クドレムク国立公園採掘問題:ファクトシート


KIOCLの採掘リース契約

クドレムク鉄鉱石株式会社(KIOCL)は、カルナタカ州のクドレムク国立公園内のAroliとMalleshwara地区において、1969年7月25日付の30年間採掘リース契約第909号に基づいて鉄鉱石を採掘してきた。1999年7月24日の契約期限を前に、KIOCLはさらに20年の許可延長を求める精力的なキャンペーンを開始したが、地元の「環境サポートグループ」を始めとするインド国内及び海外の様々な団体や個人は、採掘延長を許可するのでなく、むしろクドレムク地域での採掘を禁止するよう、インド環境・森林省に働きかけた。
環境森林省は1999年7月16日に、いろいろな条件を付けた上で、一年間だけの契約延長を臨時に認めた。この条件の中には、総合的な環境への影響評価を実施すること、および州政府の義務としてその評価を国立公園に当該期間内に通知することなどが含まれていた。この決定によって、すでに採掘が行われている地域1452.74ヘクタールでの採掘延長は許可されたが、残り1220.03ヘクタールの扱いについては言及されなかった。
この1年間の仮延長許可は、2000年7月24日に期限が切れた。再び内外の市民グループが大規模な反対運動を行ったが、州政府は今回も環境調査を条件として1年間の仮延長を許可した。

1969年の最初のリース契約で許可された採掘面積は5218ヘクタールだった。しかし1972年7月15日に約613ヘクタールが断念されたため、残った4605ヘクタールが契約条件どおりに会社の採掘対象となった。この土地は3200ヘクタールまでが「森林地帯」で、1976年の当初からこれまでに、KIOCLは森林地帯1452ヘクタールとrevenue land 1220ヘクタールの合計2672ヘクタールをいろいろな用途のために切り開いた。しかし現在採掘が実施されている土地は450ヘクタールにすぎない。したがってこの山間部での採掘が分厚い森林地帯を結果的にひどい虫食い状態にしている有り様が見てとれるだろう。

クドレムクの森林と河川

クドレムク国立公園は西ガッツ山脈に広がる森林の重要な地域を占めている。この国立公園は1987年にカルナタカ州から認可の公示を受け、トゥンガバドラTungabhadra州森林、南バドラBhadra州森林、ナラヴィNaravi特別保護区森林とアンダルAndar特別保護区森林にまたがり、面積は約600平方キロメートルある。その構成は熱帯性常緑樹の森林、ショラ大草原と混成常緑樹の森林およびその周辺の人工林である。標高は低地で300m、クドレムクの最高峰で1892mある。年間降雨量は約7000mm。トゥンガ川とバドラ川の2大支流がバガヴァティBhagavathi森林から発している。バドラ川の流れは、クドレムク鉄鉱石株式会社が採掘しているマレシュワラMalleswara地域とネリベドゥNellibeedu地域を貫き、バドラヴァティBhadravathiでトゥンガ川と合流してトゥンガバドラ川となる。トゥンガバドラ川は南インドの大河であり、広大で肥沃な氾濫原でもあるデカン高原でクリシュナKrishna川に合流する。

西ガッツ山脈に自生する植物には、固有種、希少種、絶滅危機種の多くがあり、その数は経済的に重要な種とか栽培植物の野生種とかの数十倍に及ぶ。 たとえばこの地方には約4500種の顕花植物がある。このうち約1700種は西ガッツ山脈の固有種であり、ほぼ3分の1は希少種か絶滅危機種である。そのほか、樹木やキノコ類をとっても多数の重要な固有種が生息しており、世界でも貴重な遺伝子の貯蔵庫と言える。

クドレムクにおける採掘の影響

インドの貴重な森林地帯を成す西ガッツ山脈は、採掘、乱伐、ダム貯水による水没などの複合圧迫にますます脅かされている。近年は特に強い政治的コネを背景にした大農場主による大規模な土地侵入も報告されるようになった。森林の分断化が進めば種の保存に対する重大な脅威ともなるだろうし、上流域の高い山々から地表の緑が失われていけば、いずれ下流域では洪水と旱魃(かんばつ)の壊滅的な循環に陥るかもしれない。トゥンガバドラダムではこのような影響がすでに目につくようになった。このダムは、沈泥堆積のペースが速いために、建設以来40年も経たないというのに、もう寿命の半ばが尽きてしまった。

クドレムクでの採掘は、絶滅が心配される動植物を擁する複雑な環境の全体を破壊しようとしているだけでなく、河川とその流域の陸地を高レベルで汚染している。過去25年に及ぶKIOCLによる広範な採掘操業はショラ森林を掘り尽くし、すっかり廃鉱石の山に変えてしまった。かつての風光明媚(めいび)な名所も、鉱山とその付帯設備が無残な爪跡をさらしている。バドラ川とトゥンガ川の源が採掘の影響をどれほど受けているかは測り知れない。専門家は、採掘汚染が原因で多種多様な魚が消えたこと、とりわけ絶滅の恐れが高いマハシア(大形の食用魚)が消えたことを明らかにした。下流の農場主たちは、廃鉱石の堆積が原因で農業生産性が落ちたと訴えている。市町村は、飲料水の水源に利用している川の汚染が原因で疾病が増えたと訴えている。それなのに会社はこれらの訴えを突っぱね、あまつさえ透明で定期的なモニタリング(監視)を実施してこれらの訴えを検証しようともしない。

KIOCLは、採掘が森林と河川に与えた損害を軽減するために、大規模な植林事業に乗り出したと自画自賛し、アカシア、ユーカリ、その他外来種の樹木を750万本以上植えたと主張している。ただし、このような単一種の造林が多様でかけがえのない天然の生息環境の代替物になるかわからないし、それはそれとしても、せっせと植林しているという彼らの言い分が本当かどうかきちんと確かめるという課題も残っている。

採掘が引き金となる高レベルの攪乱(かくらん)は、外来種の雑草の移入をいとも簡単に許すことになった。同様に、採掘活動のせいで、人間は森林のど真ん中に大規模で高度に都市化された居留地をどんどん造るようになり、その土地の環境は取り返しのつかない損害を受けるようになった。また鉱山からマンガロール港まで延びる全長67kmのパイプラインが漏れるという事故が発生し、深刻な川の汚染も生じている。

*******この情報は、現地バンガロールの団体「環境サポートグループ」から

主に提供されたものです。(翻訳協力:中村民雄)******