世界銀行 「民間セクター開発支援戦略
(Private Sector Deveropment Strategy)」について
〜この文書は、第16回NGO‐財務省定期協議会(2001年9月11日)のために用意したものです。〜
世界銀行 Private
Sector Development Strategyについて
「貧困削減」を達成する手段として世銀グループ、特にIDAの民間セクター開発支援の拡大を検討。世銀グループ内の機関の役割についても検討の対象とされている。主な論点は、investment
climateの創出、社会サービス分野における民間セクターの参入、弱いガバナンスのもとでのインフラ分野の自由化、世銀グループ機構の適切な配置、適切なsubsidies等。2001年12月の理事会にドラフトが提出される予定。
内容についてのコメント
- PSDとpoverty
reductionとの有効な連関を説得的に説明することに失敗している。提出されているデータや論拠のほとんどはirrelevantでmisguiding(cf.
企業活動による雇用のインパクト、貧困国における民間セクターのサービス提供は、民間セクターの参入がそれだけで貧困者の生活向上やジェンダーイッシューにポジティブな影響を与える論拠にならない)。民間セクター開発における貧困削減の保証や貧困者の保護方策について十分な議論は割かれていない。
- 提案されている保健や教育等の社会サービス分野への民間セクター参入は、貧困者に手の届くサービスの提供を保証せず、それを意図してもいない。世銀は「何もないよりは選択肢があるほうがまし」と述べているが、貧困者はサービス有料化により利益よりはむしろ打撃を受ける事例が多く報告されている。さらにWTOにおけるサービス自由化交渉により、政府セクターが市場にアクセスできない人々に基本的サービスを保障することはいっそう困難になる可能性がある。
- weak governance下でのインフラサービス分野の自由化推進について、competitionそれ自体が一種のガバナンスであるとの主張は受け入れがたい。民間セクターが参加すれば完全な自由競争が保証されるわけでなく、透明性の欠如やモノポリー等ガバナンスに関連する問題点は多く指摘されている。ガバナンスを軽視した民間セクター開発政策は市民の政治参加を制限する可能性があり、環境・労働・安全等に関しても重大な懸念を生じる。
- 貧困と市場へのアクセスの関係性の捉え方は一面的で、世界銀行自身が示した貧困に関する分析や成長の質に関する議論を十分に反映していない。PSDSペーパーは市民的権利の保障、社会的エンパワメント、ジェンダー等の要素を実際にはスコープに入れておらず、市場へのアクセスや選択の多様化が即ち貧困者や女性の生活向上に結びつくとの誤った仮定に基づいている。
- 貧困層への質の高い基礎的サービス提供を目的とするなら、民間セクター支援は唯一かつ最上の政策ではない。公的セクターのサービス向上やコミュニティサービスに対する支援等のポリシーオプションを無視している。債務削減の早急な実施を進め、公的社会サービスの向上を支援することも重要。PSDを中心化する開発戦略はこれらの開発オプションを狭めてしまう可能性がある。
質問と要請 (※財務省に対するものです。)
- 日本としてどのようなコメントをしたのか?あるいはする予定か?
- 当ペーパーの主眼はmarket-friendly
climateを作ることであり、世銀自身も書いているように、貧困削減へのポジティブな影響はもしあるとしても間接的でしかない。WTO交渉と合わせて考えれば、最大の受益者はおそらく先進国企業ではないか。このような政策に基づいて公的資金を拠出することの合理性は。
- IFC、MIGAの役割拡大の合理性について。世銀グループ内で両機関のオペレーションの割合はますます増大しているが、貧困層に対する直接的な支援を提供しておらず、透明性や環境・社会面のパフォーマンスについても決してよいとは言えない。IFC、MIGAのオペレーションはむしろ縮小するという提案もあるが、これについての見解は。
- 要請:貧困削減及び持続可能な開発という世銀の目標に沿った、合理的で説得的な内容のPSDSが提出されるまでドラフトを承認しないよう求める。少なくとも、過去の民間セクター参入の事例について、貧困削減、ジェンダー、環境、社会的格差等、広くスコープをとって詳細なレビューを行うことを条件としていただきたい。
- 策定まで十分な時間をかけてコンサルテーションを行うことを求める。
※財務省の質問に対する答弁は、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)でご覧いただけます。
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