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2003年7月7日
ロシア・サハリンにおける石油・天然ガス開発に関する声明文
日本野生動物医学会
会長 増井光子
ロシア連邦サハリンで進行中の石油・天然ガス開発においては、生息する野生生物に甚大な影響が及ぶことが懸念されています。サハリンは生物多様性に恵まれており、希少もしくは絶滅の危機に瀕している種が数多く生息しています。国際自然保護連合のレッドリスト(The IUCN Red List of Threatened Species)の記載種でもあるオオワシ、ヘラシギ、カラフトアオアシシギは、現在開発が進められているサハリン北東部を主要な営巣地としています。またこれらの種は日露渡り鳥条約に指定されている種であり、本条約では生息環境の保全が締約国の努力義務となっています(第6条)。また日本の水産庁や日本哺乳類学会で絶滅危惧種に指定されているコククジラの西太平洋個体群(アジア系個体群)も開発海域を採餌場所としており、こうした野生生物を更に危機的な状況に追い込むことが大変懸念されます。
野生生物の絶滅の原因が人間の社会生活に起因しているのであれば、野生生物の保護はいまや我々人間の責務として、経済活動に優先して行うことが必要と考えます。絶滅した種は二度とこの地球上で姿を見ることはできないのです。
この開発を行うに際しての調査結果および事業に関する情報公開は十分といえず、現在進行しているサハリンT・U石油・天然ガス開発事業、また計画されているVから\の同様の開発事業において、事業主体である企業、関係各国政府、融資機関が、専門家やNGOとの協力のもと開かれた形で協議を開き、調査および事業の評価を行い、追加調査や事業計画の変更など適切な対策を早期に行う必要があると考えます。
以上のように、日本野生動物医学会は、ロシア・サハリンにおける石油・天然ガス開発が野生生物に及ぼす影響および開発の現状について、懸念を表明します。
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