京都議定書の下では、途上国で排出削減事業を行うクリーン開発メカニズム(CDM)が設けられました。
ミラノ会合ではこのCDMの下での植林・再植林事業の運用規則の決定が予定されています。
植林した森林が火災などで失われると、そこに蓄えられた炭素も二酸化炭素、メタンガスの形で大気に放出されてしまいます。
また生長した木はいずれ枯れてやはり吸収量が失われます。
この永続性の欠如の問題をどの様に解決するかで、欧州連合の五年毎に吸収量をモニターする案と、金融的な面の保証のみでよいとするカナダの案が提案されています。
また先進国がCDMを使って自国内での排出量削減を怠ることのないよう、既存の開発事業では実現出来ず、CDMがあって初めて可能となる事業のみが認められることになっています。
この追加性を判断する基準に事業国の市場や制度面のバリアーを加えるかどうかも焦点です。
またCDMの下では必要と見られれば事業実施前に環境影響評価を行うことができるようになっていますが、これを国際的な評価基準を設けて行うかどうかで、国際基準は事業国の主権に抵触するとする中南米諸国や日加と欧州連合、ノルーウェー等が対立しています。
これら一連の技術的に複雑な議論の背景には、商業植林事業をCDMの下で振興したい前者の国々と、補助金をつぎ込まれ、しかも地域に環境や社会問題を起こしがちなこれら商業プランテーションをCDMに含めることに疑問を持つ欧州諸国や一部途上国との相違があります。
複雑で分かりにくい議論であるためしばしば報道関係者にも敬遠されがちだったこの議論ですが、議定書発効が遅れ他に大きな懸案がないこともあり、ミラノ会合の大きな焦点のひとつとして脚光を浴びることになっているという面もあります。
この交渉は、二年前マラケシで大枠が合意された議定書の運用規則の最後の部分で、これをもって、発効までに必要な詳細の交渉は全て終わることになります。