OECD閣僚理事会に向けて、各国担当大臣に提出したNGOの要望書 2001年5月11日
経済産業大臣 平沼 赳夫 殿
われわれは、ECGが輸出信用機関(ECAs)による環境配慮の実践に向けた共通のアプローチに関して合意形成を図ろうとするなかで進展が見られることを歓迎する。しかし一方で、現在協議が行われている共通のアプローチについての合意文書は、その目的についても根本的に弱めてしまうような重大な欠陥を持ち合わせており、G8沖縄サミットでの首脳声明(「我々は、関連する国際開発金融機関(MDB)の経験に基づいて、輸出信用機関のための共通の環境上の指針を2001年のG8サミットまでに作成するとのコミットメントを再確認する」)および、以下のG8環境大臣会合でのトリエステ宣言で求められている要望を満たせないことになる。
“共通かつ拘束力をもつ輸出信用機関の環境ガイドラインを速やかに策定し、実行に移すために……この共通のガイドラインは、国際的にも認知され、公けに支持されている欧州復興銀行や世界銀行グループの国際金融公社のような国際開発金融機関の実施要領に基づいて策定されるべきである。また、輸出信用機関は共通の手法により、その意思決定過程における透明性の向上や環境情報の公開、市民との協議、また、世界ダム委員会(WCD)勧告のなかで触れられている関連事項の考慮に努めるべきである。”
われわれは、根本的な問題を2点ほど指摘したい。
さらに、われわれは、ECGで話し合われている合意文書の草案のなかで、国際基準を遵守しているプロジェクトに対して「通常、環境影響についての追加審査を行わない。」とする条項があることを懸念している。これは、次の二点において問題である。まず一点目は、事業者の言い分に関わらず、これらの基準が遵守されているか否かを第三者が明らかにするというコミットメントがなされていないことである。二点目は、排気物や排水に関する国際基準など、いくつかの国際基準を遵守したプロジェクトでも、たとえば、重要な生態系の崩壊や住民の移住など、生態的、社会的に甚大な悪影響を与えることがある。そのようなプロジェクトに対して環境上の追加審査を免除することは、環境アセスメントの最も初歩的な原則を犯すことになるだろう。
最後に、われわれは21世紀始めの10年間に向けて設定されたOECDの環境戦略のなかで、OECDが輸出信用機関に対して期待はずれの弱腰な姿勢をみせていることに抗議の念を表し、この姿勢を改善するためにあらゆる努力がなされることを要望する。OECD傘下のECGで現在も交渉が進行中であることに鑑み、通商投資政策の主要な側面に環境配慮を統合するため、また国際開発金融機関の基準や国際的な環境・社会条約および協定との整合性がとれたよりよい政策を実現するために、輸出信用機関の環境面における改善は、OECDがこれから取り組むべき課題とされるのはもちろんのこと、この10年間におけるOECDの最優先課題の一つとされるべきものである。 以上
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