サンロケ多目的ダムプロジェクト
1999年8月13日 環境影響評価書(EIA)の分析:輸銀への申し入れ(08.13.1999) 日本輸出入銀行 総裁 保田 博 殿 専門家がフィリピン、サンロケダムの環境アセスメントの不備を指摘
フィリピン、サンロケダム計画については、これまでも上流部の先住民族の土地利用の権利などさまざまな課題が指摘が行われてきましたが、このたび、独立した立場の専門家によって水質、水文、地球化学、天然資源管理政策、総合環境計画について環境アセスメントの分析が行われました。その結果、専門家から環境アセスメントにおけるダムの堆積、水質、経済性の調査方法ならびにその結果について多くの不備や矛盾が指摘されました。 1) このダム計画は事実上汚水処理ダムとなっており、上流の鉱山の採掘業者の本来の責任を回避させてしまうこと。さらに、ここに堆積した汚染物質は次の世代へ環境的、技術的、経済的負担を押し付けることになってしまっていること。 2) ダム上流部、貯水池への土砂の堆積の算出方法に不備があり、ダムによる堆積が少なく見積もられているため、ダムの寿命は推測よりも36−65%短い25年以下となり経済的な採算が合わなくなってしまうこと。また上流の川床への堆積のために、上流のアンブクラオダム、ビンガダムのように上流で深刻な洪水が予測されること。 3) アセスメントが行ったコンピューターモデルによる予測は精密性に欠け、過度に楽観的な結論を導き出していること。また、比較の基となる化学物質の基準値が明示されていないためにダム周辺および上流、下流域ともに正確な水質の変化を測定することが不可能になっていること。
4) 採掘現場を抱えた上流の2つのダムの例をみると、ダムの貯水池には鉛、水銀、セレニウム、カドミウム、モリブデン、砒素、銅、ニッケルなどが検出されており、放射性物質のウランなどもシアン化合物と共に検出されている。サンロケダムでもこうした重金属の濃縮が起こることは必須で、このように汚染された水は高価な浄化施設で浄化しない限り、農業は愚か、上水道としても利用できないこと。 などが指摘されました(詳細は別紙参照)。 この分析は、事業実施主体が行った環境アセスメントをプロジェクト推進側だけでなく、独立した専門家の立場からアセスメントを再点検する必要があるのではないかという視点から、このダム計画に懸念を抱く国内外の市民グループが専門家に分析を依頼したものです。 私たちはこれらのアセスメントの分析結果を重く見、現在の環境アセスメントに問題のあるところについては再調査を行い、これらの懸念が解決されるまで、日本輸出入銀行はサンロケダムへの融資の再開および追加融資を行うべきでないと考えます。日本の公的金融機関である日本輸出入銀行が、社会・環境配慮が十分に行われないプロジェクトに融資を行うことがないように、このアセスメントの分析を真摯に捕らえ、融資に当たっては慎重に審査を行われますようここに要望いたします。 地球の友・ジャパン <賛同議員> |