10月の上旬、ビキン川上流域にある地方ステイタスの鳥獣保護区である「ベルフネビキンスキー」が商業開発の手に渡った、という旨の報道がなされました。
この報道の発端は、9月15日に出された沿海地方政府による政令のなかで、この地方にある特定自然保護領域(OOPT)について定められた法律に幾つかの変更が加えられたことにあります。これによれば、ビキン上流の保護区では、「沿海地方政府自然利用局の許可の下、地質学調査、地下資源開発、建物の建設、道路の敷設、土地の除外」が可能であると記されています。
この政令は、今年変更が加えられた連邦刑事法、あるいは特定自然保護領域(OOPT)に関する連邦法−地方ステイタスの保護区を実質上「保護がない」状態に追い込んだ−に対応するために出されたものではないか、と言われています。現在のところ具体的な伐採計画は出されていませんが、今年の初めにも同地域の伐採を推進する動きがあったこと、ロシアの各地方で保護区が解消されるケースが増えていることなどを考慮すると、保護区を守るための法的な基盤が失われている現状を利用し、沿海地方政府がそこを開発する危険性もあります。
連邦自然利用監督局は、政令が出されたと同じ9月15日、天然資源省に対し、ビキン上流の保護区は世界遺産でもある既存の自然保護区「シホテ・アリニ」の管轄下において保護するべき、という提案を行い、同省から支持を受けた、と報道しています。
しかしながらこの提案が実現してもトラが生息し、ウデヘ人が伝統的な狩猟生活を続けてきたビキン川中流域のウスリータイガの森は守られません。FoE Japanは地元の先住民組合「ティーグル」、先住民族協会と共に、ビキン川上・中流域を対象とし、先住民自身が保全活動に参加し得る「伝統的自然利用テリトリー」の創設を訴えています。
ロシアタイガプログラム 佐々木勝教
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