICとしては5年前の時点では、試掘は一本しかやっていないと思いますが、試掘を始めた時期と、調査を始めた時期の関連は、はっきりとは覚えていません。

中島 :
次回までに、これらの時期関係を明確にしていただけるようにお願いします。

松本 :
EIAがほぼ完成されているとうかがって驚いたのですが、パブリックコンサルテーションでの意見はEIAに反映されるのでしょうか。

SEIC:
EIAが出来上がっているというのは、ロシア側の建設許認可を得るためにロシア側の法律に基づいて策定した最低限のEIAのことを指しています。これは2002年9月に作られています。しかし、肯定的な変更というのは、ロシア側も認めるはずなので、変更はありえます。さらに、ESHIA(Environment Social Health Impact Assessment)というより範囲の広い書類の中で、これらのコンサルテーションの意見を反映して変更していくことは可能ですので、ESHIAに反映させていきたいと思っています。

神崎 :
ESHIAはこれから作られるものなのでしょうか。

SEIC:
ESHIAは12月末から来年頭に完成させる予定にしております。コンサルテーションを踏まえてからの変更はあると考えています。

松本:
先ほど、OSRPの日本語訳が公開されるのが、2003年5月ごろになるとのお話でしたが、パブリックコンサルテーションを2月から3月に行われるとなると、参加者はコンサルテーション以前に、書類に目を通せないことになるので、意見が一部になり、建設的な議論が出来ないことが懸念されるのですが、どのようにお考えですか。

SEIC:
確かに事前に皆様に必要書類を公開する必要はあると考えています。サハリンエナジー社側の(ロシア政府に承認されていない)OSRPを公開することも可能かと思いますが、それに関してはロシア側の了解を得る必要もあるかと思いますので、相談をして決定したいと考えます。

岡崎 :
先ほどからおっしゃられているロシア側というのは、中央政府のことなのでしょうか。それともサハリン州政府を意味しているのでしょうか。

SEIC:
ロシア中央政府のことです。ロシア側との契約もありますので、ロシア政府の認可を受けていない書類を公開できるかについては、相談する必要があります。

神崎 :
確認になるのですが、2002年12月もしくは2003年1月にESHIAが完成され、30日間公開され、パブリックコンサルテーションは公開後の2月に行う予定ということですか。また、先ほどから情報公開の話が出ていますが、FoEからの要請にもありますように、これまでの情報公開はとても不十分であるとの念を持っております。公開を要請すると、サハリンエナジーにいらしていただければお見せしますよ、という対応でしたが、それでは不十分です。

SEIC:
ESHIAの公開、および時期に関してはその通りですが、パブリックコンサルテーションでの意見は、検討の上、採用可能なものについては加えていくようにする予定です。現在までの情報公開については、確かに不十分であるとお詫びします。ウェブサイトも2001年10月に作られ、なかなか更新が出来ていないのが現状です。この状況を変えようとしているのが現状であり、会社側としても広報・渉外担当の人数を増やすよう、またCD−Romを使って情報公開をしていきたいと検討しています。ロシア側から認可を受けた書類に関しては、公開することができるので、すぐに公開できるよう、出せるものはすぐにお渡しするようにしていきたいと考えています。
どんな書類が必要かご連絡をいただければ、その書類が公開可能かどうか、返答していくとともに、公開手続きをとっていきたいと考えています。情報公開に対しては、これから改善を加えて、より迅速に対応できるようにする所存です。ただ、手元に届くまでの日数がかかるのは、ロシア国内の税関検査などの手続きがありますので勘弁してください。

松本 :
公開に対する努力をしていただけるのは、大変嬉しいことなのですが、申請をした者にだけ、お渡ししていただけるのでは問題があります。すべての人が情報にアクセスできるような環境を整えていただかないといけないように思います。 さらに、パブリックコンサルテーションを開かれる前に、EIAの要約やOSRPをいただけないことには、コンサルテーションの意義が半減されるでしょう。

       神崎 :
TEOCもまた、公開資料であると思いますが。

SEIC:
話のご趣旨はよくわかりますので、せめて要約は早めに準備するなど、何らかの措置を取りたいと思います。

中島 :
情報公開に関連してなのですが、モニタリングにおいて異常が発見された場合、対応するマニュアルのようなものは出来上がっているのでしょうか。

SEIC:
はい、それはOSRPに含まれています。対策の通報体制は出来上がっており、この分野に関して第1期工事のOSCPの見直しも進められています。

神崎:
先ほどから申し上げていることなのですが、パブリックコンサルテーションをより建設的なものにするために、EIAなど関連資料を出来るだけ早く事前にいただきたいと考えています。また、先ほどから今回の回答は次回に…とおっしゃられていますが、それは2月を意味されていることと思います。けれど、私たちにとって2月まで回答がいただけず、次回のコンサルテーションで回答をいただくことになれば、次回でより具体的な提案ができないことになります。出来れば、2月以前に回答を頂き、それに対するさらなる意見を次回のコンサルテーションで提出したいと考えています。

また、予備EIA作成時に、ロシアの法律に基づく公聴会が現地で行われたと思いますが、2時間の時間内で、会社側からの説明に1時間半がかかり、残り30分が質疑応答であったと聞いています。それでは、あまりに懸念を伝える時間が短すぎます。また現地で別に開催された公聴会では、100人ほどが集まったと聞いていますが、サハリンエナジーは法的義務がないからという理由で出席を拒否しました。現地での公聴会のやり方も改善していただきたいと思います。

SEIC:
今日の懸念に対し、2月以前に回答を出すということですが、ご趣旨は良くわかりましたので、社に持ち帰り、相談してみたいと思います。

佐尾邦久:
開発が及ぼす影響について、ロシアの法律を遵守すればよいといったような印象を受けますが、ロシアの基準は低いように思われます。世界のトップ企業として、そのような行為はとるべきではないと思いますが、どのように思われていらっしゃいますか。

SEIC:
もちろん、ロシアの法律だけを守ればよいという考えではありません。国際的な基準も加味しながら、世界最高基準の技術を用いていると考えています。

佐尾邦久:
1999年11月にサハリンエナジー社に提出した冊子「サハリン石油:正しい対応のために」(Sakhalin's Oil: Doing It Right)。これに対する回答もいただけていないのですが、この中にValdezやShetlandとサハリンIIの防除体制を比較した表があり、それを見ればサハリンIIの対策が他の先進諸国に比べて劣っていることは明らかです。それでも国際的な基準を守っていらっしゃるということなのでしょうか。これに対する回答も頂きたいと思います。

また、確かに、タンカーが施設を離れてしまえば、事故があっても、法律的にはサハリンエナジー社への責任はありません。けれども、それでは世界のトップ企業としての企業倫理を果たすという点で不十分で、今後努力していただけるようお願いします。

SEIC:
「サハリン石油」はこちらもいただいており、定期的に実施しているOSCPの見直しの際にも、考慮してますが、中には「抜き打ちで(船員の)飲酒検査をしろ」という項目もあったりと、SEICの所掌範囲ではないものも含まれています。

神崎:
サハリンエナジー社としても、責任をもってタンカーの航路設定などを行う必要があるのではないでしょうか。買い手に安全に油を運ぶという観点から考えれば、できることはあるはずだと思いますが。

佐尾邦久:
売る側として、買い手側にも一定の基準を作る必要があると思います。

岡崎 :
この件に関しては、第1期工事のときにも議論になっていました。売買契約の中に基準を設けることは理論的には問題ないはずですが、コストがかかります。現在の不景気の中では、なかなかそこまで基準を契約に盛り込むことができずに流れてしまったような感じを受けています。

SEIC:
我々としましても、国際基準を守ることは当然の意識として持っています。けれども、民間企業である限り、利益を追求しなければならないのも実情です。国際基準の中で許される範囲の中で、いかに買主と売主の双方にとって利益のある取引ができるのかを考えています。また、航路に関しては、推奨航路を設定するとか、その推奨航路上を漁業行動禁止とすることができるかなどの検討を行っています。  

神崎:
第2期工事が終われば、北海道沖をタンカーが通ることになると思います。いつ、どのくらいの油ないしガスを積んだタンカーが北海道沖を通るのかについて、きちんとお知らせいただけるような体制を作ってはいただけないでしょうか。

SEIC:
それは北海道でも要請された懸念であります。タンカーが通る日付、積載の量、タイプなどを知らせてほしいとのご要望でした。これにつきましては、引き続き社内で検討していきたいと考えます。

参加者:
原油の販売先は?

SEIC:
これまでの原油の顧客は韓国が主体であり、LNGに関しては、日本を主体に韓国などが顧客となる見込みです。

神崎:
OSCP によると、大規模の油漏れが起きた場合でも日本には通告されないようになっているのですか。

SEIC:
OSCP上では、日本への通報に関しては触れていません。しかし、日本の官庁との申し合わせにより、油漏れが起きたら、報告することになっています。規定では200ccを超える油漏れは、逐次、まず、株主に報告し、その後経済産業省経由海上保安庁へ報告することになっています。また、それ以下については、月例報告となっています。2001年の油漏れは、1500万バレルの生産に対し28ccであり、2002年は11月末までで、60.5ccとなっています。また、掘削に使用するMUDは、現状は、油をベースにしたMUDは使わずに、水をベースにしたMUDを使用しています。

佐尾邦久:
カッティングズ(掘削屑)は海洋投棄しているのでしょうか。

SEIC:
現在は、SEICの取得したWATER USE LICENSEに従い、海洋投棄をしていますが、第2期工事では技術的な面から難しい一部を除いては再注入する予定です。

神崎:
投棄についてお話がありましたが、モリックパックからはガスも燃焼していますが、これは法律違反ではないのでしょうか。全ての廃棄物は再注入されなければいけないことになっていると思うのですが。

SEIC:
ガス排出はある程度の量認められています。再注入するのには限度があります。廃棄については基準があり、それに基づいています。が、その基準量を超える場合には、ペナルティーを支払うことになります。地層に再注入できないガスについては、ガスの燃やす量に上限を定めて、その範囲内で原油の生産を行っており、原油を生産するがために、むやみにガスを燃やすというようなことは行っていません。第2期でパイプラインが敷かれれば、燃やす必要がなくなります。

神崎 :
第2期工事と言っても、後何年もかかりますよ。

佐尾邦久:
ガス圧入井が一本しかないのが問題です。増やすことで対処できます。これも国際基準から離れています。

岡崎:
世界的な基準を採用してやってもらいたい。現段階では、ロシア官公庁の未成熟な制度をうまく利用しているような感じを受けてしまう。

       後藤 :
北海道を対象としたOSCPはあるのでしょうか。

SEIC:
ありません。SEICがロシアの研究所に委託して行ったシミュレーションによると、コルサコフで油漏れが起こったとしても、3日以内に回収可能であり、北海道沿岸には漂着しないとの結果が出ています。また、宗谷海峡近辺で起きた場合にも、3日以内に回収が可能とされており、その場合でも、北海道に影響は及ばないとの結果があります。

岡崎 :
そのシミュレーションの想定ベースはお分かりでしょうか。

SEIC:
現在、詳しい資料を持っておりませんが、すぐに調べられるので後日お知らせします。

神崎 :
サハリン南部アニヴァ湾は白鳥など鳥の重要な中継地といわれております。また豊かな漁場であり、漁業への影響も心配されます。現在アニヴァ湾の漁業評価調査を行っており、漁業団体はその価値が下げられるのではないかと心配していますが、その調査の進捗状況などご存知でしょうか。

SEIC:
現在手元資料にはありません。

濱本 :
ロシア国内には、サハリンのことを切り離して考える人も多いと思います。自国の開発問題が他国民に影響を与える可能性があるということをロシア国民にも自覚していただけるよう、ロシア政府に対してもプレッシャーをかけていく必要があるのではないかと思います。

岡崎 :
ひとつの情報として、現在プーチン大統領は、いかにして西側に油を売っていくことだけを考えており、それを国策としているところがある。なかなか自覚のためのプレッシャーをかけるのは難しいだろう。

中島 :
大陸との接続、北海道との接続に関して、個人的にでも結構ですので、どのような感じをもっていらっしゃるのでしょうか。

SEIC:
サハリンエナジー社としての見解は、早くガスを出すことによって経済性を上げたいということ、そして、サハリン南部のガス化に努めたい。また、LNGを輸出することに関しては、現在もLNGを買っておりターミナルを持っている顧客の方に負担をかけずにすむことがメリットです。そして、LNGの需要は今後伸びていくと予想されており、日本のみならず韓国、中国、台湾など東アジアが新たなマーケットとなると考えています。パイプラインの場合は、仕向け先が限定されますが、LNGは自由に輸送可能であり、さらなるマーケットが見つかると予測されるため、LNGを選択しました。

太田 :
サハリンエナジー社として日本のNGOと会合を持つことはメリットがあるとお考えなのですか。

SEIC:
第1期工事においても、EBRD(欧州復興開発銀行)から強く環境対策に対する配慮を求められており、第2期工事においても、事前に準備しておく必要があると思っています。そのため、このような会合はとても意味があるものですし、できるものは事前にやっておくほうが、後々のためであると思っています。利害関係者に説明を求められることも多く、皆様から広く懸念をうかがうことはとても意味のあることであると考えています。

太田 :
最近、EIAには生態系影響の視点が要求されています。私はその点に関して、海域は陸域とは若干異なった環境で、陸域と同様の視点ではみられないのではないかと思っております。海域のEIAのターゲットをどこにおくか、影響の予測や評価という点で、定着性の生物をターゲットにするという考えもあるかと思います。

また、油流出が起きた場合のシミュレーションは、3日で回収できる予定なので3日しかやらないというのではなく、万一の日本への影響を考えれば、半月や1ヶ月程度のシミュレーションを行う必要があるのではないでしょうか。

SEIC:
日数に関しては油種の違いにより、揮発性の問題も関連してくるでしょう。

太田 :
揮発性の問題も含めて計算して到達前に消えたり、形態を変えるのであれば、それはそれでよいのではないでしょうか。

佐尾和子:
長期的なスパンで影響を考えるべきだと思います。エクソンバルディーズは重油ではなく原油でしたが、この例でも、最初は10年であった調査が延びています。今でも魚に影響が出続けているのです。毒性が強いことも認識してください。

後藤 :
海洋生物に対する影響は少なからず必ず出ます。さらにコククジラのえさとなるベントスはあまり深くないところに生息しています。油流出時、漂着後の引き波の際に残留する可能性が大きく、影響が大きいと考えられますし、オホーツク沿岸都市の漁獲高に関連する影響は評価は難しいですが被害額は大きいと思われ、明確な対策を立てるべきだと思います。

倉沢 :
日本の場合は捕獲してきた歴史があるので現在は少ないのですが、極東海域でのつながりも考えられるシャチなど海生哺乳類は海洋生態系の要となるものなので、きちんと保護されるべきだと考えます。

古南 :
パイプラインは約1000もの水系を横断するとのことですが、湿原をどのくらい通りどの程度の面積が改変されるのか推計を教えてほしいと思います。また、その水系に生息・依存する希少種はどのようなものがいるのでしょうか。鳥類に関しては、世界的な希少種であるオオワシ(魚類を捕食)やカラフトアオアシシギ(世界でサハリン南部のみで繁殖;湿原に生息)、ハマシギの固有亜種 Calidris alpina actites (世界でサハリン北部のみで繁殖;湿原に生息)への影響が心配されます。水系の生態系に対し長期的に環境負荷がかかることが懸念されます。EIAを拝見していないのでその中に納得のいく回答が記されているのかどうかがまだわかりませんが、鳥類関係者にもよりわかりやすい説明をお願いしたいと思います。

岡崎 :
かかわっている調査機関の名前を公開してはどうでしょうか。また、日本の団体を活用してみる気持ちはないのでしょうか。

SEIC:
日本の団体にお願いする気持ちがないわけではありませんが、生産分与契約中のRussian Contentへの配慮もあり、なるべくロシアの団体に調査をお願いすることになっています。また、基本的なところでサハリンエナジー社に、そのような団体の認識・情報が少ないことが原因であるようにも思います。ご存知でしたら、教えていただければとも思います。更に言葉の問題もあるかと思います。

太田 :
昔の絡みで、サハリンのデータが日本に相当あるのではないでしょうか。たとえば、海藻類では南サハリンの海藻(The marine Algae of southern SAGHALIEN)という本があります。

岡崎 :
王子製紙などはサハリンに工場を持っていたのだから、かなりデータを持っているのではないか。

神崎 :
FoEからの懸念・要請は、メモに書いてある通りなのですが、最後に先住民族の方々への影響や雇用問題についての懸念があることを挙げておきたい。

SEIC:
雇用に関してはESHIAとは別にサハリンエナジーレビューという冊子を作成しており、その中で建設期間中に、どの程度の雇用を見込めると記載しています。また、少数民族に関しての記述もあります。ESHIAの中のSocial Impactについても触れています。来年からになりますが、コミュニティーリエゾンオフィサーとして島内10ヶ所程度に常設事務所を配置させる予定です。彼らは地域の懸念を吸い上げ、円滑な協議が行われるようにする仕事を行います。

司会:
本日は、遅くまでありがとうございました。サハリンエナジー社には、ぜひ2月までに、今日の要請・懸念に対する回答をいただけるように、お願いいたします。また、広い情報公開の方法もぜひお考えいただければと思います。ありがとうございました。

以上
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