ケニア円借款案件(ソンドゥ・ミリウ水力発電事業)
各位
2001年6月11日
2001年5月29日以来参議院の外交防衛委員会、衆議院の外交委員会で話題となっているケニアのソンドゥ・ミリウ水力発電事業に関して、田中眞紀子外相は「引き続き問題をはらみながら(事業が)進行するなら再検討する」「本来の趣旨、それにかなっているかどうかという原点に立ち返って、見直すなり検討をする」と発言している。これをうけて、ケニアでは6月1日には主要新聞各社がそろって「日本は事業から引き上げ」と報じ、事業への融資継続の如何をめぐって緊張した雰囲気が漂っている。
ケニアからの情報によると、在ケニア日本大使館の青木大使は6月1日の記者会見で、「NGOが根拠もなくあまりに騒ぎ立てたために事業への融資が止まってしまった」と事業に伴う汚職や補償、雇用、保健衛生、自然環境への影響などについて問題を指摘していたアフリカ ウォーター ネットワーク等のNGOを強く非難した。また、青木大使は会見で「NGOは電子メールを通じて海外に情報発信を行っていた」とも指摘した。
こうした動きを受けてケニアでは、事業推進を強く求める中央政府及び地元出身の代議士による反発が顕著となっている。ケニアのモイ大統領は6月9日、「この事業が悪い事業だと世界中に言いまわっている地元出身の人物がいる」と地元活動家をほとんど名指しで批判した。地元代議士は日本政府への融資継続を求める請願書の提出を予定しており、数名の来日も検討されている。6月8日には事業推進を求める決起集会が地元で開かれた。また、ケニア財務省のムワチョフ次官は5月31日の青木大使との会談の中で事業へのケニア政府のコミットメントを約束した。
青木大使やケニア政府、地元代議士のこうした反発を受けてNGOは6月7日に記者会見を開き、事業ににおける問題を改めて指摘し第三者機関による綿密な調査と会計監査の必要性を訴えた。また、NGOのメンバーは政府、地元代議士による反発を受けて生命の危険を感じていると訴えた。メンバーらはこれまで本事業に関連して起こった地元住民や活動家への暴行、人権侵害が、今回の青木大使の発言などを踏まえて再発するのではないかと懸念している。実際、一人のメンバーの電子メールはパスワードを変更され使用不可能な状態になっている。
本事業をめぐっては2000年2月に住民集会が妨害され、2000年12月には活動家が銃撃、逮捕され、拷問を受けている。2001年1月の住民集会でも数人が暴行を受け、2001年4月には活動家の車が追突事故の危機にあっている。日本のODA案件をめぐって新たな人権侵害に発展しないよう、また本事業における中立的な調査と監査が行われるために、日本政府による最大限の努力が求められる。
この件に関するお問い合わせは下記まで。
○ソンドゥ・ミリウ水力発電事業 ケニア西部キスム地方のビクトリア湖に注ぐソンドゥ川に建設されている水力発電用ダム(60MW, 30MW×2基、流れ込み式発電所)。ケニア電力公社が日本工営にコンサルタントを委託して事業計画が進められている。 本事業に対して1989年から2度にわたって国際協力銀行による円借款供与が行われており、鴻池組、Veidekke、Murray & Robertsの合弁会社KVMが工事を受注している。総工費は約200億円。1999年3月に工事が始まり、2003年完成予定。ケニア政府は影響を受けるのは約600世帯、190ヘクタールとしているが、実際にはソンドゥ川流域の20万人以上が事業によって影響を受けることになる。
*ソンドゥ・ミリウ水力発電事業に関してはwww.foejapan.org/aidでもご覧になれます。
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