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森林問題・違法伐採対策・日本政府への要望書 ヨハネスブルグ地球サミットに向けて
作成日 2002.05.14
作成者  

外務省・地球環境課 御中
環境省・環境保全対策課 御中
農林省・環境対策室 御中
林野庁・木材貿易対策室 御中
森林問題・違法伐採対策・日本政府への要望書
ヨハネスブルグ地球サミットに向けて
国際環境NGO・FoE Japan
 4月22日の円卓会議への参席と情報提供、有難う御座いました。
ヨハネスブルグ・サミットに向けての準備会合やUNFF2、CBD・COP6において「違法伐採問題」が取上げられた事は、日本政府の努力による所、大で有ったと評価します。ただこれが将来的に当事国の活動レベルまで降りて来ないことには意味がありません。
カナダでのG8、およびヨハネスブルグ・サミットの多国間の取り決めにおいて、国毎の施策を具体化せしめるような内容を盛り込むことを切に要望する所です。
 ロシアと東南アジア木材輸出国の、NGO・市民団体と一緒に、それぞれの国の森林資源保全や、そこに住む住民・先住民族の生活と権利を擁護する活動をしている、国際環境NGO・FoE Japanとしての見解は下記の通りです
(総論)
1.  日本は東南アジアとロシアからは最大の木材輸入国です。このカードを最大限に利用すべきです。日本の消費者・市民は「違法に伐採・取引された木材」は買わない、と言う運動を始めてます、と言って戴きたい。対策を講じないと、輸出量が減り、政府財源が減り、失業も増えます、と。但し、木材輸入ボイコットは、村落共同体レベルの本来の林業や、森に依存する住民の生活を脅かす恐れがあるので、NGOとしては国や地域の規模ではなく、個別企業に対して行うべきと考えています。
2.  ロシアは政府が「盗伐」は認めても「違法伐採」の存在を否定している。これでは日本政府も動きが取れないでしょうが、私たちNGOも動けない。G8の場で何とか政治的な駆引きで、違法伐採を是認させて、違法伐採対策のためのCapacity-Building(Transfer)への道を開いて欲しい。ヨーロッパ・ロシアの森林では違法伐採は問題になっていないのでしょうか? ドイツなどロシアからの木材輸入国と一緒にロシアにアプローチ戴きたい。
3.  WTOでも問題になっているように、国レベルのコントロールの効かない「多国籍企業」への「規制」「拘束力」をG8か、ヨハネス・サミットの共同宣言に盛り込むべきである。
多国籍企業による大規模森林開発が、当事国の環境基準に抵触したり、住民の権利を侵害しても、政府が容認してしまうケースが多々あり。WTOルールも多国籍企業に有利な方向に向かいつつある。開発と環境のサミットこそこれに一定の歯止めを課すべきである。
(UNFF2・閣僚宣言)関連
 会議の結果概要を読んだ限りでは、「森林資源は地球市民の公共財」と言う発想が乏しい。
 森林資源は、それぞれの国の資産であり、それぞれの国が持続的な管理に責任を持つべき、との観点しか見られない。木材輸入国は、違法には直接の責任はなく、道義的責任から木材輸出国での対策に協力する、と言う姿勢である。果たして木材輸入国は、違法行為に責任がないのだろうか?「日本の木材消費者は何も知らされてない」から責任はない?しかし木材を輸入している業者は「何故こんなに安く木材が手に入るのだろう?」と思っている筈です。ただ「利益第1主義」の企業ではこんな疑問は、取引の場では引っ込んでしまいます。木材輸入業者の「安値買い」「利益第1」こそが、輸出国の違法伐採を助長している、と「世界実施文書」などに明記して、輸入業者の倫理観・責任観を喚起すべきです。日本など先進国の政府が、自国の業界および多国籍木材関連企業に対して、グリーン・クリーン購入の徹底を図るべく、行政指導をするよう、輸入国自らを義務付けるべきです。
(生物多様性条約締約国会議・ハーグ閣僚宣言)関連
(閣僚宣言)の15項について;
 a,b項は当然の事であるにも拘わらず、WTOの貿易ルールや世界銀行・IMFなどの経済開発優先の陰で、これまで軽視され続けていたものと我々は認識している。
 c項の、―― WTOを中心に、CDBと国際貿易関連の合意や政策間の「連携および相互補完」をはかること。―― この表現は依然として、経済ルール優先を示唆しており、環境等のMEAルールの優先を主張する地球市民の願いを軽視している。ヨハネスブルグではさらにCDBのルールの遵守・経済ルールをオーバーライドする方向の「文書」の締結を望む。
(森林の生物多様性に関する新たな作業計画について):違法伐採対策関連
 この中で(森林法規の実行と、関連する貿易に対する取り組みの推進)を入れたことは評価するが、いまだ行動の細則・手段が見えない。私たちは次のことを要求する。
1.  年次行動計画の明示・数値目標も掲げて。
2.  取組みの企画・実施・モニタリングに業界・関連企業の参加は当然として、住民やNGOも必ず参加せしめること。
(WSSD第3回準備会合)関連
 違法伐採問題が「世界実施文書」の中に盛り込まれることになりそうなのは良いが、問題はその内容である。
1.  所謂「盗伐」だけを取り締まるものであってはならない。これだけだと、逆に貧困救済に逆行して、単に森林依存住民の生活手段を奪う結果になり兼ねない。
2.  業者と監督官庁の、癒着構造の改革をターゲットとするものでなければならない。
2.  不正許認可、書類偽造あるいは流用、記載内容誤記、なれあい検査、脱税など大規模な違法行為をこそ取り締まるべきである。
2.  地域外からの伐採業者(大企業が多い)が、地域住民の森林の所有権・使用権あるいは生活権を侵害するような違法・不法行為は、地域の持続的発展に大きな障害になる。地域住民の参加による森林開発以外は許認可されるべきではない。
以上のことが簡潔に盛り込まれた「世界実施文書」であって欲しい。
(違法伐採に関する英国・インドネシア共同声明:4月18日締結)関連
 英国政府調達は「only legally-sourced timber」と明記してある。さらにArticle1,g項において、業界に対してActionを促すとし、これを証明する手段の導入も義務付けようとしている。
 カナダのG8サミットにおいて、少なくとも英国が行ったような取り決めを、木材輸入国が宣言するよう、日本政府はイニシャティブを発揮すべきである。そして同様なことをヨハネスサミットに持ち込むべきと考える。
(日本・インドネシア間のMOD:5月2日締結:Asia Forest Partnership)関連
 英国の締結したものと違って、域内の多国間の取り決めに発展させよう、との目論見は評価する。是非、マレーシアや中国経由の違法伐採木材の貿易を抑制する枠組みへ発展させて戴きたい
 ただこの内容で森林依存住民に対する配慮や、参加のプロセスについての記述が充分と思えない。木材輸入国の、業界の自主的取り組みも喚起して欲しい
(第4回準備会合用の議長ドラフト・5月9日付け・Article 40)関連
 森林に関する独立の項目が出来たのはよいが、中身はキーワードの羅列だけで、リオでの「森林原則声明」から進展しているように見えない。IPF/IFF/UNFFの活動や提言を評価しておきながら、実施についてはUNFFにボールを返している。WSSDこそ「ハイレベルな国際約束」が出来る筈なので、多国間で、実施義務と期限を、明確に謳って欲しい。
 WTOのCTEがMEAsをどう扱うかが問題になっているのに、この項では違法貿易について触れているだけ。林産物貿易においては、MEAルールが優先する、との記述が欲しい。折角前書きに「多面的機能」が記述されているのに、WTOの交渉に影響を与えるような文言がどこにも見えない。
以上

問合せ先 FoE Japan 岡崎時春
Tel:3955-2617
e-mail:okazaki@foejapan.org
注記:本要望書に対し、「ウータン・森と生活を守る会」(代表・西岡氏)から賛同戴きました。
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