フィリピン、サンロケダム
地元市議会が計画への
支持撤回決議を圧倒的多数で可決!!



プレスリリース
2000年9月19日

 9月13日、フィリピン、ルソン島北部のベンゲット州イトゴン市議会は、サンロケダム建設に対する支持を撤回する決議を圧倒的多数で採択した(賛成7、反対1、欠席2)。これは、同議会が97年7月に建設支持表明と引き換えに提示した「17ヶ条の条件」が、現在まで十分に満たされていないと判断したため。

今回の動きにより、国際協力銀行が支援してきたサンロケダムプロジェクトは現在、フィリピンの地方自治法に明記されているとおりプロジェクト継続の法的資格を失ったことになる。市議会が提示した「17ヶ条の条件」の履行は、国際協力銀行の融資実行条件の一つともされてきたもので、国際協力銀行は融資継続が難しい状況に追い込まれることになる。

先住民組織「コルデリィエラ人民連合(CPA)」を初めとした地元グループは、国際協力銀行がサンロケダムへの追加融資を留保し、国際協力銀行が自ら設置したプロジェクト融資支援のための条件を真剣に再検討するよう強く要請している。また、これらの条件に対する重大な侵害という見地から、国際協力銀行がサンロケダムへの融資中止を真剣に考慮するよう要請している。

会議を傍聴した地元の先住民組織「コルデリィエラ人民連合(CPA)」のメンバーによれば、支持撤回の理由として次のようなことが挙げられた。「17条の条件」は、イトゴン市住民の利益を保護し、ダムによる社会経済的悪影響を緩和しようという希望のもとに提示されたのだったが、議員たちはこれまでの成果はまったく不満足なものであると考えている。 なかでも、ダム建設によって先祖伝来の土地と生計を失う家族への補償だけでも確実にするような(先住民の)土地保有権認証制度をフィリピン政府が作れなかったことに対し失望している。また、ダムの集水域管理計画が十分に考慮されていないことに対しても不満がある。上流地の植林はイトゴン市がダム建設によって受ける損害に対する十分な補償にはならない。議員たちは、ダム建設計画推進者たちが議員や市民の間に誤った希望を広めたと感じている。

一貫してダムに反対している先住民組織「コルディリェラ人民連合(CPA)」の事務局長ジョアン・カーリグ氏は「今やサンロケダムは(法律で定められた地方政府の支持を失ったため)計画実行を主張する法的根拠を欠いており、建設続行は大いに疑問である。フィリピン電力公社やサンロケパワー社、国際協力銀行、エストラーダ大統領は、ダムによって影響を受ける人々の声に真に耳を傾ける時にきている。彼らはプロジェクト続行をあきらめ、引き起こされた被害の回復に努めるべきだ。」と述べている。

地球の友ジャパンの開発金融と環境プログラム代表、松本郁子は「国際協力銀行は、今回の地元自治体のプロジェクトへの支援撤回を受けて、自ら設定した社会環境配慮に係る融資条件を適切に実行するかどうかを試されることになる。政府系金融機関である国際協力銀行が、フィリピンの法的枠組みに反し民主的なプロセスを欠いたプロジェクトに支援を続けるべきではない。」と話している。

*サンロケダム:フィリピンルソン島北部のパンガシナン州、ベンゲット州にわたってアグノ川上流で建設が進められているアジア屈指の大型ダム(34万5千キロワット、貯水量8億5千万立方メートル)。総工費12億ドル(約1270億円)。うち9億ドルを国際協力銀行と東京三菱銀行をリードバンクとした日本銀行団が支援を行っている。プロジェクトの実施主体であるサンロケパワー社の最大の出資者は丸紅。関西電力も出資者の一つ。

*サンロケダム問題の詳細については、ホームページをご覧ください。
https://www.foejapan.org/aid/jbic02/sanroque/index2.html

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