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1992年、リオ地球サミットで承認された「森林原則声明」以降、各国政府は幾つかの国際機関・会議において、「持続可能森林経営・管理」を実現すべく、話し合いを続けてきたが、調査・提言・モニタリングは進んだものの、森林資源の減少は止まらず途上国においては地域住民の社会問題や、違法伐採問題が後を絶たない状況。
今年はヨハネス地球サミットもあり、日本の森林問題を考える、幾つかのNGOsが、改めてこの問題を取り上げた。
以下は、ヨハネス地球サミットに先駆けて、ニューヨークで3月4日から行われる、国連森林フォーラムに出席する、外務省・環境省・林野庁の担当者に宛てた、NGOsからの要望事項です。
このコメントは、FoE Japanとウータンが起草しましたが、熱帯林きょうと、JATAN静岡、地球の友・金沢、古紙ネット静岡、ラミン調査会などから賛同を戴いています。
1 UNFFは取扱い範囲を自ら狭めている。
WTOや世銀などが林産物自由化や森林開発で、経済・金融・貿易・投資の先進国のルールを森林社会に持ち込み、持続的森林管理を破壊しているのに、UNFFで議論されているのは、これらの国際的な経済システムはUNFFの枠外にあるとして傍観しているように見える。貿易(WTO)について、問題点の指摘はするが、ルール作りからは逃げており、WTO側に任せる姿勢で、これは不満である。地域住民参加を推奨してるのはよいが、包括的なルール作りや規制を導入するのでなく、各国の自主性を尊重するあまり、モデル森林しかこれが出来ず、面的な広がりが全く期待できない。
現在の議論に参加している人が偏っている、余りに袋小路に入った専門的な議論に落ちているのではないか。官僚出身者ばかりで、過去のペーパーの延長線しか考えてない。政治家、市民、消費者、企業人などを入れて、アジェンダをもっとシンプルにして、具体的成果やルール作りに重点を置くべき。
2 UNFFは重大なステークホルダー(企業・業者)に目を瞑っている。
特に途上国や移行国では、林業局と業界・業者の間の利権構造・癒着が、大規模伐採・大量搬送・大量生産を行い、これがしばしば森林資源の持続・存続を不可能にしているのに、この問題は各国政府の問題と言って済ましている。今や、企業・業界は、国境を越えた多国籍企業が、金融や投資につき、国境を越えたルール作りを(WTOなどで)行って、森林開発・林業を席巻しようとしている。各国独自の環境保護ルールや土地所有権法などでは、太刀打ち出来なくなりつつある。多国籍企業の横暴を縛る、多国籍間のルール作りが要求される。
3 UNFFは依然として、調査とモニタリングしかしないのか?
一方で森林資源の減少に歯止めが掛かってない。そしてまだ調査が足りない、データベースの構築が必要と報告書にある。森林減少が止められないのなら、UNFFの存在価値そのものが問題である。我々の税金の無駄使いである。
4 違法伐採対策に取組むべきである
多国籍の伐採/製材企業が、当該政府の利権関係者と組んで、不当な伐採許可証の取得や、監査の誤魔化しによる森林破壊が特に大きな問題なのに、UNFFはこれを真正面に取組もうとしてない、逃げている。木材輸出国政府が、違法伐採を認めてない場合、輸入国の木材需要者・消費者の声・力をもっと活用する枠組みを作るなどして、特に途上国の森林資源の減少に歯止めを掛けるべく、国際間のルール作りに注力すべき。
(以下、若干各論になるが--)
5 先進国はODAの支援を強化・増大せよと提言しているが、支援に当たっては、厳しく条件を付け、相手政府に環境規制や地域住民の権利擁護を実行せしめるべし。
世界銀行すら「Conditionality」はドキュメント上だけしか見てない。2国間では「Conditionality」そのものが存在せず、森林関連ODAで長期的な森林資源増加に繋がる案件は極めて少ない。あってもモデルフォーレストの域を出てない。
昨年末、融資支払いストップをNGOが要求した、パプアニューギニアの構造調整計画融資では、世銀のConditionalityが相手国政府に無視された形になり、大規模違法伐採が止まらないにも拘わらず、融資は実行された。(10年で100万m3以上の丸太)UNFFはこのような事態の時に、世界銀行に「もの申す」或いは「提言する」だけでなく拘束力のある「Power」を行使する機能を持つようにすべきである。
6 Collaborative Partnership on Forest( CPF )との関連
前項に言及した世界銀行やGEF,FAOが実施機関として、提言機関であるUNFFを 支援するべくCPFが作られているが、現実にはUNFFを支援していると言うより、その提言に枠を嵌めたり、規制しているのではないかと思われる。NGOとしてはUNFFを経由して世界銀行・WTOに何か「物言い」をするより、世界銀行などに直接アピールする方が早道かと最近は考えている。UNFFはCPFのメンバー機関に対して強い発言力を行使出来るのであれば、CPFのメンバーに、WTOとかIMFも加えるべき。
近年、CBDの活動の方が活発なので、森林をCBDで扱って欲しいとのNGOも出ている。CBDの方がより効果的「拘束力」を持たせ得ると言う期待があるので。CBDもこのCPFのメンバーである。UNFFはCPFメンバー機関をより積極的に活用して、各国の持続可能森林管理を実践させるべきである。
(以上、6項目はFoE Japan・岡崎のコメント)
「森林の減少・原生林の保護」について
1 違法伐採、違法貿易は生態系への被害、生物多様性の損失、政府や地域社会及び先住民社会の収益の損失、森林の生産物と森林に関連する市場の歪みにつながり、持続可能な森林経営と反するため、各国で違法伐採、違法貿易をなくすよう管理していくこと。
(IFF/2000/40項及び21項参考)
2 SFM(持続可能な森林経営)の政策を掲げて、目標を実現させるため、各国は持続可能な森林業務を有益な活動として達成できるように支援し、また持続不可能な森林経営となる違法伐採活動を直ちに抑制し、原生林の保全を実施すること。
(IFF/2000/21項参考)
3 各国は、国家森林保護プログラムの計画、実施、モニタリング及びそれらの評価、民間による森林伐採と管理システムを早急に実施すべきであること。これらのシステムに森林内居住者、森林依存生活者、先住民、地域コミュニテイ、森林所有者などが参加できるものとし、森林管理に関しても意思決定の場に参加できるように保証すること。
(IPF/1997/17(f)項,35項参考)
4 各国は、森林の減少・劣化の原因となっている非合法な伐採、非合法な土地占有、非合法な耕作、過放牧、持続可能でない巨大農園開発による農業、非合法で行われる森林地域(とりわけ原生林)内での鉱山・石油・その他資源開発、ダム・道路開発、及び森林火災、エネルギーとしての利用(薪・木炭など)、移住、気候変動など各項目ごとに調査し、森林を保全する地域でどれが森林減少・劣化の主原因になっているか把握・報告すべきであり、主原因をなくすように最大限の努力を講じること。
(IPF/1997/20項参考)
5 各国は森林減少・劣化を止めるために、国家森林保護プログラム達成目標となる森林面積の目標値を掲げて、取り組むこと。
(IPF1997/29(a)項参考)
例*マレーシア・サラワク州では1990年のITTO国際調査団が熱帯林保護地域の拡大設定を指摘した時、同州森林局は近い将来に国立公園9ヶ所、野鳥サンクチュアリー3ヶ所の新設計画を持ち進めるとした。計画どうり実施すれば、 同州の面積の8,3%になる予定であったが、実施面積を縮小し、同州面積のわずか2,3%(約2900km2)しかない。また95年以降の保護地域の設定・拡大はされず。
6 各国は、森林減少・劣化を止めるために、先住民、森林依存生活者、地域コミュニテイの土地保有権・慣習権を保証するための制度を早急に定めること。加えて森林からの恩恵を公正且つ平等に分配する制度を定め、政策の決定・調整に使用する環境アセスメントなどのメカニズムを導入すること。
(IPF/1997/29(b)(c)項及び35項参考)
7 天然林を補完する周りの二次林などの森林地域を持続可能な森林経営の重要な要素として認識・強化すること。
「森林と貿易」について
8 各国は、森林の減少・劣化の主な根本原因の中で、非合法に行われている投資、森林生産物・製品の違法貿易を撲滅するために、投資や貿易の状況を調査・把握し、それを国際機関に報告し、違法投資や違法貿易に対して国際的な協力を実現し、摘発を実施すること。
(IFF/2000/37項参考)
9 市場の透明性が高いほど、環境にやさしい健全な貿易が可能になり、とりわけ森林生産物・製品の違法貿易、価格移転、市場歪曲、積荷のすり替え等のロンダリング、通関時の書類不備・不正輸入による各国での任意放棄などをなくすために、各国が協力してこれに取り組むこと。
(IPF/1997/127項参考)
10 各国は、森林生産物・製品の違法貿易・違法取引の今までの特性や範囲に関してを調べ、必要情報を交換して、違法貿易の撲滅を図ること。
(IPF/1997/135項参考)
11 各国は、地域内及び国際的な貿易間に関して、長期的な生産・消費パターンや地域内の土地所有形態、土地投機、土地市場の調査及び今後の開発に関して調査し、持続可能な森林経営(SFM)になるかどうかチエックすること。
(IPF/1997/20項,23項参考)
12 森林の生産物・森林サービスやその製品は、全ての環境価格を内部化するよう適正な評価を講じること。とりわけ、森林伐採後の復元費やアグロフォレストリー実施費用を内部化すること、また地域住民に被害が生じた際の損害費用を適正価格で判明させ、支払えるようにすること。
(IFF/2000/35項,IPF/97/126項参考)
13 貿易の自由化によって、国際貿易規則と一貫性を持った国内の環境基準や森林経営の認証、森林物のラベリング制度など不当に害さないように図ること。
(IFF/2000/33,34項参考)
14 関税の段階的な引き上げや、他の保護処置等の国際的な制約等をも考慮し、森林の資源と生産物などの国際貿易を含めて検討すること。
(IFF/2000/30(d)参考)
「森林に関する伝統的な知識と生物多様性」について
15、 各国は、森林に関する伝統的知識(TFRK)を有する森林依存生活者、先住民、地域コミュニテイ等を含む関係者を重視して、彼らが慣習的に使用している森林地域や所有地、並びに原生林に対して、商業用伐採を極力ひかえるようにすること。
(IPF/1997/32項,33項,34項,35項,36項参考)
16 物多様性条約(CBD)の条文の第8(j)条、第10(c)条などは森林に関する伝統的知識(TFRK)に関するものであり、森林生態系の遺伝資源については第15条で記されており、各国は生物多様性の保全と持続可能な森林経営を進め、違法な伐採を止めること。
(IPF/1997/39項,40(a)(b)項及びIFF/2000/69項参考)
17、 各国は、自国の政策、制度及び法律について、知的所有権と森林に関する伝統的知識の保護、及び効果的なTFRKのアクセス制度の導入を支援できるようにし、森林保護プログラムを実施するにあたり、森林依存生活者や先住民の生存と文化的存続がTFRKの再生・保護につながるものであり、この方策を推進するように定めること。また伝統的な森林管理にTFRKをも組み込めるようにすること。
(IPF/1997/40(c)(d)(e)項及びIFF/2000/74(a)項参考)
18 各国は、持続可能な森林経営の実施に向け、TFRKの再生・保護を促進するためにTFRK を有する森林依存生活者、先住民などに国レベル、国際レベルでの努力を行い、国際機関と協力し、資金供与などを図ること。
(IPF/1997/40(g)(h)(i)(l)項参考)
「森林保全・保護区」について
19 持続可能な森林経営に森林保全・保護が不可欠であり、各国は生物多様性条約(CBD) に関連する森林地域のほか、森林依存生活者、先住民が依拠している森林地域、原生林の保全を図るよう、森林保護区を拡大すること。また保護区を設置し管理することで、非市場的価値を見直し、その地域のコミュニテイへの利益をもたらすようにすること。
(IFF/2000/77項参考)
20 あらゆる森林の価値を保護するために、生物多様性に特別に配慮し、森林の持つ多様な機能や持続可能な利用を確認し、森林依存生活者や先住民のニーズを認め、彼らの管理下にある森林保護地域を承認すること。そのために、各国は国家森林保護プログラムの計画策定と経営に彼らを参加させる支援プログラムを開発すること。
(IFF/2000/84(d)項,85項参考)
21 森林の分断は、森林が有する生物多様性と生態系の保全を妨げるもので、現在の森林 保護区に加えて保護区を連続した場に戻すよう、各国は働きかけること。とりわけ、商業 用伐採は森林保護区拡大をよりむずかしくしており、森林依存生活者や先住民を脅かす不適切な伐採権を与えないようにすること。
(IFF/2000/78項参考)
22 原生林の価値を正しく評価しないことが森林減少の根本原因であることを強く認識し、各国は原生林の伐採をできるだけ禁じること。また、原生林及びその周りにある森林地域について、補助金等を出して他の土地利用へ転換させる不適切な指導を阻止すること。
(IFF/2000/62項参考)
23 一方、持続可能な森林経営を通して森林資源の維持と増大を図り、劣化した森林の再生や、その地の在来種での植林により新たな森林資源を作り出すこと。
(以上、23項目は ウータン・西岡氏のコメント)
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