2010年3月10日
本年10月に名古屋で開催される生物多様性条約締約国会議(CBD-COP10)に向け
た国内の法案整備の一環として、環境省が「生物の多様性の保全のための民間活動の促進に関する法律(案)」を準備しています。
この法案では、国内の民間活動促進を目的とした本法案の範囲からは、例えば原料調達など、生物多様性に大きな影響を及ぼしうる企業の本業における活動は除外されています。そこで、3月10日、FoE Japanをはじめ生物多様性関連のNGOや市民団体は、共同で以下の意見書を環境省に提出しました。
「生物の多様性の保全のための民間活動の促進に関する法律(案)」に関する意見
現在、「生物の多様性の保全のための民間活動の促進に関する制度の考え方」(以下制度の考え方)がパブリックコメントに付されています。
私たちは、本パブリックコメントの位置付けそのもの、および今国会の提出予定となっている「生物の多様性の保全のための民間活動の促進に関する法律(案)」(以下、法案)のプロセスおよび内容に関して、以下のような意見を提出させていただきます。
1.法案策定プロセスが問題
2ページの制度概要ペーパーを、わずか2週間のパブリックコメントに付したのみで、法律を策定することは、政策形成への民意の反映やその過程の公正性及び透明性の確保を規定した「生物多様性基本法」(第21条2項)に反し、実効性のない法律を生みだしかねない。また、「制度の考え方」に関するパブリックコメントが、法案の検討のためのものであるのであるのであれば、それを明記すべきである。
2.法案の名称と対象範囲が不一致
「生物多様性保全のための民間活動の促進」という名称からすれば、例えば原料調達など、生物多様性に大きな影響を及ぼしうる企業の本業における活動も含めるべきであるが、現在の想定されている法案の範囲からは除外されている。「地域における多様な主体の連携による生物多様性の保全」という範囲設定であるのならば、そのような名称とすべきである。
3.問題認識と本法案の必要性
制度概要ペーパーで示されている、希少な野生動植物の減少、二次的自然の手入れ不足、外来種の侵入については、それぞれ「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」「自然再生推進法」「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」で対処すべき問題点であり、新法を制定するよりもむしろ関連3法を抜本的に見直すべきである。さらに、概要ペーパー2.(5)で自然公園法等の手続きの簡略化が触れられているが、これが問題であれば既存法を見直すことが優先されるべきであろう。
また、この概要ペーパーではまったく触れられていないが、土地利用、原料調達、投融資等を通じた産業活動も、内外の生物多様性に大きな影響を与えてきていることに留意し、今後検討の機会を設けるべきである。
4.地域における連携した生物多様性保全活動の促進制度の構築
地域における連携した生物多様性保全活動を促進すること自体は意義があるが、本制度概要ペーパーで示された制度は不明点が多い(別紙「4.」参照)。地域における生物多様性保全活動の阻害要因を含むより明確な問題分析にもとづき、これらの阻害要因を取り除くための制度設計を検討することが必要である。
以上
>添付:「生物の多様性の保全のための民間活動の促進に関する法律(案)」に関する問題点
金子 博(NPO法人パートナーシップオフィス理事)
草刈秀紀(WWFジャパン)
倉澤七生(イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク)
小林幸治(市民がつくる政策調査会 事務局長)
西田圭一(かんきょう革新 事務局長)
三柴淳一/満田夏花(国際環境NGO FoE Japan)
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