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日本政府の違法伐採対策に関する要望 「包括的な違法伐採対策戦略を」

2005年4月11日

林野庁 違法伐採対策検討室 室長 森田 一行 殿
外務省 国際社会協力部地球環境課 地球環境課長 伊藤 康一 殿
環境省 環境保全対策課 課長 荒井 真一 殿

日本政府の違法伐採対策に関する要望
包括的な違法伐採対策戦略を

3月17・18日に英国ダービシャーで開催されたG8環境・開発大臣会合での結果、違法伐採対策に対してG8各国は輸入国としての責任ある対策を進めることが合意されました。これを受けて日本政府としても政府調達と貿易管理による違法伐採木材の規制に向けて動き始め、7月のG8サミットへむけて5月末までにこれら二つの施策の方針をまとめることとされています。

私たちは、違法伐採問題に対するこの二つの施策(政府調達と貿易管理)は、輸入国側の対策として中核をなす重要なものであり、世界第三位の木材輸入大国である日本としての責任ある態度として支持をいたします。これらの施策を実施することにより、国内、海外双方の森林で、持続可能な森林経営への取組みを促進することと期待いたします。

今後、これらの施策の中身を詰めて行くにあたって、とりわけ配慮をしていただきたいことは、生産国への支援を行わないまま、輸入国側が一方的に調達や輸入の条件として合法性だけを要求して行くだけでは、生産国側が法律自体を緩めるなど合法性の水準を引き下げたり、輸出先を他国へシフトするだけにもなりかねないということです。このような点も十分に考慮して包括的な違法伐採対策を検討していただきたく、私たちは以下を要望いたします。

要望1:生産国における違法伐採対策を
輸入国として政府調達と貿易管理施策を実施して行くとともに、生産国における違法伐採対策支援も同時に進めていただきたいと思います。森林関連法規の見直しや、ガバナンス・法施行体制の改善、合法性証明・追跡システムの整備、生産・加工・流通における情報公開や透明性向上、などの対策を進めるのための支援が必要です。2003年6月に日本とインドネシアとの間で出された共同宣言を強化すると共に、違法伐採問題を抱える他の主要生産国との間でも、2国間で協定を結び、対策支援を行っていくべきです。現在のODA戦略の中に、上記の対策支援も含めた持続可能な森林経営支援に関する戦略を盛り込むべきでしょう。

要望2:民間レベルでの違法伐採対策を
また、木材の輸入・取引・流通に実際に関わるのは企業であることから、日本の企業の責任ある調達の取組みを支援することも必要です。それとともに、取引時の書類を不正に揃えることで「合法化」することの無いよう、政府調達と貿易管理施策の実施に当たっては、情報の公開を進めて市民社会によるモニタリング活動とも協働しつつ、政府としてのモニタリング機能強化を進め、十分に実施することを求めます。

要望3:アジア地域全体としての違法伐採対策を

東アジアは、違法伐採の蔓延する東南アジアや北アジア(シベリア・極東ロシア)からの木材輸入が最も多い地域でありながら、欧州や北米など他の木材の需要地に比べて輸入側の取り組みが遅れている地域です。日本だけが対策を進めても、中国や韓国など東アジアの他の木材輸入大国で取組みが行われなければ、違法材は行き先をシフトすることになります。東アジアの主要3国が協調して政府調達や貿易管理などの輸入側対策を実施しつつ、東南アジアや北アジアといった生産国における違法伐採対策を支援するため、これら二つの地域におけるFLEG(*1)プロセスや、AFP(*2)の場において日本が積極的にイニシアティブをとって行くべきです。

要望4:国際的なレベルで違法伐採対策を

現在、違法木材貿易を規制するのに適用できる国際条約はCITES (ワシントン条約 *3)のみであり、日本としてもCITES付属書リストへ貴重樹種の掲載を積極的に働きかけ、掲載樹種の貿易管理を徹底することが求められます。
また、WTOの非農産品市場アクセス(NAMA)交渉が6月の合意を目指して再び動き出しましたが、全品目一括関税削減方式(デルベス・テキスト)や分野別関税撤廃による貿易促進論議に合意することなく、林産物についての日本政府として当初の立場を堅持し、違法伐採・貿易対策を先行させると同時に、林産品貿易の環境配慮(違法木材の排除や持続可能木材の推進)が非関税障壁とみなされないよう日本としても積極的に働きかけていくべきです。

違法伐採問題は非常に複雑であり、一つや二つの対策だけによって解決できるものではありません。輸入国と生産国双方において取りうる対策を同時に行っていくことが求められます。日本としてはこの機会に、上記に示す4つの要望を考慮した包括的な違法伐採対策戦略を立案し、7月のG8サミットでこれを示すことで、違法伐採対策にリーダーシップを発揮していただきたくお願い致します。

以上

国際環境NGO FoE Japan
岡崎 時春、中澤 健一
TEL:03-3951-1081 FAX:03-3951-1084

(財) 地球・人間環境フォーラム
満田 夏花、坂本 有希
TEL:03-3592-9735 FAX:03-3592-9737

【賛同団体】
特定非営利活動法人 AMネット、日本インドネシアNGOネットワーク(JANNI)、
サラワク・キャンペーン委員会、熱帯林行動ネットワーク名古屋、ウータン・森と生活を考える会
ラミン調査会、Friends of Clayoquot Sound, Japan(クラクワットサウンド友の会)

*1 FLEGとは、「森林法の施行、ガバナンス」の略。東アジアFLEGは主として東南アジアにおける違法伐採対策のために、2001年9月にインドネシアのバリ島で閣僚会合を開催。「違法伐採問題に輸出入国双方が取り組み、違法材の輸出入を排除する方策を追求すること」を宣言している。欧州北アジアFLEG(Europe and North Asia FLEG)は、主としてロシアにおける違法伐採対策のために今年の11月に閣僚会合が予定されている。

*2 アジア森林パートナーシップ。アジアの持続可能な森林経営の促進を目的として、アジア諸国(主にASEAN)、ドナー国・国際機関及びNGOなどが違法伐採対策、森林火災予防、荒廃地の復旧(植林)等の活動を通じて協力していくためのパートナーシップ。日本とインドネシアが中心になって2002年のヨハネスブルグサミットで発足。

*3 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約。166ヶ国が締約。絶滅のおそれのある動植物種の取引を規制もしくは禁止する。締約国は2年ごとに会合を開き、規制すべき動植物種を決定し付属書に登録する。 付属書Iに記載された種は取引が禁止され、付属書IIの種は厳しい規制の対象となる。

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