2007年3月13日、若林環境大臣と環境NGOらの会合がありました。3月15日にドイツで行われるG8環境大臣会合を前に、NGOとの意見交換をするための会合です。この会合でFoE
Japanは、違法伐採対策へG8各国政府が強い意志を示し、実効性のある具体的対策の迅速な実施を要請しました。以下は大臣に手渡した要請書です。
2007年3月13日
G8環境大臣会合で違法伐採対策への政治的コミットメントを
国際環境NGO FoE Japan
副代表理事 岡崎 時春
1.違法伐採問題〜グローバル社会の責務
森林減少は年間1300万ha。増加し続ける木材・食糧・バイオマス資源需要に対する無秩序な商業伐採、プランテーション開発が世界の森林への脅威となっている。違法伐採問題は、以下と密接に関係することから、取組みは国際社会の責務である。
- 生物多様性への脅威:とりわけ生物多様性価値の高い熱帯林での違法伐採・森林破壊が顕著。
- 気候変動を加速:森林破壊により水・炭素循環が変化し、気候を不安定化。森林破壊や農地転換は土地利用変化によるCO2排出(5.9Gt/年-CO2)の最大の要因。
- 気候被害への脆弱化:森林破壊や農地転換は、気候変動に伴い頻発する大雨や少雨による災害に対して脆弱化させる。
- 水・食糧供給源の危機:森林破壊や商業用農地開発は、地域社会、とりわけ低所得地域にとって重要な水資源・食糧供給源の喪失。
- 持続可能な開発への脅威:森林資源の利用(コミュニティとグローバル)を巡り、貧困、ガバナンス、腐敗
と結びついた問題。紛争・対立・犯罪も助長し社会の不安定要因に。
2.G8プロセスでの近年の成果
- 2005年環境・開発大臣会合(英国ダービシャー)
違法伐採問題について、公共調達及び貿易政策による違法伐採対策への取組、木材生産国への支援強化、G8森林専門家による進捗状況の評価が打ち出された(参考1)。
- 2005年G8首脳会議(英国グレンイーグルス)
木材生産国及び消費国双方の行動が必要であることを確認し、G8環境・開発大臣会合の違法伐採についての結論を承認(参考2)。また我が国は「日本政府の気候変動イニシアティブ」の中で政府調達や生産国支援等の対策を約束。(参考3)
3.2007年環境大臣会合に望む日本政府・環境大臣への要望
ドイツ環境大臣会合では、生物多様性と気候変動が議題に上げられているが、上記に鑑み、違法伐採問題は双方にまたがる極めて重要な問題であるがゆえ、以下2点を特に要望する。
(1)公共調達政策
2005年環境・開発大臣会合の「森林違法伐採対策に関するG8閣僚声明」第10項にて約束された公共調達政策は、欧州各国や日本で広がりを見せている。今後、この政策の実効性を高めるために、以下を実施することを求める。
- 各国は公共木材調達政策の実施状況と効果を客観的に評価するとともに情報を公開すること。とりわけ生産国での森林管理や調達木材のサプライチェーン管理が適切に実施され、改善されているか、定期的に点検し、各国が経験を共有していくべきである。
- 生産国の対応能力の観点から、各国政策でバラバラとなっている合法性、持続可能性指標やその証明方法、検証方法を共通化させていくこと。
- 公共機関で導入が増えているバイオマスエネルギーについても調達政策の対象とすること。とりわけ、大規模な森林転換を伴ったり生物多様性を損なうものは調達するべきでない(参考4)。
- 中央政府・機関のみならず、民間企業や地方自治体、一般消費者への木材調達・購入対策を推進すること。その際、市民社会との協働により透明性・実効性を確保すること。
- 調達政策が大規模資本による生産物に有利にならないようにする。とりわけコミュニティベースの生産物の適切な購入と利用は、持続可能な開発の観点からも推奨すべきである。
- 公的支援による林産業や植林・バイオ燃料の開発及び貿易に関する事業が、大規模な森林の転換を伴ったり、生物多様性や地域住民の権利を損なうことの無いよう、各国は事業の透明性を十分に確保するとともに、公的支援の基準を策定・実施すること。
(2)違法な生物資源の貿易対策
2005年環境・開発大臣会合の「森林違法伐採対策に関するG8閣僚声明」第8、9項において約束された違法伐採材の貿易を管理する政策は、2年間を経て未だ実行に移されていない。我が国およびG8各国は違法伐採材の貿易を抑止するため速やかに以下を実施するよう求める。
- 違法に伐採・採取された木材・野生生物の取引及び貿易の禁止。CITES付属書掲載の貴重種はもちろん、生産国と協力し生産国の国内法で伐採や取引が禁止されている樹種の輸入を禁止し、取り締まりを強化すること。
- EU FLEGT(EUの違法伐採対策政策)で進められているように、二国間または地域間協定に基づき証明木材のみを貿易許可する制度の実施。また、地域別FLEGプロセスを通して、地域間での貿易対策の推進。
- 日本政府として、主要生産国との協力による貿易対策をコミットすること。まずは二国間の共同宣言と行動計画で、合法性確認システムに基づく貿易措置の実施を目指すインドネシアとの間で早期に実現すべき。
以上
>要請書の全文(PDF69KB)
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