コルディリェラ人民連合(CPA)によるプレスステイトメント(2002.01.07)
ダム建設の目的は発展か? 利益追及か? コルディリェラ地方の河川流域では農民の生活が犠牲となるなか、 フィリピンではなく、むしろ日本の利益追及が図られている。 2002年1月7日 今年の終わりまでには、アグノ川で進むサンロケダムの建設は完了してしまうだろう。それは少なくとも、事業者らの期待通りの結果ではある。同ダムの高さはその底部から200メートル、堰は全長1.13キロメートルにわたる。貯水池は、ベンゲット州とパンガシナン州の境界線沿いに続くコルディリェラ丘陵の土地1,600ヘクタールにおよび、この土地に暮らす少なくとも138世帯のイゴロットおよびイロカノの農民らが移住することになるだろう。彼らは、ダム建設やこの工事関連の目的で利用されている3,400ヘクタールの土地からすでに移転させられた603世帯の人々に続く移転者となるのだ。 この移転者のほかに、さらにコルディリェラの農民約8,000世帯が今後50年にわたり、移転による物理的あるいは経済的な苦しみを味わうことになるだろう。この世帯のうち半数は、集水域の保護を目的として彼らの生計活動が規制された場合に、現金収入を失う。その他の半数の世帯は、集水域の保護対策がとられるにもかかわらず、1年に635万立方メートルにおよぶと見積もられているダムの土砂堆積により、上流における堆積と洪水が誘発されるため、生計手段および土地の双方を失うことが予想される。 このように、移転する全世帯の生活は発展という目的の犠牲になっている。これは、つまるところ政府が望んでいることでもある。政府にとってこのダムは345メガワットの発電容量を備えた、フィリピンの経済発展に決定的なものとなる可能性を秘めたものなのだ。 しかし、実際にそうなるのだろうか? サンロケプロジェクトの電力購買契約では、ダムの建設業者および経営者が実際に発電をするか否かにかかわらず、少なくとも月々1,000万米ドルが彼らに支払われることになっている。仮に彼らが発電をした場合は、最高で月に1,700万米ドルが支払われる。こうして、彼らがダムの経営を行う25年間にわたって、フィリピン経済の30億から50億米ドルが彼らに搾取されることになるのだ1。 ダムの建設を行い、将来ダムを経営する予定になっているのは、サンロケパワー社(SRPC)という企業連合体だ。うち一つの企業は多国籍企業サイス・エナジーで、SRPCの資本50%を拠出している。残り二つはいずれも日本企業で、丸紅の海外支社が42.5%、関西電力が7.5%の資本出資をしている。そして、同ダム建設事業の大部分の資金は日本の国際協力銀行(JBIC)から融資されている。 JBICは、海外で行われる開発計画に対していわゆる援助の手をさしのべるための日本の主要なチャンネルとなっている。実際、この援助のほとんどは貸し付けとなっており、一つは海外経済協力業務、もう一つは国際金融当業務として扱われている。毎年、前者の業務には約140億米ドル、後者の業務には約70億米ドルが充てられている。 サンロケダムの総工費12億米ドルのうち4億米ドルについては、フィリピンが返済を負うことになるローンだ。これは、JBICの海外経済協力業務から融資されている*。そして、JBICがサンロケプロジェクトに対して行っている別の融資分は国際金融等業務から出されているものだ**。 JBIC自らも認めているように、国際金融等業務を通じて行われる融資の大部分は、グローバル資本市場で国際競争力を高めようとする丸紅や関西電力のような日本企業の支援に充てられている。JBICは「海外投融資は日本企業のグローバル化のために提供されるもの。(中略)国際市場における日本経済支援は、日本の将来の鍵を握る一つの課題である。」と述べている2。 何十年もの間、エネルギー開発産業は欧米企業により支配されてきた。日本はそれらの企業に追いつくと同時に、エネルギー資本市場全体への拡大を図ろうとしているのだ。 コルディリェラ地方において、サンロケのほかにもエネルギー開発プロジェクトを承認するよう、JBICは地方自治体に積極的な働きかけを行っている。現在、JBICの融資が待たれている事業は、Abra州とIlocos Norte州の境界線沿いに建設が予定されているPalsuguanダム、Ifugao州とNueva Vizcaya州の境界線沿いに予定されているMatunoダム、また、その他のフィリピン電力公社が現在計画中のダムである。今挙げたダム建設のうちほとんどの実行可能性調査(F/S)は、1970年代のマルコス独裁政権の時代に日本の国際協力事業団(JICA)によって実施されたものだ。これらのダム建設計画の原案については、チコ川流域のダム開発計画に対するコルディリェラ地方の人々の反対運動を鎮圧することにマルコス政権が失敗した後、棚上げされてきた。しかし、これらの建設計画はラモス政権により再び検討され、復活を遂げたのである。 サンロケプロジェクトと同様、他のダム事業もコルディリェラ地方の河川流域沿いに暮らす農民の生計手段や生活様式を崩壊させるものであり、彼らの生活を脅かすものである。 アロヨ政権は、JBICがこれらの事業に出す融資を天からの授かり物と考えている。しかし、JBICのこれらの事業への融資は、少しも利他的なもの、つまり、フィリピンのためのものとは言えない。JBICがサンロケダムのようなプロジェクトへの融資に邁進するのは、日本の帝国主義的な利益追及以外の何者でもないのだ。
ALYANSA DAGITI
PESANTE ITI TAENG-KORDILYERA
CORDILLERA PEOPLES'
ALLIANCE
脚注: 訳者注: |
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