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途上国での「持続可能森林」実現のためには−我々が「違法伐採」木材を買わないこと−
木材輸入大国・日本はOECDから、途上国の森林管理への協力を求められている
背 景
リオ地球サミットで「森林原則声明」が採択されてから10年、先進国の一部では森林資源が増えた所もあるが、途上国・市場経済移行国を中心に森林破壊(減少)が進行している。FAOによると、10年間でほぼ2.5%の森林面積の減少である。面積では大したことでは無いように思えるが、木材市場がグッローバル化されたため、経済価値の高い樹木、即ち原生林の伐採が進行し、生物多様性を著しく脅かすなど、森林資源の減少以上に、質の劣化が進んでいる。これを数量的に把握したデータはまだない。国連傘下にIPF/IFF/UNFFなどの森林フォーラムが作られ「持続可能森林管理のための行動計画」とか「管理の基準と指標」が作られ、国ごとの行動が求められたが、殆どの途上国・移行国は、財源難を理由に何ら手を打とうとしてない。(詳しくはhttps://www.un.org/esa/sustdev/forests.htm を参照下さい)
 日本は植林事業などODAベースの国際協力を行って来たが、必ずしも実効が挙っているとは言えない。世界計・年間1千万haの森林減少に対し、高々年間・数万ha分の支援では焼け石に水である。森林資源減少を食い止めるには、途上国・移行国の政府が、業界・業者を押さえて、腐敗した「林業局」を構造改革し、地域住民の参加を得て、本気で取り組むことが最も重要なことである。

リオ地球サミットで提唱された「持続可能森林」が実現されない間に、ここ数年「違法伐採問題」が焦点を浴びてきた。1999年のG7ケルンサミットで取上げられて以降、沖縄やジェノアのG8の共同宣言で取上げられ、先進国の「違法伐採」に対する取り組みが求められてきた。2000年1月の農林・副大臣の取組み表明以降、林野庁も本件を真剣に取上げ、インドネシアおよびロシアの2カ国に絞り、政府間の交渉を開始した。(2002年のウィスラー・サミットでの報告が、https://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h14-6gatu/g8gaisyou.htm にあります)
全国木材組合連合会でも、輸入商社・木材業界・消費者団体・NGOから委員を入れた、「違法伐採対策委員会」を2001年7月に発足させ、同年10月には、インドネシアとロシアに調査団を派遣した。日本の中の国際森林NGOも期を同じくして、2000年5月には「NGO戦略会議」を、林野庁からオブザーバを入れて開催、7月には政府・業界・消費者に対する提言を、プレス・リリースとして発表した。https://www.foejapan.org/forest/doc/010709.html

「持続可能な森林とは?」
林野庁は「持続可能な森林経営」と言う。環境省は「経営」を「管理」と置き換える。森林の持続可能性は、林業と切り離せない。経済的な持続可能性のみを重視した場合は、伐採跡地に、単一樹種植林をどんどん行い、林地を樹木の畑のようにしてしまっても、持続可能な森林と言えなくもない。所謂、「産業植林」である。途上国の政府や林産業界は、経済発展や外貨獲得を重視するため、これを「持続可能な森林」と主張する。しかし先進国のNGOや環境関係者は、森林の持つ「多面的機能」に注目、特に森林の持つ「生物多様性」
が地球規模の環境の維持保全に重大な役割を担っていることに鑑み、原生林の保存管理こそが「持続可能な森林」であると主張する。そして問題を大きくしたのが、経済のグローバル化―木材貿易自由化であり、木材の商取引における「利益・原価」の配分の不平等と「環境価値」の過小評価である。
「森林の価値」とは?
2000・10・12/13に国連大学が主催した「森林と持続可能な開発に関する国際会議」において、改めて「森林の価値」が問われた。(WCSFDの報告書:国連大学、参照)
この会議では、歴史的・文化的価値も取上げられたが、特に環境面の価値「生態学的価値」「水土保全価値」そして森林が消滅した場合の「各種リスク」即ち、「気候変動」「砂漠化」「森林依存住民の失業・貧困化」などが問題となった。木材取引における「価額」が各種環境維持価値を内包してないため、森林維持の費用が森林側・地域住民側に還元されないため、「持続的森林」の維持管理が出来ていないのである。環境コストが内部化されてない価額形成になっている。
「違法伐採」と「盗伐」
途上国と言えども、伐採禁止区域の設定や、再植林の義務付けなど、林業活動には各種の規制・制限が法制化されている。ロシアでもソ連時代には、世界でも厳しい方に属する、森林・林業に関する法律や規制が出来、ロシアになってからも法律や規制は殆どそのまま引き継がれている。しかしこれらの法律・規制を守ると、木材の供給コストが上昇して国際的自由競争に勝てない。特に1990年代に入り、日本の景気停滞により、木材需要が伸び悩んでから、木材は買い手市場となり、市場価格は下がる一方となった。一方インドネシアでもロシアでも、木材を運び出しやすい道路沿いの森林や、筏に組んで流せる、川沿いのの樹木は切り尽くして、より奥地の森林を開発せざるを得なくなってきた。そのため道路建設などの運搬コスト、傾斜地での作業コストなどが嵩むことになった。市場価額の低下と、木材搬出コストのギャップを埋めるのは、各種規制を掻い潜る「違法伐採」しかも「林業監督機関」や「税関」の役人を絡めたものとなったのが、今問題になっている「違法伐採」と考えてよいのではないか。伐採許可のない、コソドロ的「盗伐」から、書類は全て整っているが、伐採現場や、実際の樹種や、数量・価額との乖離が「見逃されている」、「組織的」かつ「大規模」なものが、G8サミットで問題になっている「違法伐採」なのである。
「違法伐採」による受益者と被害者
「持続可能な森林」が実現されれば、「地球環境保全」と、「地域住民の生計維持」の2つの目標が同時に実現される筈である。ところが発展途上国やロシアでは、経済・金融のグローバル化により、林産物が市場経済の犠牲者となって、「持続可能な森林」の実現には、ほど遠く、「違法伐採」が横行する現実となっている。違法伐採による受益者は、ほんの一握りの、林産物業者と森林管理・監督・取締り当事者なのであるが、これが金に買われている故に取締りが侭ならない。木材輸出国では、業者と営林署・税関以外は全て被害者である。輸出国の政府・財務省も大きな被害者である。伐採量や取引価額の不正記載により、伐採権料・関税収入は、インドネシアでもロシアでも実際の半分と言われている。そして最も悲惨な被害者は、地域住民である。木材市況の低下により、伐採や製材は大規模化・機械化が強いられ、現地住民・地域企業の参加が出来ない林業形態となり、よしんば人夫として雇われても3年が限度で伐採終了後は、地域住民は生計を立てる術もなく、祖先伝来の林地を捨て、貧困化して都市へと流れて行く。違法伐採は森林資源の破壊だけでなく、森林に依存して生計を立てていた現地住民社会をも破壊しているのである。
違法伐採からの受益者は、木材輸入国の業者・消費者?
 木造の家を建てたいと、大手住宅メーカに依頼すると、殆どが輸入木材を使って建てる。国産の木材を使えと言うと、法外な追加料金と建築期間延長を要求されて、結局、輸入材に戻ってしまう。日本の国産木材は、傾斜面からの木材切り出し・搬出コストだけで、輸入材と同等で、環境コストや育林コストを入れると約3倍の高値となる。流通・在庫の情報化も遅れているので、大手住宅メーカは国産材の使用を嫌う。 WWFの調査によると、日本に輸入される木材の22%(チップ・パルプを除く)が違法伐採・起因だと言う。(2002/G8サミット用・資料参照https://www.panda.org/forests4life/pubs/G8_meeting140602.pdf)中国と並んで、違法伐採木材消費国の最右翼である。東南アジアやロシアからの輸入量が大きいからである。これらの国からの安価な輸入木材は、その国に相当の環境負荷と社会負荷を残した結果であり、森林資源と住民生計費の一部搾取(原価・利益の不公平配分)の結果であると言えよう。私たち日本の市民・消費者は知らずの中に「違法伐採」に荷担している事になる。安い物を買うことは、その分環境負荷(環境コスト)を積み残していると考えて欲しい。市民・消費者の国際的環境意識が問われる側面がここにある。
違法伐採からの被害者は日本の森林・林業?
  安い輸入材を買うことは、更にもう一つの環境負荷を日本国内でも生み出している。日本の人工林(日本の全森林蓄積の55%に相当)の質的劣化である。国内林業の不振により、林業に依存する村落は崩壊し、人工林を育成管理する人が居ないのである。間伐が出来ないなど、人工林の手入れが出来ないため、水土保全機能などの公益的機能も危うさを増している。京都議定書による炭酸ガス吸収を森林管理で3.9%まで達成しようにも、今の日本林業の衰退振りでは、実現不可能ではなかろうか。私たち市民・消費者は住宅・家具など木材関連商品を購入するに当って価額が若干高くなるかも知れないが「違法伐採でない木材」「国産木材」を業者に要求することにより、途上国の森林と日本の森林の双方を守れる「ウィンウィンゲーム」が出来ることに着目すべきです。住宅や家具では木材の材料費は10数%で、木材以外の材料費や工賃・加工費を加算すると、2倍高い国産材を使っても、住宅・家具総体の価格は10%高で収まるのです。(国内林業には各種補助金が出ているので、コストの差は3倍でも、市場価格では輸入品の2倍で買える:(財)経済調査会の資料)
「途上国の森林管理」への協力とは? −木材輸入国の消費行動の改革から−
日本政府のレベルでは、始めに述べたように国連やG8の場で、あるいはITTO(国際熱帯木材機関)を通じて、森林の持続的経営・管理を途上国に求め、技術移転・制度改善のための資金援助も行ってきた。しかしながら、途上国や市場経済移行国の「貧弱なガバナンス機能」のため、森林管理はリオサミットの時点よりも後退し、「違法伐採の横行」になっていると言われる。本来、森林管理は国境を越えた規制の枠組みには馴染まない、それぞれの国の主権の中での国内問題なのである。OECDは日本政府に「途上国の森林管理への協力」を勧告したが、政府の出来ることには限界がある。国境の枠を越えた「グローバル市場」では「消費国・消費者の要求」こそが、生産者である途上国の「森林管理」を持続可能にさせる力があると考える。「持続可能森林」から生産された木材に「ラベリング」をさせること、即ち「森林認証制度の導入」を消費国・消費者が要求するのが究極の解決策であろう。森林認証制度の導入を木材輸出国だけに求めるのは、WTOのルールに抵触する。日本国内にも森林認証制度を導入して初めて輸入相手国に「ラベリング」の要求が可能となる。日本国内に認証制度を導入するにはまだ幾多の問題があり時間が懸かる。その間に森林破壊の速度は増している。取り敢えず「違法伐採でない木材」と言うラベルを、輸出国の業者に付けさせることは可能である。私たち市民・消費者は、先ず日本国内の木材流通業者や住宅・家具メーカに対し、「違法伐採でない木材」と言うラベルを貼る(付ける)よう要求する運動から始めようではないか。そして納税者のお金で建てる公共施設には、国産材を使って貰うことを要求しよう。
ラミン材

インドネシア政府は、2001年4月、ラミンの伐採・商業取引の禁止令を出し、また、ワシントン条約事務局に対して、絶滅を危惧される生物を保護するための、ワシントン条約の付属書Vに掲載するよう申請して、2001年8月6日に発効しました。ラミンはいまや、インドネシアで伐採を厳しく制限しなければならない貴重樹種となっています。にもかかわらず、その後もインドネシアの国立公園で、違法に伐採されているとの報告がされています。日本がこれまでラミンの主要な消費国の一つであった、とされていることを重く受け止め、住宅の窓枠や家具などの材質に関心を払いましょう。詳しくは下記ホームページ参照
https://www1m.mesh.ne.jp/~apec-ngo/sinrin/ramin/ramin.htm

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