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パハン・セランゴール導水事業
先住民族の移転プロセスに関する公開質問状を提出
2009年8月6日、パハン州テミール川の先住民族(テムアン)の村で、マレーシア政府のエネルギー・環境技術・水省が
主催して、移転に関する住民説明会及び移転への同意確認が行われました。
これには、同省大臣の「現場訪問(Site Visit)」という名が付けられ、同省大臣やパハン州首相をはじめとして、
多くの要職に就く政治家、マレーシア政府関係者が出席しました。また、日本からも、駐マレーシア大使をはじめとして、
外務省、在マレーシア日本大使館、JICAの代表者が出席し、マレーシアのNGO、FoE Japanも参加しました。
村には特設ステージが設けられ、セキュリティや多くの車も入り、いつもは静かな村もこの日ばかりは騒然としていました。
歌や音楽の演奏もあり、さながら式典のようでした。
大臣、パハン州首相等によるスピーチも織り交ざりつつ、プロジェクト担当者による移転に関する説明が行われ、
最後に移転の同意署名が行われました。結果は、115世帯中、移転に同意したのが94世帯、反対が10世帯、欠席が11世帯
となりました。(その後の情報では、123世帯中110世帯が移転を希望、13世帯が反対)
これまで日本政府・JICAは、2004年にマレーシア政府が住民から取得した署名を根拠に「住民は移転を希望」との主張を
続けてきました。しかし、マレーシアのNGOやFoE Japanは、移転対象となっている住民からの同意取得が、
十分な情報を与えられた上でのものではなかったことなどから、日本政府とJICAが主張する同意の有効性に関して
問題提起を行ってきました。
そして2008年頃から、日本政府・JICAは、現地で訴訟があったことなどを受け、マレーシア政府に対して、
十分な説明を含めた同意取得の手続きを改めて行うこと、また日本自らも住民の意向を確認することなどについて
働きかけを行い、紆余曲折を経ながらも、今回それが実現する形となりました。
しかし、課題は残っています。補償の詳細、土地の所有権、アブラヤシ農園の管理方法など、
移転後の住民の生活の改善・回復にとって重要となる事項などについて、未決定、あるいは説明が不十分なまま、
同意取得が行われてしまったことなどです。また、移転後、生活の改善・回復を図るために、
十分な対策が講じられなければなりませんし、移転を希望しなかった住民が、
元の村でこれまで通りの生活を送れることが保障される必要があります。
そこで、こうした移転・補償に関わる未決定、あるいは説明が不十分な事項などについて、
今後、移転した住民の生活の改善・回復が確実に行われるようモニタリングする立場にある日本の外務省、
JICAに公開質問状を提出しました。
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