サンロケ多目的ダムプロジェクト →→プレスリリース(2002.07.05.)
2002年7月5日 国際協力銀行総裁 篠沢 恭助 殿
フィリピン・サンロケダムへの融資凍結についての申し入れ
貴職におかれましてはますますご活躍のこととお喜び申し上げます。 さて、国際協力銀行が融資を継続しているフィリピンのサンロケ多目的ダム事業に対しては、先住民族の権利、土砂堆積による流域の村への影響、流域住民の十分な生計手段の確保など、多くの問題が指摘されてきました。建設工事の開始からすでに4年以上が経とうとしていますが、いまだに問題解決に向けての根本的な対策がとられず、問題を抱えたままで建設工事が進み、日本政府からの融資が継続されてきております。
現在、地元の高まる反対運動にもかかわらず建設工事は一方的に進められ、今年7月にも工事が完成し、貯水が始められようとしています。しかし、
日本政府は、先住民族の権利の保証、移住世帯の生活再建の確保などが十分に担保されることを前提に、99年9月、融資を再開および追加融資を行なったと理解しています。日本政府は国際的な義務である人権保護という視点から、影響を受ける先住民族や地域住民の権利を法的、また道徳的に尊重する義務があると考えます。これまで地元の先住民族や流域で暮らす人々は、彼らの生活や文化を守るための基本的な権利が認められるべきだと主張してきました。これは補償の問題ではなく、土地と一体である彼らの生活を尊重し、認めるかどうかという問題なのです。
また、電力供給過剰のフィリピンにおいて、民間セクターによる発電は現在必要とされていません。にもかかわらず、進められる民間セクターとフィリピン政府との電力売買計画は、電力売買調整費用としてフィリピン市民一人一人の負担となっており、効率化を促進するはずの発電の民営化は市民の電力料金を2倍にまで引き上げています。これでは、電力民営化の利益は事業を行なっている民間企業のものでしかなく、市民のものとはなっていません。
プロジェクトによる灌漑の利益が強調されていますが、大規模な灌漑水路の建設によって影響を受ける人々にはプロジェクトが完成しようという今にいたっても十分な説明や話し合いは行なわれていないのです。パンガシナン地域の灌漑を整備するためにサンロケダム事業が唯一の方法であるのかどうかについての十分な調査もなされていません。
サンロケダムはその必要性自体を問われ、流域の人々に取り返しのつかない被害をもたらす問題の多いプロジェクトです。地元住民は、これ以上地域の人々の生活の権利を無視したプロジェクトを進めるべきではないと主張しています。日本政府は融資を凍結し、先住民族や流域の人々、フィリピン市民の権利を尊重する問題解決の方法が明らかになるまで、融資は再開すべきでないと考えますう。財務大臣の良識あるご判断をお願いいたします。
以上
公共事業チェック議員の会
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