<異議申立の受付時期及び情報公開について>
第155回国会 衆議院外務委員会 4号 2002.11.13(水)
質問者 前田雄吉 衆議院議員
回答者 川口順子 外務大臣
茂木敏充 外務副大臣
篠沢恭助 国際協力銀行総裁
◆前田委員
今度は、開発援助の関係の質問に移らせていただきます。
まず私は、国際協力銀行さんが二〇〇二年の四月につくられました環境ガイドラインは、十分な透明性を確保したプロセスの上で幅広い意見を集めて、環境アセスメントの当該国での公開と影響住民との協議の義務づけなどを示した、国際的にも非常に評価の高いガイドラインができたなというふうに思っております。
そこで、この十月の外務省を変える会の提言の中に、このJBICのガイドラインを踏まえて、JICAの、国際協力事業団のガイドラインを検討するということが含まれておりました。無償の資金協力をめぐっては、いわゆる2KR、農薬がモザンビークの港に三年も積み残されているとか、あるいはミャンマーのバルーチャン第二水力発電所の問題等々さまざまな影響を懸念する、これは環境を破壊するのではないかという影響を懸念する声が新聞、雑誌等で取りざたされております。
このJBICのガイドラインを踏まえた、国際協力銀行のガイドラインを踏まえたJICAのガイドラインづくり、これに無償資金協力全体を含むべきだと私は考えますけれども、外務大臣、いかがお考えでしょうか。
◆川口国務大臣
無償資金協力におきましては、個々の案件ごとにJICAが実施をする調査においてJICAの環境ガイドラインを適用いたしまして、環境配慮を行うということにいたしております。委員がおっしゃられましたように、変える会を受けてことしの八月に発表した外務省の改革についての行動計画にのっとりまして、JICAにおいてその改革の作業を進めているところでございます。
◆前田委員
国際協力事業団の環境ガイドラインの策定に当たっても、やはり検討会の公開性、ホームページで紹介する等、十分な透明性を確保したプロセスで幅広いステークホルダーの意見を取り入れ、十分な時間をかけてやっていただきたいと私は思いますけれども、何か十二月ぐらいから始める予定であると伺っております。ぜひ、関係省庁はもちろんのこと、NGOまで含めた幅広さが、あるいは透明性が必要であると考えますけれども、外務大臣はいかがお考えですか。
◆川口国務大臣
委員がおっしゃるとおりだと思います。環境ガイドラインの改定の作業においても、こうした透明性を確保していくということをきちんと考えて実施する、そういうことだと思っています。
◆前田委員
今度は、国際協力銀行さんの異議申し立ての手続についての質問に移らせていただきます。
本年の八月二十九日の参議院の決算委員会で、尾辻財務副大臣は、「異議申立制度が世界銀行のような、」中略、「国際機関と同水準の公平性、透明性、説明責任を確保したものになることが重要と認識」しているというお話がございました。また、国際協力銀行の副総裁の神氏も、「国際機関あるいは他国の政府機関の例を十分に参照しながら、幅広い議論を積み重ねた上で質の高い仕組みを構築していきたい」、こういう御答弁をいただいております。
しかし、国際協力銀行は、異議申し立てを受け付ける時期に関して、世界銀行などの国際機関と全く異なる主張をされてきております。何かと申し上げますと、融資契約調印前の異議申し立ては受け付けないということを言われております。私が前に御紹介しました国際機関の例を十分に参照しながらということと全く逆ではありませんか。
融資契約調印前に異議申し立てを受け付けないという制度は、国際的な機関の水準を満たしたものとは言えないと私は思いますけれども、外務大臣はいかがお考えですか。また、協力銀行総裁はこの件に関していかがお考えですか。お二方に意見をお願いします。
◆茂木副大臣
御指摘の点につきまして、異議申し立ての受け付け期間が今現在主要な論点になっている、このように我々も承知をしております。
そこの中で、この点につきまして、世銀というお話がございました。多分、MIGAも含んでということだと思うんですが、こういった国際機関の例も参考にしながら、どのような時点から受け付けを行うかについて検討すべきだ、そのように我々も考えておりますし、何にしても、先ほどNGOという話もございましたが、関係者が納得するような結論を出していただきたい、そういうことを外務省としても期待をいたしております。
◆篠沢政府参考人
お答え申し上げます。
異議申し立ては、もう御承知のことでございますが、本行のガイドラインの遵守あるいは不遵守というものについて異議申し立てが行われるということでございます。その遵守とか不遵守ということになりますと、これは本行としての融資の意思決定時点でございます融資契約の調印時に確定をするということに論理的にはなってくるわけでございます。そこで、私どもとしては、調印時点というものが異議申し立ての受け付け開始時点、こう考えるのが適切であると考えてきているところでございます。
例えば、国の類似する制度につきましても、行政不服審査法あるいは国税通則法等での不服申し立て制度でも、行政機関による処分行為というものが対象であるので、処分があったところから不服申し立てというものが動き始めるということでございますが、それと同様の考え方で今まで整理をしてきておるところでございます。
さらに、早い時期からいろいろ案件についての御意見が出てくるということはもちろん予想しているところでございまして、私どものガイドラインにおきましても、今申しました融資の意思決定前の段階から、案件についてのいろいろな情報提供というものを幅広く申し上げる。例えば、カテゴリー分類でありますとかあるいは環境影響評価書の入手状況などについても広く情報公開していこうと思っておりますし、また、異議申し立てに類する御意見というものが出てまいりました場合には、その御意見は投融資を扱っております部門にきちんと移送いたしまして、総裁が最終的な案件の意思決定をする際に十分これを参酌して、投融資することが適切か否かを確認するということまで考えているところでございます。
今後とも、パブリックコンサルテーションの機会もございます。恐らく、今先生からおっしゃられました問題は、今後とも集中的に議論がされるかと思いますが、なお私どもは、それらの御意見も十分注意深く伺いながら考えてまいりたいというふうに考えております。
◆前田委員
融資契約の調印前の異議申し立て、今総裁からお話を伺いましたら、法律的には、異議申し立ては契約時点から発生するということでございますけれども、実態は、その前に環境調査等をしっかりと公開していただけるということなものですから、その実態に即してよろしくお願いいたしたいと思います。
また、情報の公開性でありますけれども、現在の国際協力銀行の異議申し立て手続の案は、公開される情報が、環境担当審査役の報告書、それから投融資部署の意見、年次活動報告書、これに限られていますね。この現在の案では、ほとんど情報が公開になっていないのと同じではありませんか。私は、異議申し立てを受け付けた時点から最終報告が出るまで、もっと節目節目で情報公開を徹底すべきではないかと考えますけれども、外務大臣、いかがですか。そしてまた総裁、お話を伺わせてください。
◆茂木副大臣
情報公開に関しまして、個人情報であったりとか法人情報であったりとか、法律に基づきまして不開示とすべき項目が含まれているかどうか、そういう検証は当然必要でありますが、基本的には、委員御指摘のとおり可能な限り情報公開していく、こういうことであると思っております。
それから、先ほど異議申し立ての受け付け期間のところでも申し上げましたが、今の議論の中で関係者の皆さんが御納得いただけるような結論を出していく、そういうことを期待したいと思っております。
◆篠沢政府参考人
情報公開につきましては、先生おっしゃいましたとおり、私どもといたしましても、この制度の透明性を高めるために可能な限りこれを進めていくということは重要なことだと思っております。
そこで、異議申し立て受け付け担当部門、いわゆる審査役と今おっしゃいましたが、この独立的な存在であります審査役の作成する最終報告書の原則公開ということを決めているところでございます。
他方、最終報告書に至ります前、一つの異議申し立てが行われまして、それが審査のプロセスにかかっております間に、その過程をずっと公開していくということになりますと、これは借入人の競争上の地位、そのほか正当な利益、あるいは私どもと借入人との間の信頼関係を阻害するといったような問題が出てくる。あるいは、審査をしております審査役という中立的な部門自身の中立性にいろいろ影響が出てくるといったようなことにかんがみまして、私どもとしては、調査結果が判明していない時点で情報公開を一つ一つしていくということには不適切な部分があるかなと考えてきたわけでございます。
ただ、そういうことでいつまでも情報が公開されないということではいけませんので、申し立ての受理から最終報告書作成までの期間を三カ月というふうに区切る、そういうことで情報公開、最終報告書の早期公開というものを考えているところでございます。
なお、情報公開のあり方につきましては、これは大事な論点であると思いますので、これもパブリックコンサルテーションでの御議論等も踏まえながら引き続き、先ほど外務副大臣からお話がございましたような姿勢も入れまして検討してまいりたいと思っております。
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