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国会審議―衆議院 環境委員会

<国際金融等業務に関する異議申立の受付時期について>

第155回国会 衆議院 環境委員会 第6号 2002.12.06(金)

質問者 小林守 衆議院議員
回答者 志賀櫻 国際協力銀行理事

◆小林(守)委員
 大臣、そういう経過がございまして、この問題、非常に環境省の基本的な問題が問われている、見えてしまう問題だというふうに思うんですよ。ひとつ賢明な選択をしていただきたいというふうに御期待を申し上げたいと思うんです。
 それでは、時間の関係もございまして、一つだけこれは提言というかそういう形にしたいと思うんですが、このたび、中海・宍道湖の淡水化事業を島根県は鳥取県と一緒に中止したいということを国に要望しようというように、大体議会の中では中止を決定したというふうに報道されておるわけです。もうこれについて詳しい事業の経過は申し上げませんが、私は、中海・宍道湖というのは、ラムサール条約の湿地としても非常にふさわしい規模であり、また質を持ったものだというふうに思うんですけれども、あそこに対して地域再生というようなことも含めて考えていくならば、私はこの自然再生推進法の極めてモデル的な事業になるのではないかなというふうに思えてならないんですよね。
 ラムサール条約の登録湿地の手続をまずしていってはどうかとか、そのためにどういう条件整備をしていったらいいのかということもあるでしょう。もちろん地元の盛り上がりも必要だということにもなるんだろうと思いますが、私は自然再生推進法のモデルケースになり得る格好のものではないのかな、このように考えておりまして、ぜひそういう方向での取り組みをお願いできないかということを要望しておきたいと思います。
 それで、時間の関係でもう一つ触れておきたいんですが、旧日本輸出入銀行、それと海外経済協力基金が統合になりまして、三年前に国際協力銀行、JBICが発足いたしたわけであります。その設置法にかかわりまして、国会の方では附帯決議を付して、この国際協力銀行の機能、役割については、国際水準の環境アセスメントを融資の際に行いなさい、そして情報公開を徹底してくださいというような附帯決議をこの設置法の際に付したわけでございますが、この国際協力銀行の融資業務について、それを受ける形で本年の四月に新しい環境配慮のガイドラインが発表されました。
 そういう点では、一歩踏み込んだものとして国際的にも評価されているというふうなことをお聞きいたしているわけでございますが、現在、異議申し立て制度について決めていくために、いろいろな手続を経ながら、来年ですかの施行に向けて取り組みを進められているところでございます。要は、国際協力銀行の融資業務について、これはおかしいよ、いろいろな問題がある、あるいは環境ガイドラインに沿ってちゃんと守って行われているものではないよというようなものを異議申し立てしていくというような制度でございます。
 いろいろな論議の中で、パブリックコンサルテーションというものが今行われておりますけれども、政府開発援助にかかわる円借款業務、ODAにかかわる円借款業務については、国際協力銀行がその環境評価をして、それを示した以降は契約調印前であっても異議申し立ては受けますというふうに変わってまいりました。そういう点で、一歩前進として評価をしたいと思うんですけれども、しかしながら、もう一方の、政府開発援助にかかわるものではない民間の海外活動、海外投資活動、これについての金融業務については、融資契約調印後でなければ受けられないとかたくなに主張をしておるんですね。
 これは国際協力銀行と産業界がかなりその意向が強いようでありますが、基本的に政府系の金融機関でありますから、そこに公的資金が流れるわけですけれども、財務省にしても外務省にしても、そこにかかわっている環境省にしても、いや、当然融資契約調印前にやっていいじゃないか、やるべきじゃないかというふうに私は聞いております。
 当然NGOの皆さん方も、ぜひ事前に、できるだけ早い時点でリスクを回避する、リスクを軽減するという意味からも、融資契約調印前に異議申し立てを受けるべきだということを強く主張しているし、政府の方でも、そういうふうにあるべきじゃないかというふうに言っているんだそうなんですが、国際協力銀行は頑としてこれが受けられないということで、今日協議中だというような状況なんですけれども、なぜ融資契約前に受けられないのか、私にも理解できないところでありまして、その辺について、きょうは国際協力銀行の方からおいでいただいておりますので、御答弁をいただきたいと思います。

◆志賀政府参考人
 御指摘のとおり、円借款につきましては、パブリックコンサルテーションでの御議論を踏まえまして、本行の融資契約調印以前に政府による手続が存在しまして、その過程で本行としての案件の評価をある程度対外的に示すことになるということに着目いたしまして、融資契約調印前でありましても異議申し立てを受け付けることといたしたところでございます。
 他方、国際金融等業務の場合、円借款のような政府の手続が存在しないために、融資契約調印前に本行の評価を対外的に示すという手続がないものですから、融資契約調印まで本行による環境審査が完了するという時点が存在いたしませんので、従来から申し上げているとおりでありますけれども、ガイドラインの遵守、不遵守が確定するのは融資契約調印時点であると考えております。
 したがいまして、国際金融等業務において、融資契約調印前に異議を受け付けることは適切ではないのではないかと思っておりまして、この点は、国の類似する制度について見ましても、行政不服審査制度というのは、やはり意思決定が行われた段階で、意思決定に対して異議申し立て、不服申し立てということが行われるわけでございまして、意思決定が行われていない段階においては、ちょっと変な言い方かもしれませんが、シューティング・ザ・ムービングターゲットといいますか、まだない存在に対して、存在していない意思決定に対して異議申し立てを受け付けるということが、制度の理論的性格上あり得るのかというふうに考えているわけでございます。
 あわせて、円借款業務以外について、融資契約調印前に異議申し立てを受け付けることについては、いろいろな立場の方から強い反対の御意見もいただいていることも御理解いただきたいと思っている次第でございます。
 ガイドラインにおいては、融資の意思決定前の暫定的な状況であっても、できるだけ早期に情報提供を行うという考え方から、調印以前の、意思決定の以前においても、カテゴリーの分類だとか環境影響評価の入手状況等につきましては情報公開をすることとしておりまして、関係機関、ステークホルダーにとって、できるだけ早い段階で本行の投融資部門と対話できるよう配慮しているところでございます。
 また、パブリックコンサルテーションでの皆様の御意見を踏まえて、国金等業務においても、調印前に、異議申し立て受け付け担当部門、審査役と仮称で申しておりますけれども、意見が示された場合には、担当部門は、審査役は、当該意見を投融資部門に移送するし、総裁にも報告することになっておりまして、総裁が意思決定する際に、当該意見に対する投融資部門の対応が適切か否かを確認できる仕組みにすると同時に、投融資部門の対応については、審査役である異議申し立て受け付け担当部門に報告される仕組みになっている制度設計にしておるわけでございます。
 それから、ガイドライン及び現状の異議申し立て手続に定められた今申し上げましたような仕組みを通じまして、本行は、ステークホルダーの意見を十分踏まえて意思決定を行っていく所存であります。
 ちょっと長くなりまして恐縮でございますけれども、いずれにしましても、今後、本要綱案について、借入人となる途上国政府に今説明手続に入ろうとしているところでございますが、それが終了しましたら、来年の二月ごろからまたパブリックコメントを募集いたしまして、それに引き続きましてまたパブリックコンサルテーションを実施する予定でございます。
 今後とも、皆様の御意見を承りながら、現在の案を基本としつつ検討していく考えでございますので、そういうことでございます、御了解いただきたいと思います。

    〔委員長退席、奥田委員長代理着席〕
◆奥田委員長代理
 答弁は適切な長さでお願いいたします。小林委員。

◆小林(守)委員
 長々といただいたんですけれども、いずれにしても、私にはまだ明確に、なるほどというふうに理解できませんので、さらにコンサルテーションの中でNGOの皆さん方の声とか、それから各省庁の考え方もあると思いますけれども、その辺も含めて、業界とそして、やはりリスクを事前に回避し減少するというような視点に立って、アセスメントそのものは計画段階からやらなきゃならない時代になっているんですよ。今度の再生法でも、実質的には計画段階からNGOや市民が参画できる、専門家も参画できるというような実質的な中身に変わってきているんだというふうに私は思うんですよ。
 そういうアセスメントそのものが、要は、今までのスタイルからいうと、事業決定後、どう環境に影響があるのかというアセスメントをしているんですね。国際協力銀行のスタイルはまだその段階なんですよね。事業決定した後、異議があったら申し立ててくださいという話なんだけれども、リスク減少なり、より効果のある、また効率的なものとするために、事前にやるというスタイルをやはりぜひ融資業務の決定の中にも導入していただきたいな、このように私は思いますし……

◆奥田委員長代理
 小林委員も、質問時間を終了しておりますので、取りまとめをお願いします。

◆小林(守)委員
 はい。
 異議申し立てという言葉が適切でなければ、例えば意見具申制度とか、何らかのとらえ方でやり得るのではないか、このように私は思います。
 以上で質問を終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

 




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