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「ニッケル製錬拡張計画
 日本企業・銀行に求められる先住民族との真摯な協議」  (2007.5.11)
※FoE Japanが国際協力銀行に提出した要望書(2007年5月11日)の全文は
 こちらでご覧いただけます。

  → https://www.FoEJapan.org/aid/jbic02/rt/pdf/20070511.pdf



  フィリピン・ニッケル製錬事業の拡張計画
 日本企業・銀行に求められる先住民族との真摯な協議   


フィリピン・パラワン島でのニッケル製錬所の拡張事業が地元の先住民族の合意なしに進められようとしています。同事業は、住友金属鉱山が昨年3月に実施を発表し、環境影響評価など、フィリピン当局の環境許認可等を取得する手続きが進められてきました。今年3月には、国際協力銀行(JBIC)への融資申請がなされ、現在、JBIC環境社会ガイドラインなどに基づき、同事業への融資が検討されている段階です。

しかし、第1工場の操業開始後、周辺の村々で頭痛や咳の慢性化、また、皮膚病 などの報告件数が増加しており、地元では、先住民族パラワンのグループを中心 に、第1工場の操業による健康被害の可能性を指摘する声が強まっています。 「自分たちは、第1工場の建設前にも健康被害などを懸念して、工場の建設には 反対してきたが、第1工場はすでに建設されてしまった。もし、第2工場が建設 されてしまったら、健康被害も倍に増えるのではないか。第1工場だけで十分だ。」――事業地近くのスンビリン村に暮らす先住民族のリーダーらは、第2工場の建設への反対を顕わにしており、現在も、事業の拡張に関する地元の先住民族の合意は得られていないのが現状です。

地元では、先住民族の合意の取得手続きに関し、同事業の違法性や契約違反も指 摘されています。パラワン州で実施される同事業は、フィリピン共和国法7611号 (パラワンのための戦略的環境計画法:SEP Law、1992年制定)に基づき、持続 可能な発展のためのパラワン評議会(PCSD)から「SEP許可」を取得する必要が あります。また、同事業は先住民族に影響を及ぼすため、フィリピン共和国法 8371号(先住民族権利法:IPRA、1997年制定)に基づき、フィリピン国家先住民 族委員会(NCIP)の進める手続きの下、先住民族の「自由意志に基づいた、事前 の、十分な情報提供を受けた上での合意(FPIC)」も取得する必要があります。 両法の整合性について記載されているPCSDとNCIPとの間での覚書(MoA)(2005 年)では、先住民族の土地に関わる申請については、当該先住民族の「FPIC」の 取得が「SEP許可」発行の条件ともされています。

しかし、昨年11月に「SEP許可」が同拡張事業に対して発行されているものの、 地元のNGOの照会に対し、NCIPパラワン事務所は、「まだCBNCから第2工場への 許可申請がなされていないので、第2工場に関するFPIC取得手続きもまだ行なっ ていない」(今年3月12日付けの回答文書)と述べています。つまり、同事業は 先住民族権利法に定められた「FPIC取得」の要件を満たしておらず、また、FPIC が取得される以前に発行されたPCSDの「SEP許可」も、MoAに違反している以上、 正当なものとは言えません。地元の先住民族グループから同問題を指摘された PCSD自身、3月22日に行なわれたPCSD内での会合で、CBNCに先住民族コミュニティーとの協議を行なうよう促すことを勧告として出しています。

JBIC環境社会ガイドラインでは、事業が先住民族に影響を及ぼす場合、事業実施 者が「先住民族に関する国際的な宣言や条約の考え方に沿って、土地及び資源に 関する先住民族の諸権利が尊重されるとともに、十分な情報に基づいて先住民族 の合意が得られるよう努め」ることを求めています。また、事業の実施地におけ る「環境社会配慮に関する法令、基準を遵守」することも求めています。

FoE Japanは、先住民族との合意が取得されていないどころか、法手続きに則っ た協議すら行なわれていない同事業への融資について、JBICの慎重な融資検討を 求めていきます。



●リオツバ・ニッケル製錬事業について

フィリピン・パラワン島の南端部バタラサ町リオツバ村で、HPAL法(High Pressure Acid Leach:高圧酸浸出法)によるニッケル製錬の中間品(ニッケル ・コバルト混合硫化物:第1工場では、年間ニッケル量約10,000トン、コバルト 量約700トン)を生産し、住友金属鉱山ニッケル工場(愛媛県新居浜市)への輸 出を20年間行なうことを目的としている。第1工場の総事業費は約1.8億米ドルで、2005年4月に生産を開始した。現地合弁企業コーラル・ベイ・ニッケル社は、住友金属鉱山(54%)、三井物産(18%)、双日(18%)が出資しており、国際協力銀行の融資、日本貿易保険の付保がなされた。

製錬の過程で必要な石灰石の採石による先住民族パラワンの先祖代々の土地への 影響、港湾設備の建設に伴うサンゴ礁への影響、操業後のさまざまな健康被害の 報告の増加など、地元での環境・社会問題は同事業の開始前から操業開始後の現 在に至るまで、繰り返し指摘されてきている。

2006年3月に住友金属鉱山が正式発表した第2工場建設計画は、第1工場の側に 同規模の工場を建設し、年間生産量をニッケル約20,000トン、コバルト約1,400 トンに倍増させる予定。2009年4月から20年間の生産を見込んでいる。総額2.85 億米ドルの事業規模を予定しており、2007年3月に国際協力銀行への融資要請、4 月には日本貿易保険への保険申請がなされ、現在、両者とも検討段階にある。し かし、第1工場と同様の環境社会問題を懸念する地元の環境団体などは、拡張工 事にも反対の声をあげている。  
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