サンロケダム建設契約内容の再検討をフィリピン上院が決議(2000.6月)


フィリピン上院本会議は、5月31日、しかるべき上院委員会がサンロケダムのPPA (電力購買契約)の調査を行うよう求める決議を可決しました。 決議は上院議員 Jaworski氏が提案したもので、多額の資金を注ぎ込むサンロケダ ム計画は国家経済の利益に奉仕するべきものであるにもかかわらず、フィリピン にとっては「効果がなく非常に不利」な内容であり、「利益は外国企業のものと なる」プロジェクトに「フィリピン電力公社が多大な出費をするのは無分別」で あると指摘しています。 

サンロケダムはBOTという方式で運営されますが、これは外国企業の連合体である サンロケパワー社が発電所を建設後25年間にわたって運営し、その間フィリピン 電力公社が電力を買い続けるというものです。その後発電所はNPCに移譲されます。 PPAには、サンロケパワー社が事業を行う上での義務や権利に関する条項や、25年 間に受け取る料金の取り決めなどが記載されています。

フォアサイト・アソシエイツ社のウェイン・ホワイト博士によるPPAの分析は、サ ンロケダムの発電コストは決して安くはなく、フィリピン電力公社は、十分な発 電量がなかったり電力需要がない場合でも、サンロケパワー社に固定料金を支払 い続ける必要があることを明らかにしました。

BOTプロジェクトのねらいは、民間業者に市場競争原理に基づいて発電をさせるこ とによってコスト低下を促すことにありますが、ホワイト博士は「開発業者は競 争市場から獲得する利益というよりも、フィリピン電力公社からの固定的支払い に大きく依存している」と述べています。

ホワイト博士による分析で明らかになった主なポイントは以下の通り。
・サンロケダムの発電コストはかなり高額である。月額試算によれば、フィリピ ン電力公社は1kWhあたり13−21ペソ(約0.32-0.51ドル)をサンロケパワー 社に支払うことになるが、全国平均消費者小売価格(1998年)は1kWhあた りわずか2.38ペソである。
・フィリピン電力公社は,流水量が十分でなく計画通りの発電ができない場合で も、サンロケパワー社に月4億ペソ(約1000万ドル)以上の固定料金を支払う。
・フィリピン政府はこのプロジェクトに関し、大きなリスクと責任を負う。上記 のようにサンロケパワー社は一定の支払いを保証され、水量不足のリスクから も解放される。一方、非発電部門の4億ドルはフィリピン電力公社が負担し、ま たフィリピン政府は用地取得、許認可取得、インフラ整備(道路や送電線など)、 移住者の支援や集水域管理などにおいても大きな責任を負う。
・ダムの建設や運用メカニズムに社会・環境影響の緩和は含まれていないので、 適切な影響緩和が行われていなくても、プロジェクトは関係なく進行すること ができる。
・サンロケパワー社が責任主体とされており、実際にプロジェクトに出資してい る丸紅、サイス、関西電力は、予想通りの利益が見込めない等の場合、プロジェ クトを捨てて責任負担から逃れることができる。
・予定されている NPCの民営化または資産売却などによってサンロケパワー社の 権利が影響を受けるようなことになった場合、サンロケパワー社はフィリピン 政府に PPAの契約義務履行保証を求めたり、プロジェクトの買い上げを要求で きる。  

以上の全文(英文)は( https://www.irn.org)で見ることができます。

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