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Vol.12(301 October 2002)
 
 
地球温暖問題の根本的解決への次の一歩はいかに
 国連気候変動枠組条約の第8回締約国会合(COP8)は明日30日からは3日間の閣僚級に入るところで、今日で区切りをつけるため残された事務レベル交渉が急がれている。先週からの動きの中で、今回COP8の焦点はすでにはっきりと浮かびあがっている。各国の批准が進む京都議定書を受け、次のステップとして途上国も含む排出抑制・削減の枠組みへとつながる過程への足がかりを作りたい日欧先進国と、過去5年にわたる京都議定書運用ルール交渉でともすれば脇に押しやられた感のある条約下での義務、とりわけ途上国への技術移転と資金拡大への取り組みを、持続可能な開発という枠組みで強化したい途上国ブロックである。これは将来の地球的な気候ガバ
ナンスの方向性の基調への視点の違いでもあり、この交渉を見守ってきた多くのNGOは、このCOP8と次回COP9がそのそのようなプロセスづくりに重要な役割を果たすべきとも考えている。

 この方向性の試金石が、第2週目初日の28日インドが発表したデリー宣言草案であった。9月末に開かれた非公式会合で議長国のインドは閣僚級の議事の進め方として3つの主要なテーマ:これまでの取り組みのレビュー、気候変動と持続可能な開発、実施の枠組みを示した。この草案でも持続可能な開発、とりわけヨハネスブルグサミット結果を受けた貧困撲滅と、気候変動への適応支援を柱とする気候変動対策の枠組みを謳い、途上国ブロック全体での内容合意と強い支持があると言われる。

 一方、日欧が25日の非公式意見交換でも表現したような京都議定書後の条約目標達成の為の次のステップにつながるような表現は一切無く、京都議定書の名前すら触れられてはいない。これは日本同様二国間での定期協議を行っているインドと米国との協調の結果ではないかとも言われており、排出削減義務を避けたい米豪がそのまま支持できる内容となっている。欧州は草案内容があまりに米国寄りであるとして、拒絶する意をインド政府にすでに伝えた模様である。

 これまで議定書ルール交渉で何かと対立の多かった日欧が非公式がCOP8前から定期的な協議を重ね、これにカナダも加わっている。これに対し、途上国と米豪が手を組むというこれまでと随分様相の異なるゲームがここ1週間、ニューデリーで展開されている。

 残された他の事務級交渉も、この議論と関わるものが多い。地球的な気候ガバナンスで不可欠な非条約付属書I国(途上国)の国別報告のガイドライン作りでは、中国・ブラジル・産油国が適応ニーズに関する報告部分を落とすよう求めている。国連気候変動専門家機関IPCCの2001年第三次評価報告書の科学的知見をどう政府間交渉に反映させるかの交渉では、中印他がさらなる排出量削減につながるような科学の定期的な交渉議題への反映に反対、また条約の究極目標である大気中の温室効果ガス濃度安定化への言及削除をもとめ欧州と対立した。

 しかし、今デリー宣言草案と並び両者の違いが最も顕著に現れているのは、資金メカニズムの交渉である。地球環境ファシリティー(GEF)や昨年マラケシュ合意で条約下に設けられた2つの基金の交渉では、GEFの対応に関する過度の評価や明確な資金給与対象を定めることを求める先進国と、条約や締約国決定のこれまでの実施に不満があり、最後発開発途上国基金の早期の運用開始やその運用により幅をもたせたい途上国との間でデッドロックの趣である。ここでも、これからの重点を持続可能な開発の枠組みに置くよう求める途上国と、技術・資金支援を気候変動・排出量削減に関わる部分のみに絞り、将来の政治交渉を重視する先進国との開きが現れているとも言える。

 過去の交渉での資金問題解決の難しさを考えると、この資金メカニズムの交渉は最後までもつれ、デリー宣言へ盛り込む内容との間で合意パッケージの取り引きの中心になると見られる。地球的な気候ガバナンスへとつながるプロセスへの布石となるかどうか、COP8の行方が見守られる。


気候行動ネットワーク NGOが求める「デリー宣言」
以下掲載は、28日のデリー宣言草案発表に併せ、環境NGOが求める「あるべき姿の」デリー宣言の内容である。
気候行動ネットワーク
NGOが求める「デリー宣言」
 気候変動は私たちの行動にかかっている。気候変動がより一層悪化してきていることを科学は示している。貧しい人たちや不利な立場に立たされている人々はもっとも影響を受けやすい。今こそ、そうした点を明確にし、行動する時なのである。

 昨年のボン会議(COP6再開会合)では、先進国と途上国が歩み寄ったことで京都議定書が救われた。京都議定書が発効しようとしている今でも、米国とサウジアラビアは南北の主張を故意に対立させ、会議の進行を妨げようとしている。私たち、北と南のNGOの連合体である気候行動ネットワーク(CAN)は、そのような対立に反対する。南北間の責任と能力の違いはあるが、私たちは一緒にこの地球規模の問題の解決に向けて取り組まなければならない。私たちのほとんどは、持続可能な発展を達成しながら、気温上
昇の程度を2度以下に抑制するような排出削減への道に向かう必要があるのである。こうした目的を達成するために、私たちはデリー宣言が以下について言及することを要求する。

  • 京都議定書の発効に向けて、ロシアとカナダは早期に批准すべきである。そして、米国とオーストラリアも批准しなければならない。
  • 気候変動枠組条約と京都議定書を効果的に実施すべきであり、それには先進国の早期排出削減と、途上国への資金と技術の実質的な移転を含まれなければならない。
  • 現在の科学的な知見に基づくと、気候変動の危険を回避するためには、大幅な排出削減が必要であることを認識すべきである。こうした削減は、公平性と、共通だが差異ある責任の原則に基づいて達成されなければならない。
  • 条約の基金を通じて、適応に向けたキャパシティ向上と資金供与を増加させなければならない。実際、適応は持続可能な発展と結合させるべきである。しかし、はるかに大幅な排出削減なしでは、いかなる適応も破滅的な影響を防ぐことはできない。
  • 政策決定と実施に際して、公平で適切な市民参加が必要である。これには、市民の関心の向上、教育や訓練が大いに求められる。
  • 持続可能な発展への権利は条約と議定書の目的を達成するためには不可欠であることを再確認すべきである。さらにこれには、貧困撲滅を全世界の優先事項とすることや、公平で持続可能な消費パターンに転換することが含まれる。
  • 気候変動に対する先進国の歴史的な責任と途上国の緊急のニーズが、途上国での省エネルギー対策、再生可能なエネルギー、持続可能な発展を支援するための実体のある資金援助の基盤となることを認識すべきである。
 科学、共通だが差異ある責任の原則、持続可能な発展に向けたニーズはいずれも、締約国がこのCOP8で、条約と議定書に基づいて、公平で適切な気候変動に関する合意へ向かうプロセスを開始することを求めている。
(eco 10/28)
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