|
昨日19日、政府地球温暖化対策推進本部は地球温暖化対策推進大綱見直しを行い、今後の政策面での枠組みを決定した(1)。Friends
of the Earthはこれを日本の京都議定書批准のワンステップとして歓迎する一方、8月の持続開発世界サミットまでに議定書が発効できるため5月中旬までに国会での審議を終えられるため、政府が速やかに京都議定書と関連国内法および改正案を国会に提出するよう求めている。
新大綱は日本の気候変動対策の全体の方向性を決めるものであり、部門別に議定書下での日本の温室効果ガス削減義務を部門別に割り振り、個別政策別にCO2削減目標を明示している。日本の排出の9割以上を占める化石燃料起源のCO2についてはこれを2012年までに1990年レベルに抑えるものとしている。
FoE はしかし一方で、提示された一連の政策内容に対し強い懸念を表明する。新大綱は2012年までの期間を3段階に分け、2004年までは主に産業界の既存の自主行動計画(2)に依存、CO2排出にかかる規制他新規措置は実施しないものとしている(3)
。日本のCO2排出量は1999年までにすでに6.8%増加している。実効を上げるまでにかかる時間を考慮すれば、今後さらに2年待つのではなく、炭素税などすでに実効性の示された追加措置導入を図るべきである。議定書の法的位置づけは依然今年後半の国連気候変動条約会合まで棚上げされているが、すでに昨年モロッコで最終合意された内容には、議定書下で設けられる制度を用いることで議定書義務を達成できなかった国に実質的を伴った措置が採られることが盛り込まれている点、明記されたい(4)
。
新大綱はまた原子力の発電量を2010年までに3割増やすものとしている。これでは9?12器程度の原子炉増設を年間1?2器のペースで増設することになる。原子力エネルギーは深刻な未解決の環境問題を抱え、非常に対費用効果も悪いうえ、自然エネルギー普及をさらに難しくさせるもの。政府はこのような不完全な技術を中期的な気候変動対策の中核に据えるべきではない。
国内森林の吸収するCO2の量は日本の国削減目標6%に対し3.9%を想定している。しかしこのいわゆる吸収源については、温暖化の進行とともに吸収量が減り、今世紀半ばまでには排出源へと変わる可能性が科学者達により指摘されていおり(5)
、やはり中期的な対策を成すものではない。
フロン系3ガスの排出量増分については技術開発と国民の努力という曖昧な表現で2%の削減を果たすとある。日本と米国は共同で発電所からのCO2回収、大規模海洋投棄の技術開発を急ピッチで進めており、すでにかなりの研究開発資金が両サイドでつぎ込まれている。このような技術の実用化がなされれば、すでに気候変動他の理由で破壊の進む海洋生態系を大幅に悪化させ、漁業資源への深刻な脅威を造り出すことになる。
最後に、しかし前述と同様あるいはそれ以上に重要な点は、この大綱が国連京都会議の直後に拙速に作られ今日に至るまで、議定書下での負担の部門別配分など最も重要かつ広範な議論の必要な内容について、全く透明性に欠け市民からの実質的なインプットを拒否して進められてきたことにある。
新大綱では産業界は7%の削減をするものとされている。産業界は化石燃料起源のCO2直接排出の68%を占める。米国不参加や途上国が新規義務を負わないことを理由に議定書批准に依然反対している産業界リーダー達は、世界人口の3分の2を占める途上国の排出による温室効果が先進国の人間のそれに匹敵するようになるには今後まだ40-110年かかることを考えるべきである(6)
。またこれら途上国の人口が我々先進国の排出によって引き起こされ進行中の気候変動によりすでに深刻な被害を受けていることを改めて考える必要があろう。実際、先進国は過剰消費と利益を維持するために伐採、化石燃料や資源採掘などを通じ、途上国に経済・社会、環境面で多大な被害を与え続けている。国際市場経済の下でこれら外在化されたコストは償われることなく、累積する環境債務として先進国政府や企業が認識するよう求められている。気候変動による被害はその最たるものであり、もしこれら産業界リーター達が政府の効果的な温暖化対策を妨げるというのであれば、途上国を中心に今も続く人命の損失や被害に対し今後責任を問われることになろう。
FoE JAPAN気候変動プログラム
Email energy@foejapan.org
Tel 03-3951-1081
1.https://www.env.go.jp/earth/ondanka/taiko/all.pdf
2.https://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2001/051/honbun.html
3.省エネ法改正は強制措置であるが、CO2排出量に基づくわけではない。
4.今年後半の国連気候変動条約会議では日本他残り4ヶ国が議定書の法的拘束力に最後まで反対すると見られている。実際日本はこれまで、いかなる環境条約も国際法上の法的拘束力を持つこと人反対している。こういった面でも日本は環境外交で最も足を引っ張る国の一つと見られている。
5.IPCC 第3次評価報告書 https://www.ipcc.ch/
6.IPCC Special Report on Emission Scenarios (SRES 2000)
|
|