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「3つのダムを建設して、10,000ヘクタールの農地を灌漑しよう」――1970年代に持ち上がった構想の下、日本の援助で進められている灌漑事業がフィリピンにあります。
3つのダムのうち、すでに2つは1990年代に完成しました。一番上流にあるマリナオダムは、国際協力銀行(JBIC)による円借款46億円、また、一番下流にあるカパヤスダムは、外務省・国際協力機構(JICA)による無償援助約17億円で建設されたものです。その2つのダムの真ん中に位置することになる3つ目のバヨガンダムは現在建設中で、その工事は約30%まで完了しています。この最後のダムもJBICからの円借款60億7,800万円で建設されています。
しかし、マリナオダムは4,960ヘクタールを灌漑する予定でしたが、平均で3,100ヘクタール。カパヤスダムも750ヘクタールを灌漑するはずでしたが、539ヘクタールにしか水を供給できていないなど、2つのダムから恩恵を受けるはずの地元の人々は、ダムからの灌漑用水の供給が十分でないことから、現在、さまざまな問題を抱えています。そして、現在建設中のバヨガンダムについても、その水源の約60%がマリナオダムからの余剰水で賄われる計算となっており、「今でも水不足の問題が指摘されているマリナオダムから、一体どうやってバヨガンダムに水を引いてくるのか」――現地での懸念の声は募る一方です。
このような状況のなか、地元の農民を支援してきた現地NGOの連合体が2月8、9日と2日間にわたり、マリナオダムの問題に関する現地調査を行ないました。調査では、
・4,960ヘクタールの目標を達成しようと土地を準備・転換(以前畑地であったところを水田用にならす作業)したにもかかわらず、その土地に灌漑用水が届かなかった結果、米も野菜(以前植えていた作物)も育たない生産性のない土地となってしまったところがある
・ダムの水供給後も米の収量が上がらず、結局、以前は払う必要のなかった高い水利費を負担する分だけ、生活が苦しくなっている人々がいる
など、現地で見られる問題を指摘し、
・マリナオダムが目標を達成できていないことについて調査を行なうこと
・生産性を失った土地に対する補償を行なうこと
・バヨガンダムの目的(5,300ヘクタール)の実現可能性を再検証すること
などをフィリピンの下院議会に勧告しています。
日本の援助丸抱えで進められてきたこの灌漑事業ですが、「本当に10,000ヘクタールを灌漑する十分な水量があり、地元の農民の生活向上につながっているのか否か」――日本政府もこの点をしっかりと検証し、事業の妥当性を判断することが求められます。
> 現地NGOによるマリナオダム事業の現地調査(2005年2月8、9日) 報告書
(英文)(PDFファイル)
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