2008年6月9日(月)
国際環境NGO FoE Japan
G8洞爺湖サミットを目前に
世界の期待を裏切った福田ビジョン
本日、福田首相は、地球温暖化への取り組みで日本のリーダーシップを示すべく、いわゆる「福田ビジョン」を発表した。これはG8主催国として迫られたものでもあるが、その内容は世界から求められているレベルにはほど遠いのみならず、先進国の責任を示すべき国連交渉を後退させかねないメッセージを含んでいる。昨年ドイツで開催されたG8サミットで盛り込まれた、「2050年に世界の排出量を半減する目標」に触れてはいるが、首相の言う削減は、現在からの削減量であり、国連で議論されている90年基準年を変えるべきとの示唆を含んでいる。IPCC他国連のデータや目標の議論は、これまで90年比でされており、議定書の基本的枠組に触れるため、欧州先進国および途上国は強く反対している。首相の述べた2020年で2005年から14%の温室効果ガス削減量試算は、90年比に換算すれば、−4%に過ぎない(議定書目標方式の森林を含めれば−8%)。これは、先頃改訂された長期受給見通しに基づくセクター別積み上げ方式をとっている。数値自体もEUの−20〜30%という数字と比べても極めて低く、途上国が求める先進国のリーダーシップとはほど遠い。さらには、このアプローチを先進国の次期目標策定に適用するよう勧めており、その場合、科学者たちが報告している「危険な温暖化を避けるために必要なレベル:地球全体での排出量を今後5−10年でピークを迎え、削減させる」からもかけ離れているものとなっている。
また、クールアース構想で100億ドル、世銀には12億ドルという極めて先進国主導型で不透明な途上国温暖化対策支援への拠出を表明しているが、温暖化対策の中核であるべきはずの国連気候変動枠組条約下にもうけられた基金への拠出は依然行っていない。開発援助において、気候変動の影響を考慮するだけでは不十分であり、途上国を脱化石燃料社会へ転換するためには、透明性のある公正な手続き、運営のもとでの先進国による大規模な適応や技術支援が不可欠であり、その点でも先進国としての義務を果たしていないと言わざるを得ない。
最終的な中期削減目標は来年としているが、昨年バリでの合意に含まれた先進国全体で25〜40%の削減量にはとても貢献出来ず、このままでは条約会合で国際的非難に曝されることは免れない。
気候変動キャンペナー: 小野寺 ゆうり
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