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サハリンU石油・天然ガス開発事業
経済産業大臣に対する要請書
経済産業大臣 中川昭一殿
2004年8月23日
ロシア極東のサハリンで進行中の石油・天然ガス開発においては、地元住民、国内外の専門家、学識者、NGOなどから様々な環境・社会問題が指摘されています。地理的・環境的に密接な関係を持っていることから、日本ではとりわけ北海道の住民、漁業関係者が懸念を持って注視している事業でもあります。
今月16日から5日間、サハリン州とハバロフスク地方を訪問された中川昭一経済産業大臣は、メディアの報道によりますと、サハリン南部プリゴロドノエで液化天然ガス(LNG)プラントを視察後「日本のすぐ近くに世界最大規模の供給基地が出来るのは頼もしい」と話し、エネルギー供給基地としてのサハリンの重要性を強調したということです。また、マラホフ・サハリン州知事と会談した際には、「今後、工事の許可が円滑に行われるかどうかが工期を左右する」と述べ、ロシア側の協力を促したということです。
サハリン石油・天然ガス開発事業において、現在懸念されている問題点には主に次のものが挙げられます。
1. 絶滅危惧にある野生生物への影響
天然記念物のオオワシや生息数100頭以下のニシコククジラを含む生物に対し、開発行為及び油流出により甚大な影響が及ぶ可能性があり、影響の回避や対策が十分ではありません。
2. 石油・ガスパイプライン
パイプラインが敷設される予定の800qのルートは、22の活断層と1,103の河川を横断します。地震による破損・油流出、また建設や油流出による水系への汚染が懸念されており、その建設方法への疑問や安全対策に対す る説明も十分に行われていません。
3.油流出対策
タンカー事故が発生すれば、北海道の沿岸漁業やオホーツク海の生態系、地域社会に与える影響は計り知れません。事業者による油流出対応計画書(OSRP)は操業開始寸前(2006年)まで完成しない予定で、予防措置の不備、事故発生時の日本・ロシアの円滑な連携への疑問などがあげられています。
また、今回大臣が訪問されたプリゴロドノエに面するアニワ湾へは、北海道漁業関係者などから昨年9月に事業者に対し懸念が伝えられたにもかかわらず、何の説明のないまま、LNGプラントや原油輸出ターミナルの建設に伴う海底浚渫土砂が投棄されています。サハリンのサケ漁獲量の年間25%、オオズワイガニ、様々な種類の魚介類を誇るアニワ湾海底の生態系への影響が危惧されています。
このような取り返しのつかない被害を及ぼす前に、いったん工事を中止し、事業実施地での生態系全体について再評価を至急に行うべきだと我々は訴えています。また、油流出事故等による大惨事を防ぐためにも、社会・環境影響について具体的な対応策を検討し、継続的な議論をおこなうための場として、専門家、関係省庁、融資機関による協議会を設置し、情報の一元化、連絡体制の整備を実施するべきだと考えています。
今月9日に美浜原発で起きた蒸気漏れ事故に関して、「利潤追求の企業倫理を容認してきた国の責任は大きい」との声も聞かれます。事故に対する不信感が広がる中、中川大臣は「安全性あっての安定供給」と述べ、安全性の確認を優先する考えを示されました。今後こうした対応が、事故が起こる前、事業が進められる前の早期の段階で行われることを切に要請いたします。
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