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民間銀行に対するNGOからの警告書 「環境に深刻な影響 融資すべきでない」
●赤道原則にサインしていない銀行宛レター
  (日本での送付先:東京三菱銀行、三井住友銀行、UFJ銀行、新生銀行、りそな銀行)

2004年5月28日

 極東ロシア、サハリンでの120億円をかけた石油・天然ガス開発への融資に関し、事業者であるサハリンエナジーインベストメント社(以下SEIC)から貴行への接触があったことと存じます。SEICはシェルが率いる、三井物産・三菱商事を含む合弁企業です。

 ロシア・サハリンおよび国際的なNGOは、サハリン周辺を採餌海域とし、深刻な危機に瀕するニシコククジラの絶滅という結果を招くことになるのではないかと、本事業の設計に関し深刻な懸念を抱いております。事業に関する論議が掲載された最近の記事を同封いたしますので、ご参照ください。事業により深刻な被害が引き起こされうるため、私どもは貴行に対し現状のままで本事業への融資を検討しないことをご確認いただきたくお願いします。

 シェル・三井・三菱は昨年、欧州復興開発銀行(EBRD)、日本国際協力銀行(JBIC)、英国輸出貿易保障局(ECGD)、米国輸出入銀行(Exim)に融資を要請しました。シェル・三井・三菱は、現在もなお、本事業がこれらの融資機関の環境社会基準に満足に適合していることを認めさせなければならない状況にあります。融資機関団は事業の環境影響評価の適性について、根本的な疑問を挙げています。シェル・三井・三菱は、これらの疑問に対する十分な応答を提供できていません。

 EBRDはサハリンUのEIAが「目的に達していない」と発言しており、サハリンエナジー社が同行の懸念に満足に答えるまでは、もしくは答えないならば、融資しないと述べています。さらに、EBRD総裁は公の場で「我々は受け取った回答および現状に納得していない。そして事業者にもそう伝えている」とコメントしました。

 シェル・三井・三菱は生息数わずか100頭のニシコククジラの採餌海域を直接通過する海底パイプラインのルートを提案しています。これらのクジラの20頭以下が繁殖可能な雌です。そして彼等の採餌様式のどのような分断も生存数に影響を与え得るのです。サハリン沖は、ニシコククジラの唯一の採餌海域として知られており、建設が提案されている時期である氷が解けた夏の間クジラが訪れます。シェル・三井・三菱はコククジラの採餌海域近辺にさらなるプラットフォームを建設することも提案しているのです。

 シェル・三井・三菱は最近、コククジラへの影響が以前考えていたよりも大きくなるであろうことを認めざるを得ませんでした。事業設計と環境影響評価に重大な誤りが発見されたのです。社は冬季の海氷が海底パイプラインを破損することを考慮していなかったと気づき、パイプラインをより深く掘ることを公表しました。

これは直ちにコククジラの採餌域にさらなる騒音と妨害をもたらします。不運ながら、これはシェル・三井・三菱がイプラインのルートを変更する機会とはなりませんでした。ルートの変更は、本事業がIFCやEBRDの基準を遵守するための最初の一歩として必要なことです。

 融資機関団は、国際的なクジラ目の独立専門家パネルが、事業がニシコククジラに及ぼす潜在的影響を審査するための会合を持つが不可欠であると結論付けています。審査が完了し、コククジラへの潜在的な負の影響がないことが明らかになるまで、本事業への融資の提供について、貴行はどのような決定もするべきではありません。この立場は、英国環境大臣であるElliot Morleyによって強く支持されています。彼は、最良の科学者のアドバイスに従わない限り、英国が本事業への支援を提供するべきでないと述べました。

 一方、NGOは、事業の陸上構成部により直面する地震のリスクについて独立調査を依頼しました。そして地震が誘発する油漏れが深刻な影響を引き起こし得ることが分かりました。トランスアラスカパイプライン(TAPS)に長年関わってきた専門家であるリチャード・ファインベルグがこの調査を行いました。その報告書は以下でご入手いただけます。本報告書では、高地震地帯にある22の活断層をパイプラインがどのように横断するのかという点に関し、多くの回答のない疑問があると提起されています。
 cf. Sakhalin II Phase 2 project : UNANSWERED QUESTIONS
   >https://www.panda.org/downloads/policy/seismicreport.pdf.

 また、シェル・三井・三菱は、天然ガス液化プラント建設によって出される100万トンの建設浚渫廃棄物をアニワ湾に投棄することを提案しています。湾の保護状況が明らかにされていないにもかかわらずです。この投棄位置の選択は、漁業産業を糧とする何千もの地域の居住者の生活を脅かします。

 本事業は、コククジラを含め、絶滅に瀕するオオワシ、サハリンタイメン(イトウ)、サケ・マスを含め多くの種が脅威にさらされています。これらの懸念に基づき、私どもは、本事業への基本的な変更がないのであれば、貴行はサハリンU事業への融資を拒否するべきであると強く勧告いたします。

 ご回答いただくに当たり、本事業の更なる情報や私どもの懸念について何かご質問などございましたら、ご連絡いただけますようお願いいたします。また、貴行が本件への融資を積極的に考慮しているかについてお知らせ願えますようよろしくお願いいたします。


 
  ◆以下、賛同団体(15カ国39団体)

Kate Walsh
AID/WATCH (Australia)

Sebastien Godinot
Les Amis De La Terre (France)

Yoshihito Miyakoshi
A SEED JAPAN

Zakir Kibria
BanglaPraxis (Bangladesh)

Johan Frijns, Coordinator
BankTrack (international)

Andreas Missbach
Berne Declaration (Switzerland)

Wiert Wiertsema
Both ENDS (Netherlands)

Andrea Baranes
Campagna per la Riforma della Banca Mondiale (Italy)

Petr Hlobil
CEE Bankwatch Network (Central & Eastern Europe)

Nick Hildyard
The Corner House (UK)

Nanami Kurasawa
Dolphin & Whale Action Network (Japan)

Clare Perry
EIA International (UK)

Michelle Chan-Fishel
Friends of the Earth (USA)

Nick Rau
Friends of the Earth England, Wales & Northern Ireland

Janneke Bruil
Friends of the Earth International

Tokiharu Okazaki, Executive Director
Friends of the Earth Japan

Kenji Ago
Fukuoka NGO forum on ADB (Japan)

Hahm Eun Hye
Green Korea

Fraser Reilly-King
Halifax Initiative Coalition (Canada)

Yuki Tanabe
Japan Center for a Sustainable Environment and Society (JACSES)

Liz Sandeman
Marine Connection (UK)




Satoru Matsumoto
Mekong Watch (Japan)

Donald Pols
Millieudefensie (Netherlands)

Gabrielle Watson,
Research Fellow, Program on Human Rights and Justice, MIT (USA)

Michael Jasny
Natural Resources Defense Council (USA)

Karl Maeckelberghe
Netwerk Vlaanderen (Belgium)

Yohei Ishiguro
ODA Reform Network Tokyo (Japan)

Doug Norlen
Pacific Environment (USA)

Greg Muttitt
PLATFORM (UK)

Jan Cappelle
Proyecto Gato vzw (Belgium)

Leila Sadler
Royal Society for Prevention of Cruelty to Animals (UK)

Dmitry Lisitsyn
Sakhalin Environment Watch (Russia)

Regine Richter
Urgewald (Germany)

Carole Werner
W E E D - World Economy, Ecology & Development (Germany)

Leah Garces
World Society for the Protection of Animals (UK)

James Leaton
WWF UK

Igor Chestin
WWF Russia

Francis Grant-Suttie
WWF US

Paul Steele
WWF International









 
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