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<異議申立機関の設立に際して重視すべき3点について>
第154回国会 衆議院 外務委員会 第24号 2002.07.24(水)
質問者 前田雄吉 衆議院議員
回答者 川口順子 外務大臣
高橋恒一 外務省総合外交政策局国際社会協力部長
◆前田委員
民主党の前田雄吉でございます。
オゾン層を保護するために、一九八五年、オゾン層保護のためのウィーン条約が、また八七年にはオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書が作成されまして、各国の協調した取り組みにより、フロンを初めとするオゾン層破壊物質の生産の削減が進められてきたわけでございます。
この中にありまして、環境NGOの存在というのは非常に重いものであると私は思います。例えば、脱フロンの家庭用冷蔵庫を開発しまして、これは業界や政府も不可能だとしていた案件でございます。それを開発しまして、国連の環境計画からオゾン層の保護賞を与えられたというのも環境NGOでございました。
こうした環境NGOとの協力が今現在どのようにあるのか、また、オゾン層保護のために、これを国際的に推進するために環境NGOと今後どのように取り組まれるのか、お答えいただきたいと思います。
◆高橋政府参考人
お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、環境問題の取り組みにおきましては、NGOや企業、それから地方公共団体など、市民社会の参画というものが極めて重要な意義を持っているというふうに考えております。
オゾン層の保護の推進に当たりましても、NGO等との協力は非常に重要でありまして、先ほど委員御指摘のとおり、国際環境NGOでございますグリーンピースがドイツの企業に委託をいたしまして、オゾン層を破壊するフロンも使わず、温暖化を起こす代替フロンのHFCも使わない、いわゆる脱フロン冷蔵庫の開発に成功した例があるということは私どもも承知いたしております。また、我が国におきましても、昨年のフロン回収・破壊法の成立に際しまして、多くのNGOの方が活躍されたということも伺っております。
国際的なオゾン層の保護の取り組みに当たりましては、我が国は、モントリオール議定書の多数国間基金によりまして、我が国の技術も活用しながら、途上国におきますオゾン層破壊物質の代替物質、さらには代替方法の開発等に協力をいたしているところでありますが、今後とも、NGOや企業の方たち、さらには広く市民社会とも連携をして、オゾン層の保護のための国際的な取り組みに積極的に参加していきたい、そういうふうに考えております。
◆前田委員
日本外交にとりまして、環境外交という言葉が非常に重要なものになってきているのではないか。その中におきまして、国際環境NGOの存在がますます重くなってきているのが現状であると私は思うんです。
そこの中で、FoE Japanという国際環境NGOの指摘を受けまして、実際に私も調べたものがございます。これからその点について、大きく言いまして二点伺いたいと思っております。
一つは、国際協力銀行の異議申し立て機関について、もう一つは、中国の紫坪鋪ダムへの円借款についてでございます。特に後段につきましては、私はこれはひどい話であるなというふうな感じをいたしております。
これは何かと申しますと、ユネスコの世界文化遺産に登録されております四川省の都江堰という堰がございます。これは史記の時代から、史記にも書かれているような時代から二千二百年間、これは今現在も使っておりますかんがい施設でございます。この文化遺産が、ダムを建設することによって非常に危機的な状況にある。このダムは日本のODAによってつくられる、つまりは国民の税金によって世界の文化遺産を破壊してしまうことになるのではないか、私はそんな懸念を持ちまして、本日質問させていただきます。
まず、JBICの異議申し立て機関についての話でございます。
本年四月に、環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドラインが策定されております。このガイドラインというのは、意思決定前の案件についての情報公開や相手国での十分なコンサルテーションあるいは環境アセスメントの公開などを義務づけるものでありまして、このJBICが実施します円借款業務の質の改善に大変大きく貢献するものとして、私は期待しているものでございます。
この新しいガイドラインの流れを受けて、ガイドラインの遵守を確保するために、異議申し立て機関の検討が今現在進められております。今後、さらにODA改革を進めていく上で、先般もODAの改革案を出されました、そして「変える会」でも最終答申が出されましたが、そうした中で、この社会環境問題に関する異議申し立て機関を設置することは非常に望ましいと私は考えますけれども、川口大臣、どのようにお考えでございましょうか。
◆川口国務大臣
開発と環境の両立、持続的開発の考え方というのは、言うまでもなく、今世界の常識であると私は思います。したがいまして、JBICがことしの四月にこういったガイドラインを考えたということについて非常に高く評価をしていますし、JBICのこの基準が、世界の、世銀やそういった機関の持っている環境の考え方に照らしても非常に進んだものであると私は理解をしています。
そういった中で、ガイドラインの不遵守に関する異議申し立て、これについて、手続について今JBICの方で具体的な検討を進めていると理解をしていますし、パブリックコンサルテーションもこの過程で行った、あるいは行いつつあるというふうに理解をしています。このガイドラインの遵守を確保するために適切な異議申し立て制度が円滑に運用されるような形でできるということは、私は非常に意味のあることであると考えますし、このJBICの動きを注視したいと考えています。
◆前田委員
今外務大臣がおっしゃられましたように、この異議申し立て機関の設置に当たりまして、六月七日からコンサルテーションが始まっております。そこには市民、学識経験者、NGO、そして産業界の皆さんが集まっておられます。三回目の会合がきのうありまして、私もそこに出席させていただきました。真摯な議論が展開されまして、私も前回の議事録も読みましたけれども、産業界の方からやはり、中にはこの異議申し立て機関の設置に関して否定的な意見も出されておりました。
外務大臣は、今回、経済協力局長に経済産業省の古田商務流通審議官の起用を発表されておられますけれども、この人事によってODAそのものが、質の向上や社会環境配慮よりも企業の利益を優先するようなことになりはしないかというような懸念も少しないわけではありません。これについて、どのようにお考えでございましょうか。
◆川口国務大臣
JBICの異議申し立てのプロセスがどういう形で決まっていくかということは、先ほど申しましたように、私の方としてはこれを注視しているということで、円滑に運用できるような形で決定されるということが大事なことだと思っています。
それから、経済協力局長の人事について、前回も御質問がありましたけれども、これは新聞にはいろいろ書かれていますけれども、私は人事権者でございますので、人事権者の立場として、きちんとした手続をまだ経ないうちにそういうことになりましたということを申し上げることは、これは人事ですから全くできないということでございまして、したがいまして、これについては、具体的な案件については検討中でありますということを申し上げるしかないわけでございます。
それを申し上げた上で、より一般的な形で申し上げたいと思いますけれども、私は、委員のおっしゃった、例えば経済産業省から経済協力局長に人が来るということになった場合に、それが決定されるということになった場合に、だからといってそれが、経済協力政策が企業寄りになるとかそういうことでは全くないと思うんですね。
経済協力局長というのは、その出身がどこであれ、外務省の人間であれ民間の人間であれ、あるいはよその省庁であれ、経済協力局長として日本の国益にふさわしい判断をしていくということでありまして、そうでない人材を私は経済協力局長として任命をするということは全くしないわけでございます。
何省出身だからどういう行動をとるだろうということでおっしゃられるのであれば、私もかつて、ある省に籍を置いたこともありますし、あるいは民間企業に籍を置いたこともあります。環境省に籍を置いたこともあります。それぞれの場合にそれぞれのポジションにふさわしい、そしてその立場で国益を考えて私は行動をしているつもりでございまして、例えば男だからこうであろう、女だからこうであろうというふうに人は人間を判断しないというのが通例であると私は思っております。
◆前田委員
では、ぜひその異議申し立て機関の設置に、それが後退することのないようにお願いいたします。
社会環境ガイドラインの遵守を確保してODAの質を改善していく、この異議申し立て機関におきましては、私は、三つの点が重要であると思います。
一つ目に、投融資部門や審査機能から独立した総裁直属の機関であること、二つ目には、常勤の外部からの専門委員を備えて、客観的な調査、勧告が行えるようにすること、三つ目に、プロセスにおいて十分な透明性とアカウンタビリティーを確保し得る、これが最低限求められると考えますけれども、ODA改革を進めるに当たって、この点について川口大臣はどのようにお考えになりますか。
◆川口国務大臣
おっしゃるように、透明性がある、それから説明責任が果たされているということは非常に大事であると考えております。
◆前田委員
投融資部門からの独立性に関してはいかがでございますか。
◆川口国務大臣
具体的にどういうポストに位置づけをされるかというのは組織の中の話でございますので、この件について、具体的な形としては何がいいかということを、外務大臣の立場でJBICに対して言うということは差し控えたいと思いますけれども、先ほど委員もおっしゃったように、私としても、透明性があり、独立して物事を判断することができ、そして説明責任を果たすことができるという形が望ましいと思います。
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