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●4,960ha中、灌漑用水が届いているのは2,763haだけ?
ダムの水源について早急な情報公開と調査を!
3つのダムを建設し、一つの水系で約10,000ヘクタールを灌漑することを目的としているこの事業。すでに90年代に2つのダムが建設され、地元での灌漑も始まっていますが、どちらのダムもその事業目的としていた灌漑面積に水を提供できない状況が続いています。
特に、そのうちの一つ、一番上流に位置することになる「マリナオダム」では、事業目的が4,960ヘクタール(ha)なのにもかかわらず、10年間の灌漑・作付け面積の平均が2,763haにとどまっています。そのため、農地を畑地から灌漑用地に転換するため、ブルドーザーなどで整地作業を行なった土地でも、灌漑用水が届かないところでは、「何も作物が作れない」状況に陥っています。
JBICはこの現地の状況報告を受け、現在、事業実績が達成できていない原因を調査中です。すでに、原因として考えられる
(1)水源とする水量の不足
(2)不適切な灌漑用水の管理
のうち、後者については、「上流側での水の使い過ぎ」、「不適切な水路の維持管理」など、「地元の灌漑組合の管理体制の問題を確認した」とのことでしたが、前者の水量に関する調査については、まだ「データを収集中」とのことでした。(2005年6月8日のFoE Japanとの会合でのJBICの回答)
現在、建設中の3つめのダム「バヨガンダム」は、その水源の60%を「マリナオダム」の余剰水に依存する計画になっています。「マリナオダム」でこれだけ事業実績に問題があるなか、「バヨガンダム」でも同様な問題が起こる可能性は否めません。JBICはこの事業の実現可能性を検証するためにも、早急に水源に関する調査を進め、JBICとしての検証結果を広く公開した上で、適切な対応を取ることが求められます。
※「事業実績に関する問題整理と日本政府・JBICに求められる対応」についてまとめたFoE Japanのペーパーはこちらでご覧ください。(PDFファイル)
→https://www.FoEJapan.org/aid/jbic02/bohol/pdf/2005may.pdf
●整地作業のために、借金を抱え土地も失うことに?
農民の生活悪化を防ぐために緊急措置を!
マリナオダムを建設する際、畑地を灌漑用地へ転換するための整地作業が2,953haにわたって行なわれましたが、ブルドーザーなど使用した重機の費用や労働賃金は各地主が負担することとされました。1996年6月18日付けの覚書に地主1,362名が署名。土地の権利書を担保に、10年間で総計1億1,987万9,732ペソ(約2億4,000万円)がフィリピン政府に返済されることになっています。
しかし、灌漑用水が届いていない地域(また、現在、何も農産物を植えることができていない地域)の農民はこれまでに借金を返済できておらず、10年がたつ来年、土地の権利書を失うことが懸念されています。
また、現在、建設中のバヨガンダムにおいても、土地転換の整地作業が2,910ヘクタールにわたり行なわれることになっていますが、フィリピン灌漑庁(NIA)の用意している「整地作業の実施に関するガイドライン」の内容から、以前と同様の方法が取られることがわかっています。
そのガイドラインの主な内容は次のようなものです。
・JBICの融資約70億円のうち、1億1,600万ペソ(2億3,200万円)を整地作業に充てる。
・NIAから地主に貸付ける形で、契約を結ぶ。契約の内容は、
−10年間で20回の分割払い(無利子)
−担保は土地の権利書
−未納の場合は年3%の利子率を加算
仮にマリナオダムで起こっているような問題(灌漑用水が届かないにもかかわらず、借金の返済義務はそのまま。しかも、土地の権利書を担保に取られているために土地を失う可能性がある。)が起こった場合に、問題を解決するような仕組み等は整えられていません。
農民の一番大事な生活の糧である土地――それを守るためにも、また、「農民の生活向上を目的とした事業」で、「農民が土地を失うリスクにさらされる」ことのないよう、マリナオダムの対象地域では契約の破棄など、来年に借金の返済期限が切れる前に緊急措置が必要とされています。また、マリナオダムでの教訓を活かした、適切な対応をバヨガンダムの対象地域でも検討していくことが必要です。
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