カシャガン油田開発事業の環境社会影響
〜国際NGOによる現地報告レポート〜
FoEヨーロッパ、FoEフランスなどいくつかの国際NGOが、カシャガン油田開発事業の環境社会面での影響などについてのレポートを発行しました。(詳細はこちら)
レポートでは、例えば、現地住民や専門家などによる以下のような事業の環境社会影響に関する懸念点が指摘されています。
・事業地近くでの、チョウザメなどの魚類、カスピ海アザラシなどの海生哺乳類の大量死や、魚類の皮膚病。例えば、2006年5月には、2000匹のチョウザメとその他魚類、300頭以上の海生哺乳類の死体がカスピ海北東部の沿岸に打ち上げられています。
・カシャガン油田には大量の硫黄や、メルカプタンなど有毒物質の適切な処理及びそれによる人への健康被害。カシャガン油田は、約20%もの硫黄が含有してい
ます。またカシャガン油田近くにあるテンギス油田では、過去、硫黄の処理が不適切であったため、既に公害及び健康被害が起こっています。この過去の経験もあり、現地住民のみならず政府の懸念は深刻です。
しかし、事業実施主体であるAgip KCOは、これらの問題について現地の市民に対 して最新の情報提供をしておらず、また住民協議も実施していません。事業者は、
これらについて調査を実施し、その結果や対応を現地住民に周知、議論し、対策をとるべきではないでしょうか。
2005年10月、JBICは、事業実施主体Agip KCOに出資をしているインペックス と649百万米ドルを限度額とした融資契約を締結しています。日本の民間金融機関も協調融資を実施しています。また、独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
がインペックスが当面必要な借入資金約12億米ドルのうち、 50%の保証を実施することを決定しています。
このように、カシャガン油田開発事業については、日本のエネルギー資源の確保を目的として日本の官民が共同で事業を支援しています。一方で、現地からはJBICが融資を決定する以前より懸念が挙げられていますが、JBICは2005年に融資
を決定し、現在もその懸念は解消されていないようです。これらJBICなどの金融機関は、これらの懸念についての適切な対応を事業者に求めるべきではないでしょうか。
私たちのエネルギー資源はそのほとんどを海外からの輸入に頼っています。私たちは、その恩恵を享受するにあたり、エネルギーの開発段階における現地での環境や社会への影響を可能な限り回避・最小限にするようにしなくてはいけません。
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