'IMF'って知ってますか?
( 杉崎IMF副総裁との会見(9/11日)に関連して ―― 岡崎 時春 )

最近テレビにもIMFについてのニュースが流れるので、ご存知の方も多いと思いますが、今、国際NGOの間では、大きなキャンペーン・ターゲットになってます。何故か?
IMFが「貧困救済」を旗印にしようとしているからです。9月11日にIMFの副総裁(Deputy Managing Director)が来日、日本のNGOと懇談しました。異例の事です。9月下旬の、プラハでの世銀・IMFの年次総会で、NGOが大騒ぎをするかもと言うので、その牽制をするためと、IMFを市民に開かれた機関にしないと「貧困救済」が旗印に出来ないからです。
(関連記事:@9/26プラハ総会・英国紙の報道:AIMFが森林破壊?

IMFはInternational Monetary Fundの頭文字を取ったもので、もとは途上国などで、 外貨事情が悪化した時に一時的な外貨融資により経済危機を回避させようと言うことで、 出来たのですが、経済・金融のグローバル化の最中に起きた「アジアの経済危機」では、先進国の金融ブローカの暗躍もあり、外貨危機救済用の融資金額が巨額になり、期間も、数年に亘ることになった為、その融資金の途上国からの回収確保が大きな問題になったのです。IMFの融資残高はピーク時には20兆円となり、世界銀行や日本の国際協力銀行の融資残高に近くなるほど大きな'銀行'になったのです。職員もいま倍増中です。

NGOが問題にしているのは、' Conditionality ' です。IMFは資金回収を確保するため、融資先の国の政策に、注文を付けるのです、内政干渉です。その国に外貨を稼がせるため、輸出産業を振興させるのです。輸出競争力を付けるには、先ず労働強化(低賃金・長時間労働)、原材料のダンピング価格での供給など。先進国から見ると途上国からの労働搾取であり、資源の不当廉価搾取と言うこと。所謂途上国の植民地化です。 ' Conditionality ' が結果として「南北格差」を拡大したのです。しかも途上国の中でも貧富の格差は拡大しているのです。IMFは ' Conditionality ' と言う「ムチ」を取り下げることはせず、「貧困救済」と言う「アメ」を持ち出したのです。

「貧困救済」は本来、世界銀行の任務なのですが。世銀ですら「貧困救済」が過去30年掛かっても実現出来ないのに、IMFに何が出来ると言うのでしょう。融資(金貸し)で貧困者は救えないのです。喜捨・無償貸与(Donation)しか方法はないのです。NGOはIMF不 要と言っているのです。途上国の国民から見るとIMFはとてつもない「高利貸し」なのです。(現地通貨はどんどん切り下がるので、返済額はドル表示では変わらなくても、現地通貨では膨れ上がるのです)
経済・金融・貿易の、無制限の自由化・グローバル化を私達は問題にしているのです。
IMFは今世銀と表裏1体で動いてます。何故か? 世銀が融資した資金が、相手国政府の破産により戻ってこなくなるのを防ぐため、IMFが繋ぎ融資をしているのです。相手国で大きな政変が起こり、融資金が焦げ付くことを世銀は恐れており、IMFの出動で、債権を守ろうとしているのです。途上国の救済は表向きの看板で、実は先進国の権益を守るための融資機関なのです。IMFは先進国の出資金をベースに運用されているのです。

(以下、私見と蛇足) 日本は今、アジアの中で経済的には格差を広げ、この事が途上国の恨み・反感を買っているのです。アジアの大都市の裏町を日本人が歩くことは出来ません。私達は「平和共存」のために、経済協力(IMF、世銀、国際協力銀行、アジア開発銀行、ODA)をやってきた筈なのに、今の延長線のままだと、民族間(政府側民族と反政府民族)、国家間(金持ち国と貧乏国)の敵対意識をさらに助長するかも知れないと私は感じています。今の経済協力は途上国の政府上層部の懐を肥やすのみで、国民大衆はますます貧困に向かっているのです。世銀もようやく「貧困救済」は途上国政府主導のトップダウンではダメで、地方の住民・NGO組織を通す、ボトム・ボトム方式でしか実効が上がらないと気付き始めたようですが、これを大規模にやる方法はと言うと、まだまだ道のりは遠い・見えないと言えます。 私達の周りでは、見える範囲では「差別」と言うのは今や「禁句」になっているのに、東南アジアの裏町に住む人達と私達・普通の日本人との間には50年以上の格差が出来てしまったのです。旅行で東南アジアに行く人も限られた範囲しか歩きません、一般国民と話しが出来るような「場」は成り立たないのです。日本からの政府・企業の駐在員もガードマン付の団地に住まわされ、現地住民との交際は殆どないのです。国際交流による「平和共存」を目指すとODA白書などに書かれていますが、もっと実態を知りましょう。私は、「南北格差」の拡大が、これからの世界平和の障害になると考えます。日本人は金持ちです。しかしこの事が沢山の「平和の敵」及び「環境の敵」を作っているのです。心の豊かさを追求しても、経済の豊かさは我慢すべき時代に入ったのです。