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ODAの抜本的見直しを求める意見書 連名のお願い

海外援助における環境社会配慮を進めていくには、審査や評価の確立など、ODA全体の質の向上が不可欠です。

このほどFoE Japanは、他のNGOや賛同してくださる方々と共同で、ODAの抜本的見直しを求める要請書を発出することを計画しています。先般行われた事業仕分けにおいては、主としてコスト面から多くの議論が行われ、無償資金協力(ハコモノおよび選定方法)を中心に貴重な成果を上げていますが、これを有償資金協力も踏まえたODA全体の質の向上につなげていこうという趣旨です。

連名にご協力いただける団体/個人の方は、2009年12月6日(日)までに、finance@foejapan.orgまで、連名する団体名または個人名(個人の場合は記載可能な場合には所属先や肩書きなども)をお知らせください。

なお、本要請書は、12月初旬に提出し、公開する予定ですので、ご留意ください。

私たちは今回の仕分けにおいて高まった議論は、ODAの改革を進めるチャンスだと考えています。
ぜひ、多くの団体・個人の方々のご協力をお願いいたします。

意見書[PDF/273KB]

 

2009年12月XX日

行政刷新会議 議長 鳩山 由紀夫 殿
          副議長 仙谷 由人 殿
外務大臣   岡田 克也 殿

ODA関連「事業仕分け」の議論の活用と
有償資金協力を含めたODAの抜本的見直しを求める意見書(案)

私たち開発援助事業の環境社会影響やODAの質の向上に関心を有する日本の市民団体は、先月24日から2日間開催された外務省および国際協力機構(JICA)関連予算の事業仕分けで大きな成果が上がったこと、また議論の過程で多くの重要な問題が提起されたことを高く評価しております。

また、事業仕分けは、来年度予算に反映するコスト削減を目的としておりますが、議論の中で浮上したODAに関する問題点の解決は、ODAの質の向上にも資する点に注目しております。

今後、限られた予算の中で日本が意義ある国際協力を行っていくためには、仕分けの成果を踏まえつつ、有償資金協力を含めたODA全体の質の向上のための議論を行っていくことが不可欠であると考えております。
以上の認識にたち、私たちは下記について要請致します。ご検討頂ければ幸甚です。

1. 仕分けの結果を確実に来年度予算に反映させること
2. 有償資金協力に関しても、事業仕分けにおいて議論を行うこと
3. 有償/無償資金協力の基準を明確化すること
   大規模経済インフラ事業には無償を供与するべきではないこと
4. 小切手外交(総額プレッジ)の廃止
5. 有償資金協力も含めた個々のODA案件を審査、評価する仕組みの確立
   そのための議論の場の設置

1.仕分けの結果を確実に来年度予算に反映させること
仕分けにおける議論の結果として出された「取りまとめコメント」、また「評価者のコメント」では、無償資金協力(ハコモノ)の3分の1減など多くの点に関して予算の縮減が求められました。高いレベルの国際協力を実施することと、無償資金協力(ハコモノ)の3分の1減など、仕分けの議論の結果を実現することは相反することではありません。私たちは、ODAの効果は、ハコモノ協力事業の額に比例するものではなく、その内容や工夫によって、効果が十分発現できると考えております。

むしろハコモノは巨大な額の資金が急激に流れこむことにより、多くの途上国の都市や農村において、社会経済の発展に歪みが生じることもあります。仕分けの結果を重く受け止め、確実に来年度予算に反映させるべきと考えます。

さらに、議論の過程で指摘された、水産無償の廃止、ノンプロジェクト無償の見返り資金の情報公開(注1)、JICA所有の海外投資有価証券の精査・売却についても実現して頂けますようお願いいたします。

2.有償資金協力に関しても、事業仕分けにおいて議論を行うこと
平成21 年11 月19 日付行政刷新会議名の「事務事業の横断的見直しについて」では、独立行政法人・公益法人向け支出の見直しについて、「徹底的な見直しを行うべき」としています。一方、今回仕分けの対象とならなかった、有償資金協力部門は、9,260億円(平成21年度、一般会計からの出資金1,273 億を含む)と巨額であり、JICAの主要な業務の一つとなっています。また、ニーズのあいまいな有償資金協力事業を減少させることにより、協力準備調査や案件監理費用等の関連予算の効率的な実施が見込まれます。

以上により、有償資金協力に関しても、再度、事業仕分けと同様、公開の場での議論を行うことが必要であると考えます。

3.有償/無償資金協力の基準を明確化すること
  大規模経済インフラ事業には無償を供与するべきではないこと

評価者コメントの中で、有償/無償資金協力の基準があいまいであることが指摘されました。さらに、とりまとめコメントの中では、経済インフラについては円借款で行うべき旨、また、一般無償は、生命・健康に直結するような人のセキュリティ案件優先させる旨が記載されました。

議論の中では、より具体的に、経済効果の期待できる大規模経済インフラ事業(道路、橋梁、電力等)は、有償資金協力のもとに実施するべきであり、一方で、利用の見込めない大規模経済インフラを無償資金協力で実施することは不適切であることについて指摘されました。

私たちは、途上国の住民の生活に直結するのは、大規模経済インフラよりも、むしろ小規模分散型のインフラであること、また無償資金協力の額についての制約がある中、資源は、人間の安全保障にかかわるソフト面での協力事業に多く割くべきであることに鑑み、大規模経済インフラ事業には無償を供与するべきではないと考えます。

4.小切手外交(総額プレッジ)の廃止
仕分けの議論の中で、委員から指摘があったように、「○○億円の支援を」という総額プレッジは、自民党時代の外交の伝統となってきました。

しかしながら、前述のように私たちは、ODAの効果は、額ではなく、内容や工夫によって達成されるものと考えております。

上記の指摘に加え、「○○億円」という巨額の金額提示が、その後、各国の現場でさながらノルマ達成のように事業の積み上げなければならない状況にあることもままあります。さらに、総額プレッジは、その額が多ければ多いほど、巨大インフラの協力事業を増加させることによって達成せざるを得ません。前述したように、巨大な額の資金の急激な流入は、社会経済の発展に歪みが生じる可能性もあります。さらに、国によっては人権や汚職・腐敗などの深刻な社会的な課題を抱える途上国に対して、その構造的な問題を温存するような野放しの資金供与につながりかねません。

5.有償資金協力も含めた個々のODA案件を審査、評価する仕組みの確立。そのための議論の場の設置
評価者のコメントの中では、事後評価について、失敗例、目的を達成しなかったケースの分析も十分に行い、次年度以降に活かすことが指摘されました。

さらに、とりまとめコメントの中には、案件選定過程の透明化、事業評価の徹底などが盛り込まれました。平成21 年11 月19 日付行政刷新会議名の「事務事業の横断的見直しについて」では、「(徹底した事業の見直しに伴い)必要となる制度改正や組織改正については、各府省において所要の対応を行うこと」とされています。

現在、個々のODA案件に関する審査は、事業ニーズを総合的に判断するような仕組み、および第三者的視点が不足していると考えています。また、JICA内部および外部により事後評価も行われてはいますが、過去の多くのODAの失敗が、批判的な視点から評価され、現在の審査に活かされているわけではありません。ODAの質の向上に向け、外務省・JICAからの独立性を高めた審査・評価システムの構築が不可欠であり、現状の理解と制度設計のための議論の場の設置が必要です。

以上

注1)議論中、「見返り資金」という援助手法を持つ「ノンプロジェクト無償」「食糧援助」「貧困農民支援」については、事業の効果検証と透明性を高めるべきことが指摘されました。

(連名団体)

連絡先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES):田辺
TEL: 03-3556-7325 FAX: 03-3556-7328
国際環境NGO FoE Japan:清水
TEL: 03-6907-7217 FAX: 03-6907-7219
メコン・ウォッチ:満田
TEL: 03-3832-5034 FAX: 03-3832-5039

 

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