何年か前、北海道の常呂(ところ)という町の女性の方から、「ロシアの森林は私達にとっても大切ですから、しっかり守って下さい」と言われたことがあります。町の産業であるホタテの養殖にロシアの森林が大切だから、と言われて私達は「?」と思いました。
この常呂という町はオホーツク海に面した町なのですが、ここの海のホタテを育くむ海水の栄養の出所が、ロシアの森林、タイガであるらしいことが分かりました。
サハリン島をふくめロシアの極東地域にはたくさんの川が流れています。その水は、日本海やオホーツク海に注いでいます。これらの川の流域は、昔からタイガに覆われています。ホタテを育む栄養分は、これらの川の水にタイガの土が与えた栄養なのです。
毎年北海道沿岸に漂着して新聞やニュースで目にする流氷には、魚介類を育てる栄養が含まれていると言われますが、その栄養の出所もタイガだったというわけです。地図で見ると、オホーツク海という海は北側をぐるりとロシアに囲まれた海であることが分かります。世界一の漁場と言われているオホーツク海の豊かさにも、陸地を覆うタイガの存在が大きく関わっているのです。
さて、タイガについて考えていただく材料として、まずここで、タイガという森林の特徴について述べてみたいと思います。私達自身も以前はこのような森の存在することすら意識していませんでした。おそらく皆さんにとってこのロシアの森林はまだ非常に遠く感じられるもの、馴染みの薄いものなのではないかと思います。"タイガ"(Taiga)という呼び名は、「広大な森」という意味のあるロシア語です。冬の気温がマイナス40度にまで下がるような北の大地で、高さ30~40メートルのマツやモミの立ち並ぶ天然の森が地平線まで地面を覆っている様子、その中をたくさんの川が流れている様子などを想像してもらえば、かなり本物に近いイメージとなります。
写真は、秋のタイガの様子で、日本海に近い地方のタイガです。実際にこうした光景を目の当たりにすると、その美しさに心を奪われます。
生えている木々の種類に目を向ければ、タイガは、カラマツやエゾマツが主体の森であるという点で北海道の森林に似たところがあります。しかし森全体として見たとき、タイガには次のような特徴や違いがあると言えます。
←戻る 次へ→