2008年5月22日
5月22日、東京・JICA地球ひろばにおいて、国際環境NGO FoE Japan、地球・人間環境フォーラム主催の「G8環境大臣会合に向けた国際市民フォーラム〜森林減少による炭素排出と気候変動」が開催されました。
会合において私たちは、以下のような危機感・問題認識を共有しました。
フォーラム(2) 大会宣言
「世界の森林減少に関する市民社会からG8環境大臣会合へのメッセージ」
- 世界の森林の状況は極めて危機的状況にある。残された森林の喪失は年間1300万haに上り、森林喪失にともなう炭素の放出は世界全体の温室効果ガス排出の約20%を占め、地球規模での気候システムに重大な影響を及ぼしている。
- 森林の転換の最大の要因は、商品作物のプランテーション(パーム油、ゴム、大豆、製紙原料など)、ダムなどインフラ開発事業となっており、商品作物の世界的需要の増加によって開発が加速されている。これは、G8諸国の資源多消費型経済社会構造が、紙パルプやバイオ燃料、商品作物への巨大な需要を作り出してきたことが大きな背景要因となっている。近年は、先進国から新興国へ拡大された資源多消費型経済市場と、G8諸国の輸送用バイオ燃料の導入政策が、これら資源への新たな追加的需要の急増を招いている。
- 森林開発の最前線では、開発事業者と先住民族やコミュニティとの土地利用を巡る対立、違法伐採の蔓延、自給レベルの食糧確保の困難化、コミュニティ内における格差の拡大や分断・対立など、深刻な社会的混乱を招いている。
- 森林開発に伴うこれらの問題は、生産国において経済的価値を優先した不公正な森林・土地利用配分や、先住民族に対する誤った政策が行われてきたためであり、森林・土地利用を巡るガバナンスや汚職腐敗の問題に起因している。森林減少の防止は、個々の開発事業や政策の中にも組み込まれなければならない。
- 上記のガバナンスの問題は、G8など先進国から途上国政府へ供与されてきた開発援助資金や、民間投資の拡大に伴う資金の流れによって悪化してきた。
- 単に「緑」を増やせばよいという森林政策や植林事業は、安定的だった現地住民の森林との関係など生活・経済の基盤を変容させ、却って森林破壊や住民の生活苦を引き起こす恐れがある。先住民族や地元コミュニティの生活様式との親和性が必要である。
- 森林減少対策からの炭素を国際炭素市場で取引することは、森林の多面的機能の一側面である炭素貯留効果のみの「価格付け」が先行すること、企業に利益が集中しコミュニティが疎外されかねないこと、本来先進国側が行うべきエネルギー使用削減などの抜け道になることなどの懸念がある。
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このような議論を踏まえ、私たちはG8各国が森林減少への責任と役割を担うため、以下の対策を迅速に行うよう求めるメッセージを発信します。
- 不公正なガバナンス、地域住民の権利の侵害、および林産物や商品作物への巨大な需要と貿易が、深刻な森林減少の問題を引き起こしていることを認識すること。
- G8はじめ先進国は率先して、林産物や商品作物の過剰消費の削減に取組み、あらたな商品作物需要を生み出しているバイオ燃料の導入目標を再検討すること。
- 同時に、林産物や商品作物の生産への投資や製品の国際貿易に対して、持続可能な生産・流通を担保する基準を設け、これを投資・貿易の条件とすること。
- 気候変動対策としての森林減少対策の協定化(以下、森林気候協定)に際しては、炭素機能だけでなく、森林の多面的機能を十分に考慮すること。そのため、炭素市場をベースとして、途上国の森林減少からの排出を先進国の排出と取引するべきではない。
- 上記の持続可能性の投資・貿易基準や、森林気候協定の作成に際しては、先進国・ドナー主導ではなく、生産国の森林の重要なステークホルダーである先住民族など地元住民やNGO等の公平かつ十分な参加のもと透明な手続きで実施すること。
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以 上
2008年5月22日、東京広尾・JICAひろばにて。主催団体
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