ロス・ペランブレス銅鉱山開発(チリ)
ロス・ぺランブレス銅鉱山開発とは?

 

概要

ロス・ぺランブレス銅山(所在:チリ共和国、首都サンティアゴ北方約200km

埋蔵銅量:約943百万トン)は、現在1日約12万トンの銅資源を産出するチリ最大の銅鉱山のひとつだ。銅の発掘は、硫酸鉛等を含む毒性廃棄物の産出を伴うばかりではなく、製錬する際に放射能を含む有害な廃棄物を排出するため、大きな公害問題を引き起こす。しかしチリ政府は、このペランブレス銅山をさらに1日18万トンの産出量の規模にまで拡大する計画を現在進めている。

 今回の規模拡大を受け、既存の2ヶ所の廃棄物処理場をさらに大規模なものへ作り替える計画が持ち上がった。そしてこの拡大移転をめぐって、住民と鉱山採掘会社との間で環境問題をめぐる鋭い対立が生まれている。日本にとってチリは最大の銅輸出国であり、旧日本輸出入銀行(現国際協力銀行)は、このペランブレス開発に対し総額で315百万米ドルを融資している(1997年)。これは、この時行われた海外からの協調融資額450百万米ドルの実に6割を占めている。

どのような問題があるか?

  1. 放射能・有毒物質による影響
  2. 廃棄物処理場とは、岩盤を掘りぬきプール状にしたものであり、そこに発掘の際に発生する土砂などの廃棄物を埋め立てるようになっている。こうした廃棄物には放射能などの有害物質が含まれており、周辺地域への拡散が懸念されている。

    処理場に貯まった雨水は果たして安全に放水路を経由して放水されているのか、周辺で洪水が発生する際の安全性はどうなのか、プールからの漏れはどのていどなのか(プールは理想的に“漏れゼロ”を実現できないという証明がある)、何年後かにテーリングの重さのために放水路が疲弊することは避けられないのではないかetc.

  3. 貯蔵所の位置
  4. 二つの貯蔵所候補地は農地である。この農地はプピオ渓谷という環境汚染のまったく無い地帯の一部に属する。周辺には、果物農場などが存在する。渓谷の下流には、二つの都市型居住地、ロスビロス地区とピチアンギ地区がある。渓谷の水は農業用水や、都市の飲料用水として使用されている。また二つ貯蔵所候補地の下には地下水脈があり、この地下水もまた農業用水、飲料水に使用されている。よって周辺住民への健康への悪影響は否めない。

  5. 貯蔵所建設による環境への悪影響

    実際、二つの農場(25千ヘクタール)は渓谷の3分の1を占める。建設によりこの20%の地域が変化し、14千ヘクタール以上が運河、排水せき、水はき口の影響を受けるだろう。最後にテーリングによって水が溢れる4千ヘクタールは、ロスビロス地区の殆どに供給している僅かな地下水を蓄える低地全体を占める。更に、他の渓谷と比較して、プピオ傾向はよく地震が起こることも考慮しなければならない。

     また、間接的に影響を受けるコミュニティーの存在も忘れてはならない。隣接する地域の数々は、家畜や農業をプピオ河口の水に一部依存しており、空気汚染は家畜と人間に明らかに悪影響を及ぼすであろう。さらにこの地域には政府による貧困対策のための様々なプログラムがあるがそれが同鉱山のため妥協を余儀なくされそこなわれている。

  6. 貯蔵地建設コストに関する企業の思惑

    今回のテーリング貯蔵候補地は、実はこの他に26箇所も考慮していた。このなかでこの二つの候補地は時術的、経済的理由で有益であるという観点から企業にとって魅力ある選択となる。他の候補地としてエルマンケ等が挙げられるが、それらの地区は、人口の密集地域も無く、生物多様性にも影響を与えるようなものでもない。またオペレーションセンターに近いので、様々な事故を回避することが出来る。

  7. 雇用

企業は建設の段階でのみ雇用を作り出し、その後労働者達は地域に返される。このプロジェクトにより作られる雇用は主にその地域の外部からの労働力であり、その地域をが実際に得る経済的利益はほとんどない。実際の操業メンテナンスの段階で貯蔵所では多くて五人程度しか働かない。

またプロジェクトの周辺地区は観光業開発計画を持っている。素晴らしい気候、景色であるこの地方は首都セクターに近くリゾート地でもある。よってリゾート業、観光業の更なる拡大の可能性がある。そのほか、考古学的見地からもプロジェクト周辺地域は重要である。テーリング貯蔵所拡大により、これらの産業に経済的影響が出れば、雇用は更に落ち込むことが予想される。

プロジェクト関連会社と日本の関わり

ロス・ペランブレス鉱山は私企業であり、その60%はルックシックグループが所有し、40%を日本の株主が所有している。ルックシックグループはチリ最大の地場財閥の一つであり、ヨーロッパでの投資を通じ主にラテンアメリカで事業を展開。40%を所有する日本の企業は、日鉱金属(15)、三菱(10)、丸紅(8.75%)、三菱商事(5%)、三井物産(1.23%)である。

またこのプロジェクトには日本輸出入銀行が多額の融資を行っている。世界第2位の銅消費国である日本は銅を資源を殆ど輸入に依存しており、輸入先第一位がチリである。欧州の各銀行と協調融資で、輸銀分は315百万ドル(融資総額の70)である。

*詳細 JBIC HP https://www.jbic.go.jp/japanese/release/exim/1997-j/nr97-chile-j.html 

プロジェクトに対する現地の反応

*住民の動き

ロスビロス地区などの地域共同体は開発に断固として反対し、いかなる妥協策や保証も受け入れず、認可プロジェクトを修正するよう、また地理的環境や、問題の重要性、技術的、経済的基準による変化を修正するよう要求している。

*地方自治体の動き

地区環境委員会(COREMA)はこれらすべてのプロジェクトを認可した。

(作成:江原 誠)