賛同レター本文
2006年8月24日
国際協力銀行
総裁 篠沢 恭助 様
資源金融部長
環境審査室第1班課長
サハリンII石油・天然ガス開発事業における貴行のご対応に関して
貴行が融資を検討しているサハリンII石油・天然ガス開発事業第二期工事に関し、貴行はその環境審査において、2004年10月より2006年6月まで、東京と札幌の2箇所で合計11回に渡り「サハリンIIフェーズ2に係る環境関連フォーラム(以下、フォーラム)」を開催しました。2002年4月に制定された「環境社会配慮のための国際協力銀行ガイドライン」の精神に基づく対応として、貴行がこのようなフォーラムを継
続的に開催されてきたことに敬意を表します。しかしながら、私どもは以下の理由から、懸念や指摘に対する貴行からのご説明やご回答が十分に得られていないと認識しており、このような書簡を提出させていただくことにしました。
サハリンII第二期工事については、2003年初めに環境社会健康影響評価(以下
ESHIA)が公開されました。その内容に対して数々の不備が指摘されたため、同年 秋に事業者であるサハリンエナジー社(SEIC)は、環境影響評価補遺版(以下、EIA
補遺版)を作成中であることを明らかにしました。そのEIA補遺版が公開されたのは、2005年12月、つまり2003年ESHIAが公開されてから約3年後、第二期工事の約60%以上が完了した段階でした。
フォーラムの第1回から9回は、同事業のEIA補遺版が公開される以前に実施されました。その間のフォーラムにおける貴行のご説明は、問題の具体的な部分や核
心部分にはほとんど触れず、詳細な環境情報や対策はEIA補遺版に記載されるた め、それを見てほしいと繰り返し参加者に伝えることに終始しました。そして
EIA補遺版が公開された後、2006年6月に東京と札幌で1回ずつフォーラム が開催 されましたが、貴行は環境審査の過程であることを理由に、ESHIAやEIA補遺版、
また事業者の環境対策に対する評価については具体的に言及することを避けまし た。
一方で貴行は、野生生物に関するESHIAやEIA補遺版のデータの不足や保護対策の
不備などの指摘については、事業者が現在作成中である生物多様性行動計画(BAP) の中で議論されるのが望ましいといった発言をしています。
私どもは、このような貴行のご対応に疑問を抱かずにはいられません。第一に、
貴行の「環境社会配慮のためのガイドライン」には、「プロジェクトの影響を回 避・最小化する」ことが基本方針に掲げられています。これに従えば、既にほぼ
建設が終了し、影響の回避どころか最小化も困難な状態にあるサハリンIIプロジェ クトに対して融資審査を続けている行為そのものが、貴行が自ら定めたガイドライ
ンにも係わらず、それに違反していることを示すと考えます。
第二に、BAPは今秋を目指してそのプロセスを立ち上げようとしていることから
考えて、事実上、建設工事期間終了後の対策を扱うものとなるだろうことは明ら かです。これまで事業者の作成したESHIA、EIA補遺版の内容に関する基本的な情
報に関する多くの不備が指摘されてきました。それらの問題を置き去りにして、 建設工事終了後の対策のみを議論・検討することはできないと考えます。
私たちは以下の点について貴行に要望いたします。
・ 貴行が事業者のESHIA、EIA補遺版、環境対策の質をどのように判断して
いるのか、またフォーラムの参加者が挙げた懸念や指摘の中で、既に説明をいた だいた事業に反映された点のみならず、反映されていない点とその理由について、
具体的かつ明確な説明をすること。
・ きちんとした形で説明できない限り融資実行はないとの貴行のフォーラ
ムでの発言にある通り、融資の判断に当たっては、その根拠を明確にし、ステー クホルダーに対して説明し議論すること。
以上の要望に対する貴行のご対応につきまして、早期にご回答いただけますよう、よ
ろしくお願い申し上げます。
連絡先:国際環境NGO FoE Japan(担当:村上正子、神崎尚美)
東京都豊島区目白3‐17‐24‐2F TEL (03)3951-1081 FAX (03)3951-1084
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