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コンサルタント報告書に対するNGO見解
  サハリンIIの事業実施者がコンサルタント会社、AEAに委託して作成したサハリンIIプロジェクトの健康・安全・環境・社会面(HSES)のレビュー報告書が10月9日付けでSEICのサイトに公表されました。この報告書は、HSESに関するサハリンエナジー社の実績を、包括的な基準、ガイドライン、法的な要件、また国際的な条約や協定に照らして評価したものです。
https://www.sakhalinenergy.com/en/documents/iec_ddr2007.pdf
これに対して、長年、サハリンIIプロジェクトの環境・社会問題の解決に取り組んできた米国NGO、パシフィック・エンバイロメントと、サハリンのNGO、サハリン環境ウォッチが、AEA報告書へのNGOの見解と批評をまとめ、融資機関に提出しました。

AEA報告書に関するNGOの見解と批評
>下段上、日本語要旨。原文(英語)はこちらです。

NGO見解と批評とともにJBICに提出したレター
>下段下、日本語訳。原文(英語)はこちらです。


*原文は英語です。この日本語は国際環境NGO FoE Japanによるものです。

2007年11月28日

AEA報告書に関するNGOの見解と批評

本質的な違反
サハリンIIに関するコンサルタント報告書で明らかになった広範囲の不遵守


UKを拠点とするコンサルタント会社であるAEAは、バミューダに登録されているサハリンエネルギー投資会社(SEIC)との契約のもと、2001年以降、ロシア極東のサハリンにおけるサハリンU石油・ガスプロジェクトが環境や社会にもたらす影響を検証してきた。

この検証はプロジェクトへの融資を検討している公的金融機関が求めたものである。2007年の9月に、SEICは「独立環境コンサルタント最終報告書ー金融機関:サハリンUフェーズ2健康・安全・環境・社会的検証(以降「報告書」とする)」と題したAEAの報告書を公表した。

2007年10月8日のモスクワでの記者会見において、SEICはその「独立」報告書はサハリンUプロジェクトに太鼓判を押したと発表した。しかし、その報告書の検証は、独立したものでもなければ、サハリンUに「太鼓判」を押すような内容のものではない。

報告書は、融資を検討している公的融資機関の要求によるものであるが、これらの融資機関によって委託された独立した報告書ではない。むしろ、SEICが資金を出したものであり、「顧客」としてSEICの名前が記載され、SEIC2が発行した契約条件に基づいて作成されたと書かれている。

この契約条件を公表させる努力は成功していない。融資機関のためにコンサルタント報告書を作成することは一般的な方法になってはいるが、それにもかかわらず利害の衝突が、結果として報告書を独立していないものに変えてしまっている。

報告書には多くの分析的弱点がある。それは以下を含む:
・ 全ての過去の不遵守は、長期にわたる影響と現在進行中の不遵守を取り除くことによる将来的な改善措置をとおして是正されるとする具体性にかける推測
・ 付加的な分析や裏づけの証拠を提供することなく、単純にSEICの論理を繰りかえす、また同意することにより、多くの環境への懸念に答えようとする姿勢。
・ 通常の産業の実践の多くの誤った認識、そして"ベストプラクティス"とする、最小の融資機関への要求。
・ 他の専門家により特定されたいくつかの重要な点の省略及び誤認。

たとえこれらの欠陥があったとしても、報告書には組織的、慢性的な、国際的融資機関の政策や基準やその他の基準への違反が記録されている。さらに、報告書はSEICが、これらの評価の結果を無意味なものとするため、いかにして国際的融資機関にかかわりのある鍵となる環境評価のプロセスで手を抜いたかを証明している。最終的に、報告書には、サハリンUのために公的な国際的融資がSEICに提供された場合、SEICによって合意された国際的な融資機関の政策や基準への数多くの本質的な違反によって、ただちに融資の契約条件不履行となるであろう、と記録されている。

300ページにわたる報告書の奥深くに含まれるこのような重要な発見は、報告書の要旨部分には正確に反映されておらず、要旨には、このプロジェクトでは多くの「賞賛に値するベストプラクティスの例」が実施され、各種の政策に「高いレベルで遵守」しており、また、報告書の中で確認された、要件に遵守していない部分は、性質上軽微なものであるか、解決策がSEICの計画に盛り込まれていると矛盾したことが書かれている。

要旨では、報告書が「合意された基準やガイドラインの完全な遵守の明確な詳細を扱っていない」とし、「そうしなかったことによって、高いレベルの遵守を達成しているという主張を証明するための裏づけ証拠を提供していない」としている。

一方で、報告書の深部に含まれている発見は劇的に悪い状況があることを表している。例えば、主要な問題の概略に関する部分では、報告書の中で特定された遵守に関する問題全体のSEICが41%の部分において、SEICが遵守を達成していないとしている。この数字は、AEAが評価や提案された緩和策が「不十分」であると検証したものが改善されない場合、さらに70%にまで上るであろう。プロジェクトはすでに95%が完了しているため、そうなる可能性が高いと考えられる。

不遵守の具体例として、河川横断のパイプラインが挙げられる。報告書は、影響を受けやすい河川を横断するパイプラインの半分近くが、「HSESAPや国際的なベストプラクティスへの完全な遵守のもとで横断が行われる」場合に比べて、重大でより大きい影響を引き起こす可能性があることを示している。

遵守していないものは軽微であるか、将来的な行動計画により解決されるとするSEICの主張は、融資を検討する機関の中で中心的な議論となっている。SEICと、いくつかの融資機関は、これらの将来的に約束された行動によって、長期にわたる重大な、また取り返しのつかない影響が起きることを防ぐとしている。しかし、報告書は、この主張には二つの重大な不備があることを明らかにしている。

まず第一に、報告書はSEICが慢性的に過去の義務を果たすのに失敗していることを記している。そのため、将来的な義務を計画を果たすことにより遵守に達するというSEICの主張を信頼することは疑わしく、リスクが高い。第二に、報告書は、SEICが適切なベースライン調査を行っていないこと、また時機を得た適切な環境面の分析を提供しようとしないことを記している。

このために、専門的な監視員が、発生を認めているような負の環境影響が、長期にわたるものではなく、取り返しのつかない影響ではないと結論づける根拠も、あるいは将来的な影響のリスクが実際に環境への害として現れることはない、と結論づける根拠ないもない。

偏った、また分析的に弱い報告書で明らかにされた偏在する遵守の失敗は、国際的な公的そして民間の融資機関が求める融資の条件にSEICが到達していないこと、また融資を検討する機関が、サハリンUが彼らの支援を受けるに値するということを正当に論じることができないとことを裏付けている。


脚注1
サハリンUの全てあるいは一部分への融資を検討している公的融資機関は、欧州復興開発銀行(EBRD)、米国輸出入銀行、日本の国際協力銀行(JBIC)、そしてベルギーの輸出信用機関のONDDである。2006年、ONDDは環境への配慮により、サハリンUの下請け会社への輸出信用保険の付保を取り下げた。
2007年には、EBRDは同じく環境の懸念のため、サハリンUへの融資の検討を取り止めた。
2 AEA Technology plc, Independent Environmental Consultant Final Report - Agency Lenders: Sakhalin II Phase 2 Project Health, Safety, Environmental and Social Review (2007), see Responsibility Statement and data sheet, ii-iii. (出典)





NGO見解と批評とともにJBICに提出したレター

2007年11月7日


国際協力銀行
総裁 田波 耕治 様


サハリンUプロジェクトの不遵守問題を考慮している御行及び他の融資機関に向けて作成された、コンサルタント会社、AEAの報告書に対するNGOのレビューと批評をご査収くださるようお願い申し上げます。

NGOのレビューと批評では、AEA報告書の質と手法にいくつかの欠陥があることを確認しております。そのような弱点はありますが、AEA報告書は、プロジェクトスポンサーであるサハリンエナジー社(SEIC)が示している以上に、プロジェクトが非常に高いレベルで公的及び民間の金融機関の環境政策に慢性的に遵守していないことを明らかにしています。更にレビューでは、受け入れられない、あるいは回避できないような環境への損失が起きる前に、適切な影響評価をし、必要な緩和策を実施することを、SEICが広範囲に渡って繰り返し失敗してきたことを記しています。

また、批評では、融資の条件として評価を実施する外部専門家に対して、SEICが要求されたタイムリーな情報を提供することに難色を示し続けてきたことも記しています。また、SEICが要求された環境影響評価で手を抜き、建設が始まってからもプロジェクトの特徴であった基準への不遵守は、さらに将来的にも続いていくだろうと証明しています。

レビューでは、SEICが、JBICを含む金融機関の手続き上の要件や契約的義務に
深刻かつ直接的に違反していることを知らずして、御行を含む金融機関の方針、手続き上の要件や契約的義務に、SEICが深刻かつ直接的に違反していることを知らずして、そうした金融機関がプロジェクトを支持できるはずがないことを示しています。つまり、融資の可能性のある融資機関は、サハリンUへの融資を断らねばならないということです。

お返事をお待ちしています。


Kind regards,

David Gordon Doug Norlen
Executive Director Policy Director
Pacific Environment Pacific Environment
dkgordon@pacificenvironment.org dnorlen@pacificenvironment.org
Tel: +1 (415) 399-8850 x 301 +1 (202) 465-1650

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